良かったらご一緒しますよ
私の住む地域は今季、
観測史上最高記録の積雪量でした。一晩に1m近い雪が積もり、もちろん歩道の点字ブロックは真っ白な雪の下。点字ブロックどころか歩道は人1人通るのがやっとなくらいのけものみち状態。
ここ2~3年で急激に視力も視野も低下してしまった私は、ずっと躊躇していた白杖を持つことを決めました。
なぜ躊躇していたのか?
それは、、、
・全盲ではないから大げさだ
・まだまだ見えている
・杖なんか持ったら負け
のような気持ちがどこかにあったから。
全盲でなくても白杖は使います。
白杖使用者の半数以上はロービジョン(弱視)です。なかなか知られていませんが。
私のようになかなか白杖を持つことが出来ないロービジョンの方はたくさんいると思われます。
だって白杖を持ったら
「私は目が見えてません!」
ってわかりやすく宣言するってことで、、、
恥ずかしさとか悔しさとかいろんなプライドが邪魔するんですよ。私のように中途視覚障害者の方々は特にそうだと思います。
だけどね、
いざ持ってみたらみんな言うんです。
「もっと早く持つべきだった!」
って。
道路の状況を杖の先で探ったり、点字ブロックの凸凹を感じたり、障害物を検知したり。
想像してみてください。
目が見えない状態で手探りで歩かなければならないとき、
何も持たずに手ぶらで歩くのと杖を持って探りながら歩くのと段違いの安心感があるんです!!
あ、段差も感知できます。
(段違い、だけに)笑
思いきって持ってみた白杖。
そんな安心感の他にもうひとつ持って良かったと思える理由が。それは、
シンボルケーンとしての役割。
私があれだけ躊躇していた「目が見えないことを周りに知らせる」という役割です。
目が悪いって思われるの嫌だったんじゃないの?
ハイ、正直言って変なプライドが邪魔して恥ずかしいって思ってました。ずっと。
でもね、
その思いを覆す体験があったんです。
この記録的積雪の真冬に。
私の持病の特性に
羞明(しゅうめい)
というものがあります。
明るいのが苦手。
眩しいと見えにくいのです。
曇りの日や夜のほうが見えやすいです。
この特性のおかげで昼間の外出は大変なのですが、これに加えて雪の白さが!一面真っ白な視界でほぼ何も見えなくなってしまうのです。
今季初めての大雪の日、
真っ白な世界で点字ブロックで道を辿ることも出来ず、途方に暮れて立ちすくんでいた私に、前方から来たと思われる女性の声が。
「もし良かったらご一緒しますよ」
前から来たということは、
私の進もうとしている道に一緒に行ってもらうと、来た道を戻ることになってしまう。
「いえ!あの、大丈夫です、たぶん」
と、断るようなセリフを言いつつ今思えば遠慮しながらも心の中で声を掛けてもらった嬉しさが爆発していてそれが伝わったのかもしれません。
女性は優しく腕を差し出して
「どうぞ私につかまってください。急ぎの用事じゃないのでよろしければご一緒します」とおっしゃいました。
嬉しさと安堵で涙が出そうでした。こんな大雪の日に急ぎの用事ではなくても来た道を引き返して誘導してくれる優しい人がいるなんて。
なんてありがたくて
なんて幸せ者なんだろう。
私がもし目が見えていたとして、同じことが出来ていただろうか。声をかけるのも勇気がいるのです。
もし白杖を持っていなかったらその女性も私に気づかずに通り過ぎていたに違いありません。
白杖を持っていて良かったと初めて思った瞬間でした。