一点集中

　スペイン人の彼女は髪がクルクルでとても見た目のかっこいいセクシーな女性だった。ペネロペクルスのような魅力もあって、強いというか、人を惹きつける魅力のある人だった。
　彼女とは息子が通っていたインターの学校で知り合って、それからの数年はほとんど毎日のように話す仲だった。

　私はいつも思う、誰かに出会ったからには何かを学びたいって。それは良いことでもそうでない事でも学べる。生きている時間一瞬でも無駄にしたくないと思うから。

　そして今回、彼女から学んだことは、「一点集中」だった。彼女は私の話す事を真っ直線にいつも聞いてくれた。コーヒーがのっているテーブルに肘をかけながら、そのテーブルが沈むんではないかと思うくらい真剣勝負で一心不乱に聞いてくれた。当時、離婚したばかりの私は仕事もお金も無く、右往左往迷う苦しむ時期だった。本当に苦しかった。それに私以外の周り全員が成功しているようにしか見えなくて、どんどん置いてきぼりになるばかり。そんな時に真剣勝負で私に対応してくれたのが彼女だった。

　彼女はウィーンとスペインを行ったり来たりしてた。お家は印刷会社で彼女が受け継ぐことになったんだと思う。とにかく仕事も恋も私との友情に対しても全てに対して情熱的だった。
　私はそんな素敵な彼女の魅力の秘密を知りたくて観察してみた。食べる物が違うのか、生まれ育って浸透したスペインの太陽の光線が違うのか、何だろう。スペイン人みんながそうでもない気もするけど、本当に情熱的に生きてる。
　
　私は彼女を私の友達に紹介したりして連れ回した。そこで見たのは誰に対しても一点集中して話していること。一度その人との会話が始まると、まるで周りには何も存在していないかのように忽ち二人だけの世界になる。そしてお互いが納得するまで話し込むのだった。
　彼女の話すスペイン語訛りのドイツ語に、はじめはみんなドキッとするが段々とそれに慣れてきて、終いには彼女に似たように話しているのが聞こえる。みんな彼女の魅力にはまっていく。一番好きなのはみんなの心を虜にし、みんなを良い気持ちにさせてくれるところ。これ出来るって素敵だよね。