成長に効きうる職場のストレス経験?
「ストレス要因」と聞くと「悪いもの」であるというイメージがありますが、Cavanaugh et al(2000)は、職場でのストレス経験の中には、成長の糧になるものもあるという考えのもと、職場のストレス要因をチャレンジストレッサーとヒンドランスストレッサーに分類しています。
チャレンジストレッサーとヒンドランスストレッサー
Cavanaugh et al(2000)は、時間のプレッシャー、重い責任などの仕事に関連するストレス要因は、成長に寄与するかもしれないものとして、チャレンジストレッサー に分類しています。また、逆に、組織内での駆け引きや、役割の曖昧さは、目標を達成するのを妨げるストレッサーであるヒンドランスストレッサーに分類しています。
成長およびストレインへの影響
ただ、チャレンジストレッサーがパフォーマンスに与える影響に関する結果は研究によって異なり、Mazzola & Disselhorst(2019)のメタ分析では、チャレンジストレッサーとパフォーマンスの間に有意な関連がないことが確認されています。また、成長に寄与すると考えられていたチャレンジストレッサーであっても、心理的、肉体的なストレインと関連するのも事実です(Mazzola & Disselhorst 2019)。
そのため、現在までの研究結果から、「職場で若手の成長を促すために責任のある仕事を増やそう」などと、短絡的は言えないものの、職場のストレス要因の中には、成長の糧になるものもあるかもしれないという発想は個人的に面白いものだと思います。
Mazzola & Disselhorst(2019)の研究では、チャレンジストレッサーに分類されるような経験を過度にすることは、返ってパフォーマンスを低下させ、心身の不健康につながる可能性があるものの、適度にそのような経験することはパフォーマンスの向上につながる可能性があると考察しています。また、どのような人がこのような経験をするのかによっても、成長の糧になるかどうかは異なるかもしれません。
誰にとって、どの程度のストレス経験ならば、個人の大きな負担にならず成長の糧になるのか?今後の研究が楽しみです。
この記事は、日本教育工学会 全国大会での報告をもとにしています。
(山内研と株式会社マイナビの共同研究です)
参考文献
Cavanaugh, M. A., Boswell, W. R., Roehling, M. V. & Boudreau, J. W. (2000). An empirical examination of self-reported work stress among U.S. managers. Journal of Applied Psychology, 85, 65-74.
Mazzola, J. & Disselhorst, R. (2019). Should we be “challenging” employees?: A critical review and meta‐analysis of the challenge‐hindrance model of stress. Journal of Organizational Behavior, 40(3), 949–961.