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【禍話リライト】東屋のふたり

ええと、わたしの地元の、高校の隣にある公園の話で。
そんな立派な公園じゃないんですけど、そこ東屋があるんです。
暑かったらそこで休憩、雨降ってもそこで休憩みたいな。


自販機とかもあって、夜ジョギングとかしてると経路としてちょうど良かったんですね。
その晩も走ってて通りがかって、そしたら東屋に人がいるなあって。
見たら東屋の中のベンチの上に人が立ってるんですよ、二人ぐらい。
座ってるんじゃなくて立ってたらおかしいじゃないですか。

なんで?と思いつつ自販機で飲み物買って、夜だし酔っ払いが馬鹿な行動してるのかなあって、でも振り返ったらいなくて。
馬鹿やってる自覚はあって、人が通ったのに気付いてサッて隠れたのかなって。

それで家帰ってシャワー浴びて寝たんですけど。
そしたら夢の中で、すごいザアザア降りの中を自分が走ってて。
あっ、良かった東屋だって雨宿りできるとこを見つけてそこに向かってくんですけど、それが例の公園で。
まあ実際よく通ってるから夢に出て来るのはなんらおかしくないんですけど。

東屋に先客がいて、男のひとが二人ベンチに座ってて。
駆け込んできたわたしを見てどうしたんですか?って。
いや見りゃわかるだろと思いつつ、すごい雨だからって説明したら。
ああそうなんですね、じゃあ僕らはちょっと……って。


ベンチの上に立ったんですよ。



そんなことしたってスペースが空くわけじゃないし、何の意味もないじゃないですか。
だからいや、なんですか?って聞いても。
いやいや全然ね、えへへ……ってなんか、二人してさも気の利いたことしました、みたいな感じで。


気持ち悪いから雨が穏やかになってきたらすぐ出ようと思うんですけど、より激しい叩きつけるような雨になってきちゃって。
ふつうにベンチに立ったまま、やまないですねえとか声かけられて、うわ会話したくないなあって。
なんかこの近くに住んでるんですか?ま、まあ……くらいで返事して。
それでふって見たら。


その、ベンチに立ってる二人の背が。

ベンチに上がってるから高くなってるはずじゃないですか。
それが座ってるぐらいの高さになってて。
見ちゃ駄目だと思ってすぐ目を逸らして。



その、そんなに広い東屋じゃないので、位置的にもしベンチに座り直したんなら自分に足とか膝とか当たるはずなんですよ。
物音も何にもなくって。
そこでようやく、これ夢だって気付いて。
ああそっかそっか、寝る前に変な人たち見たから夢に出てきたんだなって。

夢だって気付いたんですけど。
でも全然終わらないんですよ、普通夢だって気付いてらすぐ覚めるじゃないですか。
おかしいなあって思ってたら背後から


「覚めませんねえ」


って。
そこでようやく目が覚めて飛び起きたんです。



後日またその公園を通りがかったら、ベンチの上に立たないでくださいって管理会社が注意の貼り紙をしてて。
あの辺ってなんかあったんですかね。
一応戦争のとき空爆とかされてる地域なんですけど、ピンポイントであそこで人がいっぱい死んだかとかそういうのは分からなくて。


ただ、座り直したんじゃないとすれば。
立ってるのに座ってるぐらいの大きさになってるってどういう状態なのかなっていうのをどうしても考えてしまうんです。


【おわり】






※本記事は、猟奇ユニット「FEAR飯」による怖い話をするツイキャス『禍話』のうち、『禍話インフィニティ 第一夜』(2023/7/1)の58:51~にて語られたお話を、筆者が編集、再構成等を行い文章化したものです。実際の語りとは表現が異なりますので、気になる方は是非本編を視聴してみてください。

※短くも鋭利な、放送の最後の方でポロっとされた話のわりにはずいぶん怖えな!?というお話だったので書きました。短いやつの良さがあると思います(この文章で再現できているかはともかく)。


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