消えたいなんて思ってない
その選択。
わたしのとても大切な人も。友だちの大切な人も。バンドをやってたあの子も。自ら命を断つ、その選択をして、わたしの目の前から消えてしまった。
それは突然で、でもきっと突然なんかじゃない。
その事実は、そっと触れてはいけないことのように綺麗に箱の中に入れられてしまう。思い出そうとしてもその部分だけ、ぽっかり抜けてしまっている。だから最後の会話も思い出せない、だって最後がよくわからないから。
生きるのが辛かったり、生きていると誰かの迷惑だと思い込んだり、その選択をする理由はそれぞれだと思う。
その選択はできないけど。気持ちは分からないとはいえない。
生きていることが不安になる時がある。急にどうしても不安が取れなくて、辛くて不安で真っ暗になる。自転車のサドルの回る音と一緒に、涙が止まらなくて、このままブレーキをかけなければ、わたしは消えるんだと思うとまた不安になる。
ぎこぎこ。ギコギコ。
そのスピードと一緒に全部を吐き出そうとする。でも、すごくむずかしい時がある、その時にいつも自分にかける言葉がある。
「わたしが消えても時間は止まらないんだよ」
そうやって、気持ちをうまくコントロールする。
死にたくない。
生きるのが辛いのと死にたいはイコールじゃないと思っている。
すごく生きたい。でも、そんなわたしでも消えてしまうかもしれない。
それは、わからない。
うまくコントロールしながら生きているようで、本当はすごく極限まで追い詰められてるかもしれない。
それも、わからない。
わたしは、死ぬのがすごく怖い。だから、その言葉を気軽に絶対使えない。だって、一つの命が消えても時間は止まらないから。
残された人が悲しくて、そこから抜け出せなくても、その周りは次の日には切り替わってる。一緒に悲しんでくれた人も、1週間後には仕事の進捗の方が気になってる。そして、残酷にも「前を向かなきゃ」というのだ。
大きな仕事をしてたとしても心配なんかいらない。代わりはいることを知っている。どんなにすごい人だっていなくなれば、誰かが代わりになるのだ。仕事の中で、どんなに偉い人でも、結局は会社の中や世の中に消化されている。
死ななくてもよかったのに。そうやって声をかけてくる人は、その選択をした多くの人が死にたいと思ってたと思い込んでいる。
わたしは、死にたいと本当は思ってない人も多くいるんじゃないかって、そう思う。これは事実はわからないけど。
自分の存在を見て欲しい。自分のやりたいことを認めてもらいたい。
例えば、こんな風に思っている人が死にたいと思って死ぬのだろうか。
きっと、悔しくて、悲しくて、すごく不安になって、自分がコントロールできなかったのかもしれない。そして、もうその道しかないと強く思うしかなかったのかもしれない。生きたいけど、生きたいけど、死ぬんだって。
素直に吐き出せる人が羨ましかった。
わたしは、たくさんのスタッフの悩みを聞いてきた。販売員の教育をしていた頃、そのほとんどの時間を心のサポートに費やした。
「死にたいです」このセリフを何回聞いただろうか。リストカットのあとを何度この手で包んだだろうか。夜中まであなたはすごい人なんだってどれだけ言い続けただろうか。それでも、素直に言える彼女たちが羨ましかった。わたしには言えない、どんなに不安な夜も、自分にしか分からない、この感情の扱い方に悩む日も、そんなことは言えない。
怖いから。
わたしが見てきた景色は、残酷だった。きっと変わらない、その尊い命が消えても世界は変わらない。
生きてこそ。
生きてこそ。それは本当だと思う。
消えたら、自分の伝えたい想いが引き継がれても、何か少しでも残ったとしても、それを見ることができなくなってしまう。
だから、不安や辛さを見せないように、うまくコントロールするのは大切なことだと思っている。誰かを失った後に、「言えばよかったのにね」とだけいう大人の話を聞く前に少しだけ聞いて欲しい。
わたしは楽しいことが好きだし、人生の98%は笑顔だ。自分の周りに感謝しているし、大切な人は少なくない。愛おしいと思う瞬間も、たくさんの愛を感じることもある。会いたいと思う人もたくさんいる。
2%の不安の時間の深さは、わたしにしかわからない、言葉にできない何かなのだ。そして、その時は自分で向き合うしかできないのだ。その強さは必要だと思っている。
もし、これを読んでくれた人が同じように、うまく説明できない不安な気持ちを過ごす日があれば、あなたは周りと、うまく付き合っているし、大切に思われている。だから、この不安は自分と向き合うしかないけど、他人はあなたを悪く思ってないことだけは自信を持って欲しい。
自分に素直に。説明できないことは変なことじゃない。それに、もし不安に負けたからといっても弱い人じゃない、あなたは強い人だ。
どんなに不安になっても、あなたはおかしくない。
この説明できない気持ちがある人は、少し繊細なだけなんだから。悪いことじゃない。
わたしもそう思うようにしている。
とても偏った意見かもしれないけど、言葉にできない不安な夜がきたら、そういう人が他にもいるんだって思ってくれる人がいたら嬉しい。
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