書籍紹介『盲教育史の手ざわり』
『盲教育史の手ざわり 「人間の尊厳」を求めて(岸 博実)』という本の紹介です。
この本は、岸先生が2011年から2019年まで『点字毎日』新聞に執筆・連載した「歴史の手ざわり・もっと!』に加筆されたものです。
歴史とは少しの文字で表せるものではない
視覚障がい教育が育まれてきた歴史と一言で言うのは簡単なのですけれど、それは年表や記録には現れない想いが重なった歴史でもあります。
この本を読み進めながら、左近充孝之進(さこんじょうこうのしん)さんの項目を読み、以前から気になっていたけど積読になっていた『見はてぬ夢を(山本 優子)』という本を手に取りました。その本を通して学んだのは、「●●さんは●●をしました」という歴史上の出来事だけでなく、その時代の中でその出来事を成し遂げた人間のドラマがあるという当たり前のことでした。
盲学校に勤務し、点字技能師試験のために勉強したこともあるので、左近充孝之進が日本最初の点字新聞「あけぼの」を発行したことや、今の兵庫県立盲学校のもとになる学校を開いたことは知っていました。また岸先生とのご縁で、彼と妻増江が発行した「点字独習書」の実物にも触れる機会にも恵まれました。それが恥ずかしながら、今まで彼を描いたこの本を読んだことはありませんでした。それは、彼が日本最初の点字新聞「あけぼの」を発行したことや、今の兵庫県立盲学校のもとになる学校を開いたことは知っていても、明治の時代に、目の前亡くなった人が、盲学校を建て、盲児を集めて指導し、点字新聞を発行することがどんな意味を持っているのかを、僕は理解できていなかった。
当たり前だ。僕は高校時代の受験のときに日本史を学んでいたように、ただ表面的な文字をなぞり覚えていただけだった。
この本は小説である。
彼に関する資料の多くは残ってはいない。
それでも彼の悩みや苦難が、想いが肌で感じられる。
表紙の画像は小さ子社ホームページより引用しました。