脳のフィルター
先日、ある展覧会に行った。広い会場をぐるりと回り、知人の大きな作品が目に飛び込んできた、他は小さい作品でした。だが、チラッと見えたその作品は、暗く、心の闇を表現しているようで、まるで地獄に吸い込まれてしまいそうな雰囲気がした。
私はすぐに目を逸らし、他の作品を見て記憶から消した。
後日、その作家と会う機会があった。彼は暗い顔をして、「私の作品、見てくれましたか?」と尋ねてきた。その時、私は彼の作品と彼の雰囲気がリンクしていることに気づいた。しかし、どうしても思い出せない。あんなに大きな作品が目に入らないなんておかしいと言われた。
その時、私は人間の脳の不思議さを思い知った。人間は、見ても、都合の悪い物は脳が認識しないようだ。今まで見落としている事が沢山あるような気がしてきた。しかし家に帰ってから、その作品を思い出した。記憶されていても、嫌な物は、直ぐ思い出せないようだ。
記憶の選択
私たちは、日々多くの情報に触れている。しかし、そのすべてを記憶しているわけではない。都合の悪いことや、不快なことは、脳が自動的にシャットアウトしているようだ。
今回の展覧会での出来事は、私にとって大きな気づきとなった。私は、自分の脳が都合の悪い情報を認識しないようにしていることに気づかされた。
記憶の奥底
しかし、記憶は完全に消え去るわけではないようだ。嫌な記憶も、心の奥底に蓄積されている。そして、ふとした瞬間に顔を出す。
大切なことは、自分の脳の働きを理解し、記憶と向き合うことだと思う。嫌な記憶も、無理に消そうとするのではなく、受け入れることが大切なのかもしれない。
今回のエッセイでは、私の体験を通して、人間の脳の不思議さ、記憶の選択、そして記憶との向き合い方について考察した。このエッセイが、読者の皆様にとって、少しでも参考になれば幸いです。