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「姉ちゃんの恋人(第8話)」-関テレが優しすぎる件

 今期、私は2つのドラマを観ている。1つは「この恋あたためますか」。言わずもがな「カネ恋」の後続ドラマだ。当初、なかなかに自分の心持ちが厳しかった。「カネ恋」を最後まで観たかった、という偽りがなく、そして叶えられない願望に心が支配されていたからだ。ただ観始めると、絶賛ダイエット中ということもあり、画面の中で繰り広げられるコンビニスイーツに心を奪われ、それが「今週ここまで体重を落としたらこれを食べる」という希望に変わり、現在まで観続けている。そしてどんどん可愛くなる森七菜にも、完璧な社長を演じる中村倫也が感情を乱されていくその演技にも釘付けだ。

 そしてもう一つは「姉ちゃんの恋人」だ。これは絶対に観ると決めていた作品。その理由の一つが、林遣都が出演しているということ。映画館にペンライトを持って応援上映にまで駆けつける、無類の「おっさんずラブ」ファンとしては、林遣都ものは外せない(笑)。そして脚本が岡田惠和であること。こちらも朝ドラ「ひよっこ」好きからすると外せない。そして有村架純。有村架純ってどこか日常を感じさせる女優さんなんだよな。彼女が演じるキャラクターには親近感を覚えて、やっぱり観たくなる。

 さて、姉ちゃんの恋人の魅力を掘り下げていくと、巷でも言われているけれど、「林遣都劇場」であるのだ。彼が演じる「真人」は過去を抱えて生きているんだけれど、その心の闇とかそれでもたまに感じる一筋の光とか幸せとか、それを絶妙に目やセリフの間で表現している。特に、自分の過去を有村架純演じる「桃子」に告白する観覧車の中でのシーンは、誰もが「真人」に心を寄せて泣いた名シーンだったと思う。その他にも、有村架純の強くてまっすぐな演技とか、和久井映見(真人の母)の息子を思う繊細な演技とか、総合的にどこでもある日常の中の厳しさとか優しさとかをさりげなく拾い上げていく、派手さはないけど慎ましやかなドラマなのだ。

 そして、今週も彼らの日常を垣間見ようとチャンネルを回した。

 冒頭から「真人」は幸せについて語る。ある出来事があって、離れ離れになった元恋人に「今、幸せ?」と問い、「君が幸せでいてくれないと、僕が耐えたことが無駄になってしまう」「うまくいかないことがあっても幸せになることから逃げないでくれ」「自分は今幸せなんだ。すべて(の苦難)が彼女(桃子)と出会うためだった」と言い切る。苦難の先に、真人は今幸せを感じられるようになったんだな、そのときはただそう思って観ていた。

 そして、真人(林遣都)が夜勤に出るのと入れ替わりに桃子(有村架純)が真人の家に御呼ばれをし、真人の母(和久井映見)と語り合うシーンになった。真人の母は小さい頃の真人の写真を見せながら、そこに映っている真人の父について話し出した。真人の父は自ら旅立ってしまっていた。

 「(辛い)気持ちから逃げたくなってしまって、楽になりたくなって、ふっと、で、逃げた。私は全然責める気になれない。人間あると思うから、そういう瞬間が。ふっと、楽になりたくて、そっちに行ってしまう時がね、あるんだと思う。主人はそっちへ、ふっと行ってしまった。ただそれだけのこと。」(姉ちゃんの恋人 第8話 和久井映見のセリフより引用)

 これを観ていた春馬くんファンのみなさんは、きっと誰しもが春馬くんのことを考えたと思う。春馬くんもそうだったのかな、って思ったと思う。人の感情はこちらからは見えない。見えないから難しいし、あれこれと考えるけれど、このネガティブな感情は人間が誰しもが持ちうる感情でもあり、それにとてつもなく支配された時に、人はふっと、橋を越えることもあるのかもしれない、と思った。うっかりそっちに舵を切ってしまう恐れが、誰にでもある、本当に誰にでもあるんだよ、ってことなんだよね。誰しもが抱えうるその感情に時に支配されてしまって、ふっと行ってしまったのかもしれない、そう想像することが、「何でなんだ、悲しい、耐えられない」って思ってしまう心を救うこともあるんじゃないか、って思った。誰しもが抱える感情であるならば、その感情を持つことに対しては理解が出来ると思うから。だからと言って人は自らそっちに行ってはダメなんだけれど。

 そう考えると冒頭の幸せのセリフが、すごく重く感じる。「君が幸せでいてくれないと、僕が耐えたことが無駄になってしまう。」ってさ、春馬くんなら、「あなたたちが穏やかでいてくれないと、頑張ってこの世に残したものが無駄になってしまう」ってことだろうな。「うまくいかないことがあっても幸せになることから逃げないでくれ」ってのはそのままだろうな。

 脚本家の岡田さんは、悲しいことがたくさん続いて、憂いしかないこの現況から、林遣都に、和久井映見にあのセリフを言わせたのだと思う。みんなの苦しい心に寄り添い、力づけたい気持ちがあのセリフにつながったのではないか、と思う。

 加えて、「TWO WEEKS」 のくるみちゃんも出演していた。「姉ちゃんの恋人」のスタッフは「TWO WEEKS」と同じなのだそうだ。放送後には番組公式インスタでもDEAR、と春馬くんに対するコメントもあった。なんて関テレ優しいんですか!!その優しさに泣けちゃうよ。春馬くんにものすごく優しいし、敬意を払っている。そんな方達とお仕事できて良かったね、春馬くん、って思った。

 天外者について書こうと思ったのですが、どうしてもこれは記しておこうと思って書きました。「姉ちゃんの恋人」は来週最終回。みんなが幸せになりますように。