【全身麻酔中】痛いと心拍数・血圧が上昇する(でも例外が結構あります)
全身麻酔導入が終わり、手術が始まった。
麻酔科医
「患者さんが痛がっているか、ってどうやって判定する?」
研修医
「えっと、心拍数の上昇とか血圧の上昇ですか?」
麻酔科医
「そうだね!でも、、」
例外が結構あります。
■心拍数と血圧の上昇が基本
さきの会話で研修医が答えてくれた通り、
全身麻酔中の痛みの判定は、
心拍数と血圧の上昇が基本です。
簡単に流れを説明すると
図のようになります。
ちょっと混乱することを言います。
上の図をみながら聞いてくださいね。
全身麻酔中は
「痛い」という感覚は
意識に上らないのでありません。
え?
じゃあ、
全身麻酔中に麻酔科医が
「痛がっている」
っていうのはなんなの?
それは、
長たらしく説明すると
「痛み刺激で、交感神経が刺激されて、頻脈・血圧上昇が起きている」という現象を「痛がっている」と表現しているのです。
はい!
混乱させてしまったでしょうか。
大丈夫ですか?
もう一度図を眺めてみてください。
そして
「本当に痛いか?」は謎です。
心拍数と血圧が上がったからといって痛くないこともあれば、
心拍数と血圧が上がらなくても痛いこともあります。
具体例をみていきましょう。
■上がっても痛くないことはある
心拍数と血圧が上がる原因は「痛み」だけではありません。
交感神経刺激されればそうなるわけです。
2つ事例を紹介します。
- ①腹腔鏡下手術
腹腔鏡の手術では、
お腹をふくらませるために二酸化炭素を使用します。
これが徐々に体内に吸収されて高二酸化炭素血症になると、
それが交感神経刺激になります。
- ②帝王切開
全身麻酔ではないですが、
患者さんが起きているので
確実に「痛くない」状況が確認できます。
帝王切開では
赤ちゃんを出すとき、
術者は心臓マッサージのごとくお腹を押します。
このとき患者さんは「痛くはない」のですが、
強い力でお腹を押される刺激で心拍数と血圧が上がります。
その他にも、
痛み以外の
「交感神経刺激」されている状況があるか?
を確認しましょう。
■上がらなくても痛いことがある
痛みによって
交感神経刺激されても、
その先の心臓、血管が反応しなかったら?
「痛くても、反応がない」
状況になります。
- ①術前からβ遮断薬を内服している
高血圧などで
術前にβ遮断薬を飲んでいる患者さんがいます。
例えば
メインテートです。
この場合、
交感神経刺激されても
心臓が薬によって抑制されているので
心拍数が上がらないことがあります。
- ②血管拡張薬を投与している
①と同じ理由ですね。
カルデナリンなどがこれにあたります。
その他にも
心臓・血管を抑制するような薬が投与されていると
「血圧は上がっても、心拍数は変わらない」
「心拍数は早くなったけど、血圧は低いまま」
という状況になります。
■じゃあ、どうしたらいいの?(次回に続く)
そうなんですよね。
痛みがあったら
鎮痛薬を投与する
非常にシンプルですが、
まず「痛みがあるかどうか?」
を判定しなければいけません。
患者さんが
「痛っ!」
と言ってくれれば確実なのですが、、。
残念ながら全身麻酔でお休みになられています。
現状では「痛み」のみで上下するパラメータをモニターできないので、
総合的な判断をするしかないんですね。
「総合的な判断ってなんだー!」
ということで、
それはまた次回
深堀りしていこうと思います。
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