【ライブ】加藤登紀子 CONCERT 2024 @ビルボードライブ東京
真っ赤なドレスを身に纏ってステージに現れた彼女は、キッパリと言った。
「60歳です」。
わははっと笑いながら、「歌手生活60年ですね」と続ける。
観客席を見渡しながら、むふふ...といった表情で、言う。「年齢も多種多様、いろんな人が来てるわね。経験談を聞きたいくらい」。
このユーモアと好奇心が、エネルギーの源なんだろう。
「最近、嫌なこともいっぱいあるでしょう」と、あたしの方を見て言った(ような気がした)。
『知床旅情』の3番、別れの日は来た...のくだりで涙が溢れた。
歌い終わった後、彼女はこんな話をした。
「父はおんおんと声をあげて泣く人だった。出会いよりも、別れが残っていく」。
「昼間のパーティーで、森繁(久彌)さんの息子さんに会ったら、すでにおじいさんになっていた(笑)。そりゃそうですよね、あたしだってあの頃は少女だったんだから」
パーティーというのは「歌手60周年記念パーティー」で、つまりダブルヘッダー。圧巻のバイタリティ。
目の前に伝説の歌姫が存在し、時々、目なんか合っちゃったりして、金縛りにあったように、時間が経つほどにカラダは固くなっていった。
緊張ともちょっと違う。素晴らしい歌を目の当たりにして、心は潤ってるんだけど、身体が固くなっていくフシギな体験。
ビルボードライブ東京は(横浜もだけど)、とにかくステージと客席が近いから、アーティストが至近距離。シワの一本一本もわかるくらい。
『知床旅情』は、昔はそんなにいいと思わなかった。年齢を重ねて、沁み入る曲なのかも。
「音楽は思い出」。
確かに彼女はそう言った。
音楽と思い出が繋がって、積み重なっていく幸せ。
観た日:2024/10/10
見出し画像:ライブ会場にて
(敬称略)