見出し画像

【禍話リライト】属性:闇

これはAさんという女性からの投稿。
本気で怖い話が続き過ぎたときに箸休め的に紹介された話だ。


Aさんには中学生の時、ちょっと“イタい系”の友人がいた。
当時は気付いておらず、女の子どうし仲良しで単に楽しい友達だなあと思っていた。
ある日の下校中、その友人が急に

「わたし、見えるんだ」

と言い出した。
一瞬「ん?」と思いはしたものの、素直な中学生だったので何が見えるの?と尋ねたところ、妖精というか、精霊のようなものが見えるのだという。

まあそこで否定してもしょうがない。
私のお姉ちゃんも見えるんだ、それでその見えるものに名前を付けているんだ、と続けるので「へえ~」と感心していたところ、
「あなたのも見てあげる」
とAさんの手を握り、友人は目を閉じた。
今だったら(百合モノかな?)とか思ってしまうようなシチュエーションだが、しばし間があったのち、友人は口を開いた。
「……かぜ」
Aさんも天然なもので、え?平熱だけど?と返してしまったのだが、いやいやそういうことではない、と。

精霊には属性があったのだ。

精霊たちの名前と属性、そして相性などを細かく書き記したノートを見せてもらった。
13種類くらいの精霊がいたのだが、今にして思えば色々言いたいことがある内容ではあった。
いかにも中学生が考えそうな格好良さげな名前だったな……とか。
氷属性と雪属性、雨属性と水属性が同時にあっちゃ駄目だろ……とか。
精霊の見た目のイラストがぶっちゃけポ●モンみたいだったな……とか。
だがしかし、当時のAさんは素直な中学生だったので、そうなんだ、私には風属性のやつがついてるんだ、と思った。

それから数日後、その友人の家に遊びに行くことがあった。
友人には5歳くらい年上のお姉さんがいて、彼女も一緒に遊んでいたのだという。
そこで、あ、そう言えばお姉さんもそういうの“見える”んですか?と尋ねたところ、「見えるよ」と。
それは人生退屈しないですね~と話していたところ、急に姉妹が顔を見合わせて

「でも、闇の属性のやつはヤバい」

と言った。
闇属性の精霊はヤバいのか。
友人の話では精霊はこっちから接触できる、応援してくれる、みたいな感じだったのに、闇だけはヤバいとはどういうことなのか。

曰く、他の精霊は自然の中に昼夜問わずいるのに対して、闇は家の中にいる、それも夜しか出ない。
他の精霊には指示とかできるけど、闇は言うことを聞いてくれない。
そして他の精霊はポ●モン的なキャラものの姿をしているのに、闇は人型をしている。

そんな話だった。
他にも闇がどんなやつかという話を色々聞いたのだが、その場では「そうか、闇は大変だなあ」と思っただけだった。





それから何年も経って、Aさんも大人になった。
そしてふと、あのときの友人の話を思い出し「あれ?ちょっと、本当にヤバくない?」と気付いたのだという。
というのも、そのとき聞いた闇の精霊の姿というのが

白いワンピースを着た髪の長い女の人


だったのだ。
――――そして闇の精霊が何をしていたかというと、


「夜二階に上がろうとすると階段の一番上でこちらを見下ろしている」

「二階の姉妹用の洗面台に片手をついてじっとこっちを見ている」

「夜ふっと目を覚ましたら枕元に立っている」



Aさんは思った。



「・・・・・・完ッ全にオバケやん、それ!」

姉妹の間での認識は、
は夜の家の中でしか見たことないし、わがままでシャイ」
しかしこれは、どう考えても家に幽霊がいるだけだ。



姿といい行動といい彼女たちの設定に当てはまらない上、見た目も人型な時点で最初から「オバケだ!」となるのが普通と思われるが……
しかし、これは恐らく順序が逆なのかも知れない。

きっと彼女たちが小さな子供のときからずっと、その家に「闇」はいたのだろう。
この世のものではないそれを、子供の中二病的な発想で設定を作り、その中の「闇」だと思い込むことでなんとかしていた、という話だったのではないだろうか。


――なお、その友人は何事もなく今でも元気に過ごしているらしい。

【終わり】




※本記事は、猟奇ユニット「FEAR飯」による怖い話をするツイキャス『禍話』のうち、「THE 禍話 第10夜」(2019/9/25)の25:22~にて語られたお話を、筆者が編集、再構成等を行い文章化したものです。実際の語りとは表現が異なりますので、気になる方は是非本編を視聴してみてください。

※このお話は怖さよりも「本当に物心ついた時から家に何かがいてしまった場合、人がそれを自分の中でどういう風に処理するのか」という観点が非常に興味深くお気に入りだったため、リライトさせていただいた次第です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?