見出し画像

企業が選ぶ、自然保護の新たな道:生物多様性クレジット

こんにちは!恵みの森づくりコンソーシアムの伊東です。
朝晩が少しずつ涼しくなって、秋の気配を感じる今日この頃ですね。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
秋になると夏とは違う生き物が出てきますよね。
トンボや鈴虫の声を聞くと「あ、夏が終わって秋が来たんだなぁ」と
嬉しいようなちょっと寂しいような気持ちになります。

今回のテーマは、そんな生き物にも関連する「生物多様性クレジット」についてです。
この記事を読んでくださる皆さんの中には「カーボンオフセット」という言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?
これは自身で削減しきれない分のCO2の排出量を、他の場所で実現したCO2排出削減分で埋め合わせをする枠組みです。
「生物多様性クレジット」はそれの「生き物版」だと考えてもらうとわかりやすいかと思います。
実はこのクレジット、環境保全を支えつつ、企業の活動にも役立つという、これからますます注目されそうな仕組みなんです。詳しく見ていきましょう!

生物多様性クレジットとは?

生物多様性クレジットは、企業が生物多様性を守るために行った取り組みやプロジェクトを認証し、それを取引や投資に使える仕組みです。これは、ある場所で生物が減少した場合に、別の場所で生物を増やしたり、生態系を回復させたりすることで、その影響を相殺しようとする考え方です。

生物多様性クレジットの種類

  1. 生態系クレジット:生態系の保護や復元に貢献した活動が対象。生態系の価値を数値で評価することで、企業が積極的に取り組むように促します。

  2. 種クレジット:絶滅の危機にある種の保護に貢献する活動が対象です。これは、その種が生息できる環境を守ることを目的としています。


背景と目的
生物多様性の保護を強化するため、国際的な会議(COP15)で「30by30」という目標が設定されました。これは、2030年までに陸と海の30%を保護区域にすることを目指すものです。この取り組みは、企業が持つ土地も保護区域として活用される可能性があります。生物多様性クレジットを利用することで、企業や政府は自然環境への影響を減らし、エコシステムの回復に寄与できます。

30by30ロードマップ(参照:環境省)

メリットとデメリット
生物多様性クレジットを導入することで、企業は自然環境に配慮した経済活動を促進できますが、透明性が重要です。具体的には、二重計上を防ぐための厳密な管理や報告が必要です。

オフセットとバンキング制度
生物多様性クレジットは、オフセットやバンキングという制度を通じて利用されます。オフセットは、企業が自社の開発によって生じる生態系への影響を、別の場所での保護活動で補うことを指します。一方、バンキングは、将来的に利用するためにクレジットを蓄積することです。

海外の取り組み
イギリスでは生物多様性オフセットが導入され、開発を行う企業は生態系の改善や創出を求められています。オーストラリアでは、特定の手法に基づいて生物多様性クレジットが生成され、監視・支援が行われています。

日本での普及の可能性
日本でも生物多様性クレジットを取得する取り組みが進んでいます。例えば、東京海上アセットマネジメント(TMAM)と株式会社イノカが、藻場(もば)の生物多様性を守る活動や、藻場がどれだけ二酸化炭素を吸収しているかを測定する取り組みを行っています。
これらのデータを元に、ブルーカーボン(海の生態系による二酸化炭素の吸収)や、最近注目されている生物多様性クレジットの作成を目指しています。一方、東京海上ディーアール株式会社(TdR)は地元の協力者と協力し、今回の活動エリアを環境省が推進する「自然共生サイト」に登録することを目指しています。

生物多様性クレジットは、企業が自然環境を守るための新しい手段として注目されていますが、偽りの取り組み(グリーンウォッシュ)に注意が必要です。企業が正確なデータを把握し、取り組みを行うことで、生物多様性の保全に貢献できる可能性があります。

まだまだ日本では取り組みが進んではいないですが、今後世界的にも広がる取り組みだと思うので、注目しておきたいですね。

参照:ESG-Journal
生物多様性クレジットとは。オフセットやバンキング制度の詳細と普及の可能性を予測。


いいなと思ったら応援しよう!