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体験記事「盲学校フロアバレーボール練習試合でのアドバイス その2」

ちょうど1年ほど前にも、盲学校のフロアバレーボール練習試合に参加させていただく機会がありました。

今年も練習試合にお邪魔し、盲学校を離れた責任のない立場から勝手気ままに思いついたことをお話しさせていただきました笑。

全国盲学校のフロアバレーがより盛んになるよう…そんなのは大きすぎる夢見事かもしれませんが…。

もちろん試合に臨む前にルールを把握しておくことが前提になります。去年よりもルール理解が定着していたように感じました。

また前衛はコートの感覚を掴み、オープン、ブロックのスピードや、ブロックの連携、アタックのコース、サイドに弾いたボールをおって確保する技術などを練習しておく必要があります。後衛は前角を押さえた守備位置を取れること必要です。

数はそこまで多くはないですが、YouTubeにもフロアバレーボール社会人の動画がアップされています。そちらも参考になるかもしれません。

では、アドバイスした内容をぼちぼち紹介していきたいと思います。


前衛のアタックについて

前衛アタックの様子

(画像は毎日新聞西部社会事業団より)

1.攻撃の緩急

前衛で体重の乗ったすごくいいアタックを打つのに、同じコースに同じ強さの全力アタックばかりでなかなかブロックアウトを取れない子たちがいました。

僕自身はそんなにアタックが強い方ではないので、相手前衛に当ててブロックアウトを取るためにいろいろと工夫してプレイしてきました。

攻撃の緩急もその一つです。どんなに強いアタックでも、前衛ががっつり前につかれ、強さやコースに慣れられてしまえば、そうそうブロックアウトは取れなくなります。強いアタックはブロックに跳ね返ってネットにかかり、相手に補球されることも少なくありません。

そこで強いアタックの間に、緩〜いアタックを相手ブロックの指先に当てる。すると「強いアタックが来るぞ、来るぞ」と身構えている相手があっさりとボールを弾いてしまい、ブロックアウトしてくれます。

あとボールを擦るように打って回転をかけ、相手のブロックから外側にボール弾いてブロックアウトにするなんてことも練習しました。

もちろんアウトコースのブラックアウト狙いは、アタックミスのリスクがあります。見えていない前衛ならなおさらです。

なのでもちろん練習は必要ですが、そのリスクと天秤にかけて、選択しましょう。


ここからは僕の性格の悪さが出るのであまり紹介したくないのですが、音や声のフェイントも使います。

「オープン」と声を出して、相手に後衛にトスかなと思わせて気を抜かせておいてからのアタックや、打つ前にドン!と足を踏んでからタイミングをずらしてのアタック、味方前衛が補球して打つ前に開いて前衛パスを要求して相手前衛にどちらからの攻撃かを迷わせる…などなど

ジャンケンでもそうですが、相手が3回グー出してきたら、「次もグーかも」と考えて対策を考えますよね。それをフェイントに使って相手の裏をかければ…なんていろいろと考えてみるのもいいかもしれません。

2.どこを狙って打つのか

前衛アタックでどこを狙うのかも大事なポイントです。相手のブロックが離れていてフリーで打てる場面なのに、がっつり力を溜めて強いアタックを打とうとしている間に相手ブロックがやってきてブロックされる…なんて場面を練習試合で何度も目にしました。もったいない。

僕がその場面で打つなら…あまり時間をかけずに速攻で、こちらに向かっている前衛の足音が聞こえるなら前衛に当てて、外に弾いてブロックアウトを狙います。その方が得点できる確率が高いからです。

相手前衛のサーブがスパッと入ったときにも、よく前こちらに走ってきている前衛を狙います。立っている時の前衛はほとんどなにもできませんから。

また相手の前衛がついていなかったり、相手前衛同士の隙間が空いているなど、空いているコースがあるときにはもちろんそこを狙います。

また僕自身はブロックアウトのリスクを下げるために、基本的には相手チームバックゾーン(後衛ゾーン)の対角コースで奥角から前角の間のゾーンを狙います。この角度なら、相手前衛ブロックの弾いたボールがこちらに返ってきたのを避け、ブロックアウトが取れる可能性も高まります。

