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書籍紹介『自閉っ子サンちゃんのライフスキルトレーニング』

『自閉っ子サンちゃんのライフスキルトレーニング(たなか れもん/平岩 幹男)』という本の紹介です。

単純にライフスキルトレーニングの本なのかな?と軽い気持ちで購入しました。ですが、僕自身が普段大事にしている子どもたちとの関わりと重なる部分が多く、伝えたかったけれどなかなか言語化できなかったものをまとめてもらえた感じです。

というわけで、本の中からお伝えしたい部分を紹介していきます。

子どもに主導権を取られすぎてませんか?

(画像はPRTIMESより)

「子どもの意思を尊重する」それってすごく大切なことです。でも、その子どもたちに全てを自分でコントロールする力がすでにあるのでしょうか。

もちろん、子どもの実態によります。ですが、多くの子どもたちは、経験不足なことも、感情をコントロールする力がまだまだなこともあります。

  • 嫌なことを「後でやるから」と言って、後回しにしたものの、もっとめんどくさくなり「やりたくない!」と怒ってしまう。

  • テレビやゲームを「あと●分で終わり」と決めたけれど、いざ時間になってもやめられずズルズルと続けてしまう。

  • 上手くやる方法や伝え方がわからずに癇癪を起こしてしまう。

  • 欲しいおもちゃが買ってもらえないと泣き叫ぶ。

(画像はこそだてDAYSより)

そんな子たちの意思だけでいろんなことを進めてしまうと、歯止めがきかなくなってしまいます。また癇癪を起こして泣き叫ぶ子を見て「可哀想だな」と思って、つい、おもちゃを買ったり、お菓子をあげたりしてしまうことは、子どもが「癇癪を起こせば要求が通るんだ」と誤学習してしまうことに繋がるかもしれません。

厳しく叱って言うことをきかせましょうと言っているのではありません。叱る効果は一時的なものですし、子どもに本当の力はつきません。それに後で大きな反動があります。

まずは「ここまではやってもらうんだ」というラインを決めましょう。子どもの様子を見て実現可能なことから考え、できれば一緒に話し合ってお互いが納得できるラインを模索しましょう。

そして子どもに主導権を取られないために、一度決めたラインは譲らずに、粘り強く対応しましょう。ダメと否定するだけではいけません。「●●したらいいんだよ。やりたいことができるんだよ。」と前向きに伝えてあげましょう。

子どもができたときは、すぐに褒めてあげましょう。やりたいことをやらせとあげましょう。このやりとりを重ねていくことで、「●●すれば、これができるんだ」「これをするためには●●をすればいいんだ」という見通しを子どもたちが持てるようになるのです。

ね わかった? こうやって主導権をとらなきゃ
彼女にとってトランポリンを跳ぶことは難しいことじゃないでしょう?
それなのに リモコンをもらうために 15分も粘ったんだよ
彼女は自分の中で「トランポリンは跳ばない」って決めちゃってる
それを突き通せば 跳ばなくてもリモコンがもらえると確信してる
君たちの指示を聞くより 「グズれば夢が叶う」と 学習しちゃってるってこと
グズるのはいいけれど やっぱり 「言われたことをやったらちゃんとごほうびがもらえる」 ってシステムにしないとね
「自閉症」っていったん診断されちゃうと とくにサンちゃんみたいに いちどは出ていた言葉が消えてしまったりすると 
「強く言ったらダメなんじゃないか」「壊れちゃうんじゃないか」とか 思うかもしれないけど
そんなことないよ
適切な行動を教えてあげて ほめてあげることごだいじ
……
適切なことをしたら ごほうびがもらえる
このシステムがわかれば お互い楽になるよ

3話 絶対にできるからね

ほめて、スキンシップをとっていますか?

(画像はPRTIMESより)

本当に主導権をとるには コミュニケーションが大切
サンちゃん ハイタッチや「はーい」の手挙げはできてるし
アイコンタクトもとれるね
……
成長スピードを上げるには こちらからもっともっとかかわっていくことが大事
まずやってほしいのは 「たくさんほめる」こと!
1日30回…   50回ほめてほしいなっ
(50…!? ほめるって…   どこをそんなに…)
お手伝いをお願いすればいいんだよ

