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【禍話リライト】ノンノンレム睡眠/ マネキン・カー/ 廊下の能面【三連発】


金縛り、ってあるじゃないですか。
あれはまあノンレム睡眠というか、疲れ過ぎとかで脳と体がバラバラになってるみたいな状況で起きることになってますけど。
だから上に人が乗ってると思っても、感覚が誤作動してるだけで、ちゃんと説明がつくんだって話があるじゃないですか。
そうなのかなとは思っても、でも一概に全部解明できるって切り捨てるのもおかしいなあって。

何かの集まりで怖い話をするとき、どこかに載ってたような話じゃなく自分の体験を話すとなると、だいたい金縛りとか虫の報せの話になると思うんですよ。
ある飲み会で、何か怖い話はないかってなったんだけど、みんな「無い」と。金縛りとかそういうのでもいいからって振ったら、でもそれこそノンレム睡眠が、って話になって。もうノンレムでいいから、幻覚でいいから怖い感じになったのはないかって言ってたら、一人が「まあノンレム睡眠だと思うんだけどよ」と話し始めて。

「ずっとガキの頃から金縛りってなると決まったパターンがあってさ。ずっと毎回同じだから幻覚とかそういうやつだと思うけど」
へえ、そんな子供のころからなんだあ、でもずっと同じだから幻覚だと思うっていうのはどうかな?と思ったそうなんですね。
「金縛りになるとき、まず耳がキーンってなって」
まあ金縛りにはよくあることですよね。
「で、キーンなったな思ったら、遠くで引き戸がガッて開く音がして」
あれ?
「何かがゆったり歩いてくるんよ。タッタッタっていう感じじゃなくて、トン……トン……トン……って。で、毎回いっつも同じぐらいの歩数で枕元まで来て、左の肩を掴んで揺さぶられるねん」

……みんな「え?」「ん?」ってなって。だってどう考えても駄目じゃないですか。
でも「それで?」ってさらに聞いても「いやでも毎回全部同じだからノンレム睡眠だ」って言い張るんですって。
飲み会の席とはいえちょっと上の立場の人だったからあんまり否定もできなくて、「ねえ、ノンレム睡眠的なね、状態でね」って話を合わせて。
その人がいなくなったあと全員で「絶対違うよね」って。
そういう話です。

あと、これを聞いて、"いっつも一言多い人"が
「じゃあその人がホテルとか泊まって、普通のガチャって開けるドアしかない、引き戸がない状況でなったらどう説明つけるんだろうね」
って言ってました。
お前は悪魔か、と言いました。





……で、次は今出てきた一言多い人が住んでた地域で昔あった、というか今でも出るという話なんですけど。
その人が中学生ぐらいのとき、地区で一時期不審者が出ますっていうチラシが貼ってあって。全校集会とかPTAとか町内会でも注意喚起してて。
「車に乗った変な人が話しかけてきますけど、あんまり相手にしないでください、見かけたらすぐに最寄りの大人に声かけてください」みたいな内容で、怖いなと。

でも何を言われるのか具体的な説明がなかったので、大人を捕まえて聞いてみたんですね。
卑猥なことを言われるとかスケベなことを聞かれるとか?って。
そしたら、いやただ道を尋ねてくるだけなんだと。内容も別におかしくはなくて、ここからどう行ったら郵便局に着きますか、みたいな。
でも。
その車の後部座席にマネキンが乗せられてて。そのマネキンにはちゃんと服とか着せてあって。
横向きで固定されてるかなんかで、ちょうど車が止まって助手席の窓が開いて運転手が道を聞いてくるときに、ふっと見たらそのマネキンと目が合っちゃうようになってて。

初めに遭遇した子供が、目が合った瞬間流石にウワッてなったんだけど、それを無視してそのまま道を聞いてくる、そういう不審者だと。
当然お巡りさんもパトロールしたんだけどよく分からない。車もありきたりというか、みんな乗ってるような印象に残らないような車種で。
ナンバーとかも分からないままで、まあ夕方とかにそんな状況なったらマネキンが怖過ぎて車なんか見る余裕ないじゃないですか。向こうも決まってビビりというか、小さい子供だったりちょっとオドオドしてるタイプの子を狙ってる感じで。
それは確かにヤバいなって。


この話をしてくれた人自身は大丈夫だったそうなんですけど、隣のクラスで遭遇しちゃった子がいて。その翌日は目撃者ってことでみんなから話を聞かれたそうなんですね。
本当に普通な感じで声をかけられたから、あれだけ注意喚起されてても不審者だと思わなくて。
「すいません、道を教えてほしいんですけど」って言われて車を見たら、マネキンが横向きに固定されててこっちを見てる感じで。
中学生だったので多少は観察する余裕があって、車のナンバーまでは見れなかったんだけどマネキンの方は覚えてて、服を着てカツラも被ってて「家族の一員……なのかな」というような感じだったと。
道を聞いてくるだけで、その聞き方も狂気染じみてる様子はなくて、あれはどういうジャンルの不審者なんだろう、って話していたそうです。