同じように相手前衛の裏を抜く角度のあるコースは相手後衛も取りにくいので、フリーのときにはよく狙います。

もちろん同じコースばかりだと、相手も慣れてしまいますし、リスクを承知の上でアウトコースを狙ったり、わざと浮かせたアタックを打つこともあります。

前衛同士のパスで角度をズラして打つのもそうです。

それぞれのチームの戦略もあるかと思いますが、いろいろ試行錯誤してみてください。

3.戦術の幅を広げる

補球したボールをすぐにアタックするだけが攻撃ではありません。後衛へのトスや前衛同士のパス、はたまた後衛にトスしてからオープンし、パスをもらって端から角度をつけたアタックをするなんて選択肢もあります。

相手に選択肢がたくさんあると、正直嫌です笑。

それにできることが増えると楽しいですし。チームの状況にもよりますが、いろいろと試行錯誤してみてください。

前衛のブロックについて

前衛ブロックの様子

(画像は全国盲学校フロアバレーボール大会より)

1.自分のブロック

ブロックの形もいろいろあるかと思います。僕は膝を前に出してかかとを浮かし、前傾姿勢でブロックします。こうすることでひざで相手のアタックをキュッと挟み、速攻に繋がることができます。

あと足と腕の隙間を抜けてしまうのを防ぐために、ひじをすこし曲げています。

ブロック位置は、両手を伸ばしてネットに届くくらいの距離です。ネットから離れすぎるとブロックアウトの危険性が高まってしまいます。

基本は正面を向いていますが、相手が打ってくるコースに合わせて、ブロックアウトしないよう向きを変えます。

もちろん社会人前衛プレイヤーの全員がこの姿勢ではありません。両脚を開いたブロックや、深い屈伸のようにひざを伸ばしたブロックをされている方もいます。

(画像はJFVA日本フロアバレーボール連盟より)

(画像は松本盲学校より)

(画像は中日新聞より)

(画像は朝日新聞より)

(画像はPR TIMESより)

ブロックアウトをしないこと、補球率を上げることを意識しながら、自分の身体とも相談しながらよりよいブロックの姿勢を模索してみてください。

2.ブロックの間を詰めるのか、ブロック移動を優先するのか

相手からアタックがくるとき、相手が前衛にパスしたときなど、こちらの前衛を動かします。こちらの前衛でブロックしたり、相手の打ってくるコースを狭めたり、相手にプレッシャーをかけるためです。

「右1(右側に1歩分うごくこと)」「左2」「右いっぱい(右側のマーカーまで一気に動いてブロックすること)」など後衛の指示で前衛ブロックは動きます。が、相手のパスなどで特に急な移動をするときにはバタつきます。

前衛全員がまとまって素早く移動でき、ブロックに間に合えばいいのですが…チームによってはそれが難しいときもあるでしょう。また移動中の前衛はかなり無防備です。

なので、動ける前衛だけが素早く移動し、ブロックの間を開ける形をとるのか、3人全員でまとまって寄れるところまで寄るのか…どちらにもメリットデメリットがあります。

後衛との連携もあると思いますが、どんな形のブロックにするのかは、チームで共有しておいた方がいいでしょう。

3.レシーブミスやブロックアウトをカバーするために

相手チームから強いアタックがきたとき、後衛のレシーブが乱れてしまうことがあります。そんなときに、前衛が後ろを向いて少し広がっておくとカバーできる可能性が高まります。

なので、相手チームに強いアタックを打たれたときは後ろを向いて後衛のレシーブをサポートします。もちろん、間違って前衛に打たれたときに後ろを向いてしまってはダメですが笑。

同様にブロックしているときには、自分のブロックだけでなく、自分以外の前衛がブロックしたボールが外に弾かれてブロックアウトになってしまうことがあります。難しいですし、ネットを越えてのオーバーゾーンには気をつけないといけませんが、そちらもカバーする意識をしているかどうかで一瞬の動き出しが変わってきますよ。

