保存版「培養肉」情報総まとめ②細胞農業とは
培養肉とは何かを次回以降の記事にてご説明する前に、本記事では、培養肉の生産方法である「細胞農業」についてご紹介する。
細胞農業とは
細胞農業とは動物や植物の細胞を培養することで、細胞組織を生産する活動のことである。ただ、これは辞書的な定義ではなく、業界ではこの意味合いで「細胞農業」という言葉が使用されている、というだけである。
細胞農業による生産は、動物が体内で筋肉などを形成するプロセスを体外で再現したものと解釈できる。動物が栄養のあるご飯を食べて大きく成長するように、細胞に栄養を与えることで細胞培養が進み、新たな動物の細胞を生産することが可能となる。
Put simply, cellular agriculture is just a method of making foods that conventionally come from animals, but without those animals. It’s based on looking at the biological processes that happen on a cellular level when, for example, milk is made by a cow, or an egg is made by a hen – and then replicating that process. For meat, this can mean growing muscle cells in tanks to produce clean meat, while for milk, this can mean making milk proteins in an organism like yeast by using recombinant DNA technology.(世界的な代替肉関連のNPOであるGood Food Institute による細胞農業の説明、”Farming Cells, Not Animals”, 2018年3月)
細胞農業の意味合いは「サステナブル」「衛生的」「アニマルウェルフェア」
筆者の解釈であるが、特に動物を多数育成(殺処理)することを伴う類の既存の生産活動(食肉や革、毛皮製品の生産等)に対して、細胞培養技術を用いることで従来必要とされて来た動物の育成数(殺処理頭数)を最小限に抑えることを目的とする場合に、その生産活動を「細胞農業」と呼ぶ場合が多いように思える。
細胞農業は、育成数を必要最低限に抑えることにより、家畜の育成により大量に消費される資源(水、土地、薬剤等)の消費を抑え、動物の殺傷・加工処理工程の際に生じる衛生面の問題や、非過食部分が生じることによる無駄も抑えながら食肉等を生産する手法として注目されている。もちろん、動物の殺処理頭数を抑える、もしくは全く殺さない動物由来資源の生産方法としてアニマルウェルフェアの観点からも注目度が高い。
培養肉、培養サーモン、培養フォアグラ、培養革など「細胞農業」の生産物には様々な種類がある
牛の筋肉細胞を培養することで培養牛肉が、サーモンの身の細胞を培養することで培養サーモンを生産することが可能だ。他にも、生物の体の一部を原料とする製品であれば原則その細胞を培養・増殖させることで生産することが可能である。肥えたガチョウの肝臓を培養して生産した組織「培養フォアグラ」なども存在する。
細胞農業が生産するのは食品だけではない。動物の皮を細胞培養技術により生産し、”ギルトフリー”な革製品を生産しようとする試みもある。
Memphis Meats社の培養チキン
終わりに
本記事にて、細胞農業についてご紹介しました。次回以降の記事では、培養肉とはなにかをご紹介します。
引き続き、よろしくお願いいたします。
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