うまくできなければ すぐに手伝ってあげて
たとえば途中までできていたら できてるところをほめて…
励ますのもいいね
できたらスグにほめてあげる
……
ハイタッチはコミュニケーションの基本だよ 目の高さを合わせて ては子どもの目線よりも上で タッチ!
両手でタッチは アイコンタクトが取りやすいよ
とにかく いっぱいほめて
「この人の言うこと聞くとほめてもらえるし損はないわね」くらいに思ってもらえたらいいから

「ほめる」と同時にやってほしいのが「欲求返し」
サンちゃんからの要求を 主導権をひっくり返すチャンスに変えよう

4話 主導権をとるチャンス

僕は仕事柄、普通の人よりも多くの「ありがとう」を言っているはずだ。

「『子どもをほめてください』…そう言われてもそんなにほめることなんてないよ」なんて思う人もいるかと思う。

過剰に褒めちぎる必要はない。できたこと、やってくれたことに対して「ありがとう」を伝えればいいのだ。例えば靴を揃える、ドアを開ける/閉める、電気をつける/消す、食器を運ぶなどなど、「ありがとうの種」はいたるところにある。

それに加えて、できたときのハイタッチなどのスキンシップも有効だ。「ハイタッチでやる気アップ、次からも頑張るよー」なんて言ってくれる子たちはたくさんいる。

あと僕のオススメなのがほめの共有。「今日は●●頑張ったんだよ。できたんだよ」なんて子どもたちの授業の様子を同僚の先生やお家の人になるべく伝えるようにしている。そうすると、単純にほめられる回数が倍増するんです。

そんな積み重ねが子どもたちの自主的な、積極的な行動へ繋がっていくんだと思います。

注意点もあります。子どもたちができるようになると「アレもコレも」「もっともっと」という欲が出てきます。が、「できる」から「一人でできる」「素早くできる」「当たり前にできる」になるまでは時間がかかります。次から次に求められるのは大変です。前よりも頑張ってるのに、ごほうびがこれまでとは変わらないとやる気がでません。そのあたりは子どもの気持ちを考えて、スモールステップで取り組むことをおすすめします。

「もっと〇〇ください」みたいな3語が何回かうながせば出るようになってきたものの 「2語で伝わってるからいいじゃん」という雰囲気が サンちゃんからにじみ出てます…
それはズバリ 今までより難しいことをしてるのに ごほうびが今までと同じだからだね 自分に置き換えて想像してみてよ 仕事量が2倍3倍になったのに 収入が増えなかったらとしたら…嫌でしょう?
お給料もらえなきゃ働く気にならないのは 子どもも同じだよ

19話 いろいろないろ

信頼関係ができれば、関わりが変わってくる

(画像はPRTIMESより)

そんな風に子どもとのやりとりを重ねて、ほめるほめられるを重ねていくと信頼関係ができてきます。

なんとなく自分に自信がわいてきて、ふしぎと子どもたちも応えてくれるんです。

トレーニングをはじめてから…
お手伝いとか 言葉をうながすとか そういう小さなことで 単純にサンちゃんとかかわる回数が増えて
その結果 ちゃんと信頼関係ができた…   と思う
そして自然とスキンシップも増えた…
「サンちゃんできるよ!」って言うとなんとなく自分にも自信がわいて
ふしぎとサンちゃんも それに応えてくれる
そっか…   それまでは真逆だったな
とにかく不安でいっぱいで
それを怒りに変換してた
もっと 自分に自信を持たないかんのだろうなって 思ったったけど…
それ以外に
「サンちゃんはできる」って 強く信じなきゃいけなかったのかもしれない

18話 本当に必要だったことは

まとめ

あっという間に半年…
次はどんなことができるようになるのか 楽しみだなぁ
うまくいくことばかりじゃないけれど
大きく変わるわけじゃないかもしれないけど
ある日ふわっと
何かが起こるかもしれないから

23話 いってきまーす

どの子にも絶対に使える万能薬みたいなものはないのかもしれません。この本で紹介されているサンちゃんとの関わりが、そのまままるっと他の子にも使えるとは限りません。

でもこうしたやりとりを重ねて、信頼関係を築いていくこと、子どもたちが「どうしたらいいのか」がわかり、できたことをほめられ認めてもらい、それが次の行動へとつながっていくサイクルってとっても大事です。

漫画なので読みやすく、そんな大事な関わりのエッセンスがたくさん詰まった本です。よければ読んでみてください。

監修者の平岩先生は、Twitterなどで情報発信されている他、ライフスキルトレーニングなどに関する著作も多数あります。

気になる方はぜひのぞいてみてください。



表紙はAmazon.co.jpより引用しました。