4.タッチネットに気をつける

ブロックがネットから離れすぎるとブロックアウトしやすくなります。またネットに対して身体の向きが斜めになっていても外側に弾いてブロックアウトしやすくなります。

これらを防ぐために、慣れるまではブロックの際にネットを両手で触って確認しましょう。両手でネットを確認することで、離れすぎず、またネットに対して平行な位置でブロックできます。

ただ何度もネットを触っていると、ネットに触れているときにボールが接触する反則、タッチネットのリスクが上がります。

なのでネットの確認は素早く終えましょう。

また自チームの後衛がアタックを打つために、前衛がオープンする際には、アタックのコースを広げるためにも、タッチネットを防ぐためにも、マーカーの外まで開くのがおすすめです。

前衛と後衛の連携について

1.声を出して情報共有

以前の記事でも書きましたが、フロアバレーボールでは前衛と後衛のコミュニケーションが欠かせません。また声量も大きく、みんなで復唱して確認するのがおすすめです。

2.トスの位置を共有し左右に振り分ける

前衛がキャッチしたボールを、後衛アタッカーへ繋げるのがトスです。

練習試合では、ブロックしたボールを補給し、後衛へトスしている場面がたくさんありました…が、トスが真後ろばかりだったのが少しもったいないと感じました。

相手前衛からのアタックをキャッチしてトスする場合、後ろへのトスだと正面のコースにすでに前衛がいる状態でのアタックになります。そこで、左右にトスを振れるようになると、後衛の打つコースも広がり、角度のあるアタックを打てるようになります。これは後衛のトスも同じです。

トスのコースや速さなどは後衛と相談して試行錯誤してください。ただ、慣れるまではトスが自分の身体に触れないように気をつけましょう。

3.空いているコースを伝える

前衛がフリーでアタックできる、もしくは相手のブロック位置がずれていて空いているコースがある、そんな場面なのにじっくり時間をかけてアタックし、その間に相手の前衛ブロックが間に合ったり、位置を修正したりして結局ブロックされてしまう…そんな場面がありました。

後衛から「フリー!」「速攻!」「左空いてる!」などの声があれば、アタックが決まったのに…と思います。狙うべきコースなども声を出して共有することをお勧めします。

4.打ってくるコースを伝える

相手後衛からのアタック位置を、前衛ブロックがわかっていなくてブロックアウトになってしまう場面もたくさんありました。

こちらも相手が打ってくる位置や、打つタイミングを後衛から前衛に伝えることで、ブロックの向きなどを修正してブロックアウトを防げることがあります。

繰り返しになりますが、フロアバレーボールでは前衛と後衛のコミュニケーションが欠かせません。

細かな情報をどこまで共有するか(あるいは共有しすぎないか…声が大きすぎるとボールの転がる音などはもちろん聞こえにくくなります)はそれぞれのチームによると思いますが、まずは練習中も試合中もミーティング中もコミュニケーションを大事にしてください。

5.サーブの狙いを共有する

サーブを打つ際、後衛のアタッカーを狙って2打目のアタックを封じたり、前衛ブロックに当ててのブロックアウトを狙ったり、サービスエース狙いでストレートギリギリのコースを狙ったり、とりあえずサーバミスしないようにセンター付近に緩いサーブを打ったりと、意図をもって打つかと思います。

その意図がチーム内で共有できていないと、例えば前衛ブロックアウト狙いなのに、味方前衛が急いでブロックしに行って帰ってきたボールに触ってタッチネットになってしまったり、味方前衛にサーブが当たってサーブミスになってしまったりしてしまうかもしれません。

狙いを共有しておけば、ブロックアウトのボールを意識しながら余裕を持ってブロックに入れます。

サーブだけでなく、普段のアタックもそうですが、どんな狙いでどのコースに打つのか、そのためにどう動いてほしいのかをチームで共有しておくといいでしょう。

後衛について

僕は基本前衛プレイヤーで後衛になることはあんまりないのですが…わかる範囲でアドバイスさせていただきました。

後衛レシーブの様子

(画像はJFVA日本フロアバレーボール連盟より)

