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旅するこころ -気散じ-

繰り返される毎日に疲れ果て、都会の華やかさも喧騒に変わっていた。アパートで一人心が沈む夜。ふと顔が浮かび送ったメールへの返信は一文だけ。 "沖縄の海はいいぞ、あんたも来たら" 翌日には、空を飛び海を渡って、波照間島まで来ていた。ほわっと熱い空気、何処にいても心地よく聞こえてくる波の音、山羊の声。私の知らない世界。 学生と先生という関係ではあったが、当時から何だかとても気が合った。取留めのない事から生きる意味についてまで、思いつくまま語り合った時間は、この上なく多彩だった

笑お-已己巳己 いこみき-

写真は飾ったままにしておいた。 幼稚園の行き帰りも、おやつを買いに行く時も、二人で歩いた浜辺。いつも少し寂しげな海の色。ゾウさん模様のビキニを着てしかめっ面をしている私と、パラソルの下で微笑む母。 我が家では恒例の、キャンプ場。どこまで見上げても深い緑。父と兄、こわばった顔をしている私と、にこにこしている母。 そういえばと、見返して思い出す。女の子らしい恰好が嫌いだったし、木々から聞こえる蝉の声が怖かった。 でも、母が笑っていたから。どんなことも包みこんで、笑って、楽