体験記事「触察のススメ 目を瞑って触るから気づくことがある」
先日娘と訪れた「木彫りどうぶつ大集合!はしもとみおの世界展」の感想とそこで考えたことを紹介します。
(画像は東大阪市民美術センターより)
場所は東大阪市民美術センターです。木彫りのどうぶつが多数展示されていて、いくつかの展示は手で触れました。
僕は盲学校で働いている関係で、触って情報を得る触察を子どもに教える機会があります。
最近は美術館や博物館でも触って鑑賞できるハンズオンが広がっています。
今回も大きな熊や亀、犬など触れる木彫りのどうぶつたちがたくさんいました。
その中でもじっくり目をつむって触ったのが犬のリンゴ。黒いラブラドールレトリーバーの像です。
しゃがんで、目をつむり、頭から両手を使ってくまなく触ります。
しゃがんだ自分の肩の位置に頭がありました。
耳は結構ザラザラ。というか木の角が目立っていてちょっと痛い。見た感じはまるで剥製のようで、柔らかい毛並みを想像してしまったけど、触るとやっぱり硬くて、イメージの触感との違いがよくわかります。
目は他の部分と違ってツルツルでした。ガラス玉みたいな感じ。木だとは思えないくらいツルツルです。鼻も目ほどじゃないけどツルツル。やっぱり目は気合を入れて磨かれたんでしょうか。
両手を動かし、何度も触ることで、耳と目と鼻とおでことの位置関係がわかり、リンゴの頭の感じがイメージできてきます。この間も目はつむったままです。連れてきた娘が背中を叩いて「パパなにしてるのー??」と聞いてきますが、「鑑賞中!」とつれない態度です。
ちなみに口は開いていなかったので触れませんでした。舌や歯も触ってみたかったなぁ。残念。
続いて全身へ。背中から各足へのラインは比較的目が細かく、スムーズに触れます。前足は真っ直ぐに伸びていて、背中も縦方向に伸びているのがイメージできます。まぁじっくりと触る前に見えてしまうので、頭の中にイメージはあったのですが…。じっくり触って確認しました。
後ろ足は膝が曲がっていたので、リンゴが座っている状態なのがわかります。
尻尾は結構ザラザラだった気がしますが、ここはちょっと記憶があやふやです。
足の先を触ると4本の指がしっかり作り込まれていて、指と爪が触って識別できました。
そして、多分誰も触らないであろうお腹へ。お腹は耳と同じくらいザラザラ、というか削りが粗くて尖っている。彫りにくいのだろうか?もしくは彫っても誰も触らないと思ったのだろうか??そんなことを考えてしまいます。
以上が目をつむって3分ほど触った感想です。やっぱり目をつむって、手で見るとわかることが色々とあります。
視覚というのは人間が取り入れる情報の大半を占めています。もちろんそれだけ便利なんですが、不便な面もあります。
見えていると見だだけで全部わかった気になってしまいます。
質感は触ってみないとわからないはずなのに、見た目のイメージから勝手に想像してわかった気になってしまいます。
また視覚は平面なので、裏側がどうなっているかは、裏側に回ってみるまでわかりません。でもそんなこと想像もせず、わかった気になっているのです。これは月の模型を触る話で聞いたことがあります。
広瀬浩二郎さんの「触常者宣言」ではありませんが、じっくり時間をかけて、何度も、くまなく、全身で触ることで、感じられる、わかる楽しみを伝えたくなりました。
目を閉じて触るからこそ、わかるものがあります。
あと周りのお客さんを見ていて思ったのは、せっかくの触れる展示なのに、みんな指でつついたり、リンゴの頭をサラッとなでて終わりの人が多かったということ。
やはり目から情報を得ている健常者ならぬ見常者は、見ただけでわかった気になってしまうようです。
「せっかくの触れる展示なのに、もったいないですよー!!!」
やっぱり触るなら、遠慮せず、全身を使ってくまなく触らないと。
ちなみに2歳半になるうちの子は、娘を放置して目をつむって犬の像を撫で回している父親を見ていたからか、だんだん自分から触るようになりました。最初はツンツンだったけど、だんだん大胆になり、甲羅がリアルな亀の像を持ち上げて注意されていましたけど笑。
触っていけないものはもちろんダメですけど、せっかくのハンズオンなので、できれば目をつむってじっくりくまなく触って鑑賞するがオススメですよ。
触れる美術館・博物館をまとめた別の記事もありますので、触って監視する際の参考にしてください。
ではまた。