失敗の行き先
「失敗は成功の糧である」
私は常々そう思っている。
そして私に関わるたくさんの人にそう伝えてきた。
「失敗してしまいました。
お客様に間違った案内をしてしまったんです。」
チームメンバーからそう報告を受ければ
「いいんだよ、これで1つ覚えたね。
お客様にはご迷惑をかけてしまったけれど
そこはチームでいくらでもカバーするよ。
もう同じ間違いをしなければいいんだよ。」
そう言ってきたし。
かくいう私も、若かりし頃にどでかい失敗をしたことがある。
それは、年に一度の社員集会での出来事。
私はその時、先輩社員と一緒に司会の役を仰せつかり
カクテルドレスなんて着せられ舞い上がっていた。
冗談も交えながら滞りなく会はすすみ、宴もたけなわというところで
その年度の優秀社員表彰がやってきた。
何人目かの表彰が終わり、あと2人くらいになったところだったかな。
オリンピックでもよく見かける表彰式のプレゼンターの隣にいるお姉さん。
あの役どころの方がなぜかいなくなっていた。
ステージ袖では人事部担当者が大慌て。
私が呼ばれ「これ渡してきて!」と頼まれた。
私:「え!!私!?そんなのリハやってないし分からない!!」
担当者:「大丈夫!渡すだけだから!!」
背中を押されステージ袖から中央に押し出された。
ここで担当者と私、お互いの認識に大きな乖離があったことに
誰も気付いていなかった。
勘の良い方ならもうここでオチが分かるかも。
そう・・・私は託された目録をお偉いプレゼンター様にお渡しせず
自分で受賞者に渡してしまった・・・
「アッ!」と気付いた時はもう既に遅く・・・ですよ。
その後の気まずさといったら。
これは私の人生の中でもトップクラスの大失敗。
「失敗は成功の糧」なんて言えないほどの
ある意味トラウマとなってしまった。
いつかは笑いながら話せる・・・なんて日は、いつまでも来ることはなく
私の中で消化できないまま時間が過ぎた。
では私はどうしたのか、受け入れるしかないんだな、きっと
と思うようになった。
ウン十年経つというのに、この事を思い出すと今でもいたたまれない気持ちになる。
人によってはこんなの「失敗」のうちに入らないと思う人もいるかも。
でもそれこそが人それぞれの物差しなのではないかな。
あなたにとっての「大失敗」が隣の人にとっても
「大失敗」なのかは分からない。
もしかするとただの「笑い話」でしかないのかも。
きっとこんな「失敗」を誰もが胸のうちに隠しもっている。
成長のための失敗もあれば
立ち直れないほどの失敗もある
やるせなくて受け入れがたくて
でもそれでも人には前に進む力がきっとある。
どうしても消化できない失敗だったら
記憶から抹消してしまってもいいのではないかしら。
失敗の行き先・・・
それは人それぞれ、その失敗とどう向き合うか
なんじゃないかな。