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書籍紹介『盲学校でマジックショーを!』

『盲学校でマジックショーを!(万博)』という本の紹介です。

Xで相互にフォローさせていただいている万博@盲学校マジックさんの本です。いつもありがとうございます。

盲学校マジック?
なにそれ?
見えない人でもマジックがわかるの?

タイトルを見て、そう思われる方もいらっしゃるかと思います。

著者の万博さんは聴覚障がいの方のマジックを見て、見えない人へのマジックに興味を持ち、縁があって盲学校で働くことになった方です。

僕は直接の面識はないのですが、盲学校は狭い世界なのでどこかですれ違って、あるいは表の盲学校教員の名前で出会っているかもしれません笑。

盲学校マジックとは、目の見えないお客さんに演じる手品のことです。この本では、著者の万博さんが、盲学校マジックを演じる中で歩んできた道のりを描いたエッセイ集です。

見えない方へのマジック。でも本の中で語られるのは成功体験ばかりではありません。

初めて盲学校マジックの実演をされた寄宿舎のお祭りでの話です。白杖を持つ方が近くまで来ます。でもヘルパーさんからマジックショーをしていると聞き「手品ですか。じゃあ、違うな」という言葉とともに立ち去っていく。

 何が「違う」のかを考えて、マジックショーというものを視覚障がいのあるお客さんにとって「違わない」場所にしていかないと、マジックショーには足を運んですらもらえないということに気付きました。

第一章 最初の道のり より

それが万博さんの盲学校マジックパフォーマーとしてのスタートでした。

本の中では万博さんが視覚障がいと手品の間にある距離感やバリアのようなものを壊していく道のりが描かれます。

スムーズに参考するための説明の仕方、BGMの音量、全ての人が点字をスラスラ読める訳ではないこと、鋭い触覚で手品のタネが読み取られたこと、拡大図書や点字トランプの表記が思っていたものと違ったこと、触ってわかりやすい模型…

本の中では万博さんが失敗談が続きます。

 私がまったく予想していなかったこの出来事は、普段当たり前だと思っている物事の認識が、見え方や経験の違いによって異なっているかも知れないということを知るきっかけになりました。

第三章 失敗談 より

それを読んでいて、盲学校に赴任し、右も左も分からない状態で手探りで授業を進めた過去の若かりし頃の自分のことが浮かんできます。

今では自分の中では当たり前になっている「見えない・見えにくい」世界。もちろん全てを理解したり、体感したりはできないのですが。

マジックと言うと視覚的なパフォーマンスという印象がありますが、万博さんはそれらを「見えない人」がわかるよう、聞くことや触ることに変えていきます。

それは盲学校での日々の取り組みと同じです。僕がnote記事で発信している内容と重なるものがあるなぁと勝手な共感を抱いています笑。

もちろん成功談もたくさんあります。

チャイナリングのマジックで、全盲の少年と繋がった感覚を味わったこと。盲学校でのエピソードは個人的に懐かしさを誘われました。

万博さんの語る歩んできた道のりは、そんな「見えない・見えにくい」世界のことを知っていくきっかけになるはずです。

 青眼者の私が、見えない世界を本当の意味で理解することは難しいです。
 しかし、目を閉じて耳を澄まし、大きく息を吸って、そして万物に指先で触れることで、見えない世界を少しだけ想像することはできます。
……
 ……まずは、素朴に目の見えないお客さんがどのように世界を捉えているのかを、自分の感覚を使って想像してみることが、盲学校マジックについて考える最初の入り口になるのだと思っています。

あとがき より

読んで声で楽しめるマジックも掲載されています。ネタバレになるので内容は言えませんが…うちの子たちは「えー?!なんで?なんで?」と大喜びで、早速ばぁばにも紹介していました笑。

というわけで、盲学校マジックを通して「見えない・見えにくい」世界を知ることができるおすすめの本です。

気になった方はぜひ手に取ってみてください。

京都新聞や毎日新聞、KBS京都などでも万博さんの取り組みが紹介されていました。

XやInstagramでも情報発信されているので、そちらも是非覗いてみてください。



表紙の画像はAmazon.co.jpより引用した本の表紙です。