第33週 映画監督 三島有紀子
はじめに
今週の芸術家は映画監督/脚本家の三島有紀子さんです。
お生まれと子ども時代
三島 有紀子(みしま ゆきこ)さんは1969年4月22日大阪府大阪市北区北新地に生まれなりました。お名前はお父さんが付けた本名であり、小説家三島由紀夫氏に由来するそうです。
有紀子さんは4歳から近所の名画座に通い、小学生の頃にはすでに映画監督を志しておられたそうです。
そして大阪府立豊中高等学校時代に演劇に目覚められます。
映画監督まで
神戸女学院大学文学部在籍中に、アルバイトで貯めた資金で自主映画『夢を見ようよ』の脚本と監督を手がけられます。
大学卒業後、1992年にNHKに入局されます。『NHKスペシャル』『トップランナー』などのドキュメンタリー作品を企画・監督されます。
NHK職員時代に、阪神大震災直後の神戸を取材しておられるそうです。
「今日生きていることは全然当たり前ではないと思った」と当時を振り返ったインタビューで述べられています。
上記のインタビューでその後2003年NHKを退局された経緯について以下のように述べておられます。
「たまたま生き残れた命。でも明日は死ぬかもしれない。その時に、果たして私は映画を撮らずに死んでいっていいのか? と。『たとえ振られたとしても、私は大好きな人のところに行って告白しなければいけない』と思って、NHKを辞めました」
その後東映京都撮影所などで助監督、脚本執筆などを経て2009年『刺青 匂ひ月のごとく』で映画監督デビューされます。
映画監督としてのご活躍
脚本を担当した『世界がお前を呼ばないなら』が2009年サンダンス・NHK国際映像作家賞の優秀作品に選出されます。
劇場映画2作目の『しあわせのパン』(2012年)では、オール北海道ロケを敢行されました。
脚本・監督を務めた『ぶどうのなみだ』(2014年)は第38回モントリオール世界映画祭のワールド・グレイツ部門に招待されます。
企画・監督を務めた『繕い裁つ人』(2015年)は、第16回全州国際映画祭、第18回上海国際映画祭日本映画週間に招待されました。
2017年『幼な子われらに生まれ』が第41回モントリオール世界映画祭で、最高賞のグランプリに次ぐ審査員特別グランプリを受賞します。
第42回報知映画賞では監督賞を受賞されます。女性監督の受賞は西川美和監督以来、2人目だったそうです。
また、映画人の育成を図り功績をたたえる山路ふみ子映画賞では作品賞を受賞されています。
三島有紀子さんは2020年公開されたREDでのインタビューでこれからの映画について以下のように述べておられます。
三島:自分は、わからないことがわかっているという感じでしょうか。映画で描かれる物語はいつも、先が何も見えない所から始まっていますよね? 想像もしていなかったことが起こり、入ったことのない世界に迷い込む。映画は“リアルな夢”ですしね。だから、そんなとき、あの映画の主人公はどう生きたか、を見つめ直しています。そして、映画が作れない時代、かつての映画人はどうやって作っていたのか。その2つをもう一度辿り、この見えない世界を生きていきたいなと。その中で、改めてどんな物語を発信するのかを考えて脚本を書いています。映画はずっと我々の生きていく時間、生活、人生と共に存在していきますからね。受け手側も、いつどんなことが起こるかわからないというのが、よりリアルに感じることになるのかもしれませんね。人間愛を信じたい気分にもなっているのかもしれません。いずれにせよ、映画を作る人間としては、何も見えないこの世界の中で、ちゃんと思考して、目の前の“夢みたいなリアルな世界”に立ち向かうしかないのだろうなと、うすぼんやり考えています。
また「コロナ禍」についても以下のように述べておられます。
三島:「コロナ禍」というのは、まだ継続している話だから、自分は見続けていきたいですね。この世界がどうなるのか。自分の中に生まれるもの、皆さんの中に生まれるもの、すべて、逃さないように、そらさずに、見つめたいです。もちろん、自分の作品も撮影延期になりましたし、経済的なことを考えると厳しいこともあると思いますが、新しい形が生まれている感じがしますし、生んでいこうとも思います。より、ほんとに撮りたい人が撮っていける時代になったらいいなと考えますし、低予算枠も増えていくでしょうしね。いずれにしても、どんな場所、どんな世界であっても存在するであろう愛を見つけて、撮っていきたいと感じています。
三島有紀子さんの現在のご活動は以下のご本人のサイトで確認できます。
そして最新作は今年4月からNHKで放送されているドラマ10半径5メートル
です。
すごく個人的で、ニュースにもならず、名前もついていないような「半径5メートル」の感情や出来事。それを記事にできるのが女性週刊誌だ。
ヒロインの若手編集者と、型破りなベテラン記者のバディが、どんな題材でも「わがごと」として取り上げ、女性読者の琴線に訴えていく。
三島有紀子さんの映画作品
映画
刺青 匂月のごとく(2009年) 監督
しあわせのパン(2012年、アスミックエース) 監督・脚本
ぶどうのなみだ(2014年、アスミックエース) 監督・脚本
繕い裁つ人(2015年1月31日、ギャガ) 監督
短編集 破れたハートを売り物に(2015年、KADOKAWAショウゲート) 「オヤジファイト」監督・脚本
少女(2016年10月8日、東映) 監督・脚本
幼な子われらに生まれ(2017年8月26日、ファントム) 監督[13]
ビブリア古書堂の事件手帖(2018年11月1日、KADOKAWA FOX) 監督
Red(2020年2月21日、日活) 監督・脚本
三島有紀子さんのTV作品
テレビドラマ
D×TOWN「心の音-ココノネ-」(2012年8月10日・17日・24日・31日、テレビ東京) 監督・脚本
石坂線物語「華の火」(2012年10月、NHK) 監督・脚本
中京テレビスペシャルドラマ「レディレディ〜トイレで泣いたこと、ありますか?〜」(2013年12月22日、中京テレビ) 監督
(東京ドラマアウォード2014年ローカル・ドラマ賞受賞作品[15])
ドラマW「硝子の葦」(2015年2月、WOWOW) 監督
ドラマW「東京すみっこごはん」(放送中止、WOWOW) 監督[16][17][18][19]
連続ドラマ「KBOYS」(2018年10月 - 12月、朝日放送テレビ/GYAO!配信) 監督
ドラマ10「半径5メートル」(2021年4月- NHK総合テレビ)チーフ演出
ドキュメンタリー
街からの風〜冬・大阪・ロック歌手BORO(1993年)
NHKスペシャル
『配達された幸せ』(1994年)
大震災から三週間〜この街で生きたい(1995年)
関西の惑星
青春探検
ETV特集
アジア発見
ソリトン
トップランナー
三島有紀子さんの著作
著作
しあわせのパン(2011年、ポプラ社)
しあわせのパンの季節(2012年、PARCO出版) 映画シナリオを収録
ぶどうのなみだ(2014年、PARCO出版)
ぶどうのなみだの風景(2014年、スペースシャワー) 映画シナリオを収録
めぐめぐがすごいと思う三島有紀子さんのこと
1子どもの頃の夢を少し回り道をしながらもその経験を活かして叶えておられること。
2明るい作品から重い作品までいろいろな作品を様々な経験を基に作られていること
3そして映画とTV演出という二つのフィールド両方を大切にされてどちらにおいても成功されていること。