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【禍話リライト】背の高い何か/遺影と家

これは投稿でいただいた話です。
十数年前、当時中学生だったときに体験したことだそうです。
 
その方の地元は山間部、といってもそれなりに人が住んでいるところで。
そういう地域だとよくあることだと思うんですけど、同級生と一緒に下校してても、家が山の上の方か下の方かとかで途中で帰り道が分かれるようになってたんですって。
 
それで、部活を終えて友達と一緒に帰ってたんですけど途中からはひとりになって。
夏の蒸し暑い夜、鈴虫の声を聞きながら街灯の少ない山道を下って、このままもうしばらく坂を進んで曲がれば家に着く。
でもその日はなんとなく、このまま真っ直ぐに帰ってしまうのが物足りなくて、いつものひとつ手前で曲がってみることにしたんだそうです。
もちろん一本向こうの坂道に行くだけで、そっちからでも帰れる訳です。
 
普段と違うところを曲がって。
坂道にさしかかったところでふと数十メートル先を見ると、まばらにしかない街灯の下に背の高い何かがいる。中学生の自分よりもはるかに高いので、ゆうに2メートルを超えていそうな何かが道の脇に立っている。
遠くでよく見えなかったので、工事現場の人型の注意看板か何かだろうってそのまま進もうとしたところ、その大きな何かがスッと動き始めて。
うわっと思ったのが、その動きには全く予備動作がなかったそうです。
そいつがかたちを変えることなく滑るように猛スピードでこっちに向かってくる。

死にものぐるいで引き返して普段曲がるところまで戻り、猛ダッシュで家に駆けこんで。
ただ全力疾走したからではない嫌な汗をびっしょりかいて。
投稿者の方曰く、人間そういうときは変なことを考えるもので「等速直線運動だ!!」と、当時学校で習いたてだった言葉が脳裏に浮かんだのを鮮明に覚えているそうです。
 
そんなことがありましたから、それ以降もう二度とその道を通ることも、目に入るところまで行くこともなく過ごしたんですって。
さいわい、そこは家からすぐ近くの道ではあったものの、生活の上で通らざるを得ないようなところではまったくなくて。
 



 
……そして話は去年の年末になるんですけど。
こんなご時世なので久しぶりにようやく地元に帰省したものの、あまりにもやることがなくて暇だったので、タバコを吸いに出がてら散歩をすることにして。
それであの時のことを思い出して、日中だったのもあって、今にして思えばきっと何か見間違えるようなものがあっただけだよなあ、と確かめに行ったそうです。
 
十数年ぶりに足を踏み入れたそこは、本当に何の変哲もない道でした。コンクリートに舗装されたどこにでもあるような小道です。
この辺りに立ってたんだよなあ、と行ってみても、何もない。
何もないのは良いんですけど、でもどうにも違和感がある。 
あれ?ん?数秒思案してその正体がわかりました。


そこには街灯なんかなかったんですって。
撤去した跡や、コンクリートを敷き直したような形跡もない、最初からずっとそのままの様子の古びたコンクリートだけがそこにあって。
背の高い何かは幻覚だったとして、それを照らしていた街灯まで幻だったなんてことはあるんでしょうか?
それとも街灯もこの世のものではなかったんでしょうか?
謎が解けるばかりか深まるばかりだったそうです。
 
これは私が思ったことなんですけど、照らしてたのはそもそも街灯だったんでしょうか?それ●●を見せるために、街灯ではない何かが光っていたのを、街灯だったというふうに記憶を書き替えたって可能性もありますよね。
いずれにせよけっこう危なかったのかも知れません。
 







 
もうひとつ、近い話でこういう投稿がありました。
 
習慣として夜中にウォーキングをされてたんですって、音楽とか聴きながら。そしたらお婆さんに話しかけられたことがあったと。
話しかけられたというか、夜歩いてたら「イヤー!」って叫ぶ声が聞こえて、そっちを見たらお婆さんがいて目が合った、ということらしいんですけど。
それでお婆さん、恥ずかしそうに近付いてきて向かいにある家の二階の窓を指さして言うんですね。
「ごめんなさいね、何回見ても慣れないのよね~」って。
えっ?って指差してるところを見たら。

横長の建物の二階が大きな一つの部屋になってるみたいで。横に繋がってる窓から白い蛍光灯が光ってるのが見えて。その壁の高いところに、遺影が四つかけられて並んでるのが見えたと。
ちょうど外からまっすぐ見える位置にあって嫌だなあって。四つのうちのひとつは女性だってわかるぐらいはっきり見えてて。そもそも夜ですし普通はカーテン閉めるじゃないですか。
確かにあれは嫌ですねえ、びっくりしましたってお婆さんと会話して、その場はそれで終わって。

それで翌日、夜またウォーキングに出て確かめに行ったら、ないんですって。その家。
この辺りだったよな~っていくら探しても、同じような家は二、三件あるんですけど違うんですよ。遺影が二階に外に見える感じにわざわざ電気点けてる家が、ないんですって。
そういえば、長いこと夜歩いてて、あのお婆さんもあのとき初めて見たなと。気持ち悪いなあと思って、そのあと時間帯を変えてまた見に行ってみても、やっぱり見つからなかったそうです。
 
きっとこれね、遺影を見せるための家だったってことだと思うんですよ。
仏壇って二階に置かないですからね。


【おわり】






※本記事は、猟奇ユニット「FEAR飯」による怖い話をするツイキャス『禍話』のうち、『禍話アンリミテッド 第三夜』の19:35~にて語られたお話を、筆者が編集、再構成等を行い文章化したものです。実際の語りとは表現が異なりますので、気になる方は是非本編を視聴してみてください。

※短いながらも「少し不思議」の範疇のような、でも実は滅茶苦茶怖いような、そういうあわいにある話で印象深くリライトさせていただきました。あれなんだったんだろう?というもののひとつやふたつ誰にでもあると思うんですけど、みなさんもそれを確かめるのがちょっぴり怖くなるのではないでしょうか。

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