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写真新世紀に寄せて

11月2日、キヤノン写真新世紀のグランプリ審査会に出席しました。
7月末に優秀賞受賞の連絡があってから約3ヶ月、長いなぁと思いつつも振り返るとあっという間でしたね。

私はきちんと作品を作ったのも、新世紀に応募したのも今回が初めて。展示もグループ展含めて今回2回目でした。なので、正直手探りすぎてどうしていいのかわからなくて、特に9月くらいはモチベーションもダダ下がりでした。

展示で一番難しいなと思ったのが、自分の好みと作品のコンセプトとの兼ね合い、制約というか。普段好きな展示は割とシンプルです。今回で言ったら同じく優秀賞の別府さんくらいストレートな展示。自分自身アクセサリーも全くつけないくらいシンプルが好き。とは言えこの枚数は見せたいとか、コンセプトに引っ張られて、あーでもないこーでもないと考えていくと割と好みとかけ離れてしまったり。そこのバランスが難しかったなぁと思います。選んで頂いた椹木さんにももっとどう見せていくかは重要だね、みたいなことを言われました。

ソンさんのグランプリは、客観的に見て納得の結果だったと思っています。私は受賞の発表があった時、名前で過去の作品や写真のテイストやコンセプトなど調べたんですが、ソンさんとデレクは動画とかコンセプトが詳しく載っていて、ソンさんは一番面白いなぁと思っていました。自分がシンガポールに1年ほど住んでいたこともあって、社会問題ではあるけれど生活の中の密着した出来事というか。展示が出揃う前からどんな方だろうと会うのがとても楽しみでした。翌日のトークショーの中でも清水さんがおっしゃってましたが、私も消去法だったとしても、そうだろうなと友達と話していました。去年のグランプリ審査会の講評で清水さんが「もし(写真新世紀が)アートの賞だったら…」とおっしゃっていましたが、ちょうど今年が転換期だったのかなと。

私は写真史を詳しく勉強した訳でもなく、日本ならまだなんとなく体感できますが、世界の流れは全く不勉強です。その上で、作品において自分が撮る、撮らないと言うことは割とどうでもいいと思っています。また誤解を生みそうなので、詳しく書きますがこれは「作品と言う枠組み」においてです。

翌々日のポートフォリオレビューでエミリアと杉浦さんに「あなたの作品は自分で写真を撮ってるの?」と2人に聞かれてしまったと言うことはこれが全く伝わっていなかったことになります。ファウンドフォトか何かだと思われたのでしょうか…少なくとも写真を撮る人ならば、写真を見れば言わなくてもわかってくれるだろうと言う思い込みがあったからで、これが今回一番悔しいことですね。

自分はいわゆるアーティストになりたいと思って作品を作り始めた訳ではないし、写真を撮ることから始めたので、あくまで写真はある程度職人的に撮りたいと思っています。写真を撮らない作品を作ることはないだろうし、今回の作品に限って言えば時間もお金も体力もあらゆるリソースを割いて、自分の足で撮りに行っています。氷点下の中や、熱中症になりながら、ノロウイルスになって歩けなくなったけど撮ってた時もありました。(去年グランプリのベンヤミンがこの写真いいね、と言ってくれたのは熱海でノロで立ち上がれなくなって座り込んで撮ったため、やたら写真が下から目線笑)。イスラエルだって行けるタイミングがちょうど首都移転で、まあ大丈夫と思いつつ、テロやらある可能性はゼロではない。受賞できるかもわからない、発表しても誰が見てくれるんだろうとか、こんなに時間もお金もかけて何やってるんだろうと、一瞬我にかえるとめっちゃ不安になりました。そうやって撮ったものを見て欲しくない、訳がない。

まあでもそんな過程はどうでも良くて、みんな苦労して撮ってたり、撮らなくても生みの苦しみはある訳です。

極論を言えば作品において中身はなんでもいいんです。スタジオで撮ろうが、近くの公園で撮ろうが。
でもそうしかなったのは作品をまとめる上でそれがベストだと思ったし、写真を撮る人間としてそうあるべきだと思ったからですね。

おそらく過去の新世紀展において、外部と実際に連動した形のインスタレーションは今までなかったのではと思っています。おそらく法律的な部分でも大丈夫か!?と思われていたことでしょう(笑)そのグレーな状態でよく受賞したなという思いもあります。(法律事務所にも複数相談し、展示も問題ないとお墨付きはいただいております。→書いてる時にちょうど変わるかもって言うニュースが笑)

岡田くんは唯一の東京組で、一番相談させてもらいましたー。多分めっちゃ言われてると思いますが(見た目からは想像できない(笑)、いやそのギャップは売りにしていこう)繊細な作業で成り立つ写真。私も集中すれば細かい作業は好きですが、同じこと今やれって言われたら発狂するかも。今後も作家として活躍されていくことでしょう。
内倉さんは一番と言っていいほど、写真への情熱がすごい。私が朝から具合が悪かったことあって、迷惑かけてしまうかもとみんなに伝えておいたら一番心配してくれました。内に秘めたものと言うのも大事だと思いますが、外にエネルギーを放出しないと人には伝わらないですよね。一番写真に対するパワーがあるのが内倉さんだったと思います。
別府さんは最初寡黙な方かと思いきや、話し出すと写真だけでなく社会とか芸術に対しての想いが溢れ出す方でした。一番野心家かもしれない。ぜひ恵比寿で展示してほしいですね。
佐々木さんは普段おっとりして見えるのに、これまた溢れる写真愛が人一倍伝わってきました。アーティストトークからのプレゼンが別人の様で普段からとても努力家なんだろうなと思いました。
ソンさんは当日も集合30分前に起きちゃった、アハハと可愛く笑って、プレゼン終わったらサンドウイッチくれたり、なんかポケットからなんでも出てきそう。今度シンガ行ったらぜひ飲みに行きましょ
デレクはなんだかんだ1週間で3回くらい朝まで飲み明かしました(笑)記念の盾、お店に置き忘れるし。ヲイ。いつもちゃんとカメラ持ち歩いててずっと撮ってるし、本当に写真が好きなんだなぁと。イギリス行ったらまた飲もう!

改めて今回優秀賞に選んで頂いた椹木野衣さんをはじめ、様々なアドバイスを頂いた審査員の方々本当にありがとうございました。

またキヤノンの皆様には本当にお世話になりました。これだけの人数をまとめて一つのイベントごとを進めていくのは本当に大変な事だと思います。

11月25日まで引き続き、東京都写真美術館B1にて展示中ですのでぜひお誘い合わせの上、お越し下さいませ。

2018年、自分の中の目標は達成出来たので良い年になりました。まだ早いですが、2019年も写真を軸に頑張りたいと思います。
直接関わった人だけでなく、何年も会ってなくてSNSの繋がりだけの人も、近況報告とかで刺激を貰ったりしています。全ての人に感謝して。

山越めぐみ

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