……結局捕まらなくって何年も経って、そんなこともあったねって思い出になって。
この話をしてくれた人は実家を出て県外で働いてるんですけど、それで久しぶりに帰省したときに、ふっと地域の掲示板見たら貼ってるんですって
同じような感じで。車で話しかけてくるので気を付けましょうって。

田舎の掲示板だから更新されないでずっと貼ってたのかなとも思ったんですけど、親に聞いてみたら今もなんかあるらしいよって。いやいや、何年前の話だよって言ったら、運転してるやつが違うんですって。
年齢考えたら、もしかしたらですけど、前のやつの息子ぐらいの年齢のやつがやってるっていうんですよ。
車も同じ車種ではないんですけどやっぱり没個性的な車種で、子供が道聞かれてふって見るとマネキンが。
そういうことがまたあって、でもまた目撃が途絶えて、それきり今に至るんだと。


皆さんの町にもそういう車が走ってるかも知れませんね。





これはDMでもらいました。
「信じてもらえなくてもいいんですけど……」って送っていただいた、不思議だなあって話です。

気が付いたのが小3のときで、それから中3までの間、ずっと冬休みに決まった日じゃないんだけど必ず起きていたことがあって。
当時は、それが起きると「あ~、こんなことずっとあったな」って思い出すんですけど、翌日になるとすっかり忘れている。
それで一年経ってまた起きて、そうだった毎年起きてたんだった!って。

それが何かというと。
家で寝ていると廊下で何か軽めのものが落ちるバンッて音がするんですね。
なんか落ちたなって見に行くと、お面が落ちてる。
彼の表現曰く「夜のNHK教育とかでやってるような能とか狂言とかの女性っぽいお面」だそうです。
落ちてるんですけど、それを見て落ちてるも何も、ウチこんなお面かけてないじゃんって気付いて怖くなって逃げるんですって。さも壁にかけてあったものが落ちましたって感じに、結んであったであろう紐がプツンと切れてるんですって。でも絶対そんなもの家にかかってないんですよ。
ウワーッて布団に入って「あ~、あれ去年もあったわ~」ってなって、でも翌朝には忘れている。それが何年も繰り返されたんですね。

そして中3の冬休みになって。
夜勉強していて、また同じ落ちる音がして。ずっと起きてたからかな、そのとき初めて「これお面が落ちた音だ」って見に行く前に思い出したそうなんですね。
それで、お面が落ちてて怖いだけだし行かなくても良いやって、そのまま勉強を続けてたら、コンコンって音がする。
部屋のドアの下の方に何かがぶつかってるんですって。
その瞬間彼の頭の中に、落ちたお面を何者かがずーっ、と床の上を動かしてきて、そのお面でドアの下の所をコンコンってやってるのが浮かんできて。
怖くて部屋を出られないので、ドアのとこまで行って簡単な鍵をかけて、ヘッドホンを着けてラジオなり音楽なり聞きながらそのまま寝落ちするまで待ったそうです。

でもそれ以来もうないんですって。次の年、なまじ覚えてるからまた来るかどうか凄く怖かったらしいんですけど。
それが何であれ、最初に見たのが習慣になって、向こうも調子に乗ってそのまま続けてたっていう話かもしれませんね。

あと、ドアにこんこんって、何者かがそのお面を被ってそれでドアに軽くぶつかってたという説もあるんですけど。
ドアの下のとこですからね、だとしたらそいつはどんな姿勢で迫ってたんでしょうね。





とまあ、三つ立て続けに話しましたがどうでしたか……

【禍話は続く……(おわり)】



※本記事は、猟奇ユニット「FEAR飯」による怖い話をするツイキャス『禍話』のうち、「禍話スペシャル・年末年始オールスター感謝祭 前編」(2021/12/30)の4:50~にて語られたお話を、筆者が編集、再構成等を行い文章化したものです。実際の語りとは表現が異なりますので、気になる方は是非本編を視聴してみてください。

※この三話は、2021年の年末スペシャルの開幕冒頭からほんの17分までの間にいきなりつるべ打ちで三連発された怖い話たちで、流れるような禍ラッシュに初聞き時に脱帽してしまいました。
かぁなっき氏がこのときやろうとして結局やめていた「事務的に低めのボイスで投稿文読み上げ百連発」的なやつが「元祖!禍話 第三夜」おたより連続詠唱『怒霊界エニマガ』(01:03:00~)として先日実現していたので、それもあって何となく今でしょ、とリライトした次第です。

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