1.前衛ブロックを相手アタッカー位置に合わせて寄せる、プレッシャーをかける

チームの方針によるかとは思いますが、相手チームのアタッカー位置に合わせて前衛ブロックをかぶせていくことが多いと思います。

アタッカーによっては移動してくる前衛を狙ってくることもあるので注意が必要ですが…

全くブロックを動かさないよりは、じわじわブロックを移動させることで相手のコースを削ることができます。なにより相手のブロックが迫ってくるのはかなりのプレッシャーになります。

チームの戦略次第ですが、完全に正面につけるのか、ある程度寄せるところで置いておくのかなど、ブロック位置についても考えてみてはどうでしょうか。

2.守備位置①前衛の隙間を後ろでカバー

前衛ブロックの移動が間に合わず、隙間が空いている場面では、後衛でその隙間のカバーが必要になります。

反対に前衛の隙間が空いていない場面では、前衛ブロックの後ろにいる意味は、前衛のカバーくらいしかありません。相手の狙えるコースにもよりますが、ブロックを被せている以外のコースを守る方がいいかと思います。

3.守備位置②どこかの時点で判断

守備の基本は左右の前角に2人、センターが奥の逆三角形になるかと思います。前衛ブロックが真ん中にいる状態だと、相手チームのボール位置によって2人と1人に分かれますよね。

ただこの位置をずっとキープしていては、相手の強烈なアタックに対応できない場面がどうしてもでてきます。どちらかの前角を捨てて、後衛3人で守るべきか…それとも前角の守備位置をキープするべきか…どこかの時点で選択肢を比べ、リスクを取って判断が必要になります。

(画像はJFVA日本フロアバレーボール連盟より)

練習中から、その場面場面で、前衛ブロックの位置をどこにするべきか、後衛レシーブ位置をどうするのか確認していきましょう。

チームによってはアタッカーが2打目、3打目を打てるよう、それ以外の後衛がファーストレシーブを取った方がいいこともあるでしょう。

最適解はチームによって異なるはずです。いろいろ試行錯誤しながら、チームで話し合ってみてください。

4.最後まで諦めずにプレイを

試合では審判の笛が鳴るまではプレイは続いています。相手のアタックミス、こちらのリターンミスや3打目?で返球できなかったオーバータイムズなど早々に見切りをつけるのではなく、何があるかわからないので笛が鳴るまではプレイを続けるというのも選択肢の1つではないでしょうか。

意図を持ったプレイを

いろいろと思うがままに書いてきましたが、どの内容にも共通するのはうちの監督が言う「意図をもったプレイをしよう」ということです。

スポーツなので定石のようなものはありますが、それが最適解、正解とは限りません。うちのチームも練習中にいろいろと試行錯誤しながら、チームでどうすべきかを確認しています。

今までなんとなく打っていたアタックやサーブのコース、ブロックやレシーブの位置、アタックの打ち方、ブロックの体制などなど、普段特に考えずプレイしている内容は当たり前のものではありません。

戦術の最適解はチームによっても、試合に出ているメンバーによっても変わると思います。

なんのために、どうプレイするのか、その意図を考えながらチーム全員で試行錯誤してみてください。

まとめ

いやーなんとなくアドバイスしたことをまとめていたらすごい分量になってしまいました…まぁフロアバレーボールは奥が深いので、まだまだ語り足りないのですが笑。

この記事で紹介した内容が、すべてのチームに合うわけではありません。それぞれのチームには、それぞれのメンバーがいて、それぞれの役割があるからチームの色が出てきます。

強いアタッカーばかりのチームが強いわけではありません。チーム内の役割分担や個人のスキル差もありますし、チームの戦略もあるでしょう。

ただ前衛プレイヤーの身としては、もっと前衛を活用するチームが増えてほしいなとは思います。

いろいろ書きましたが…この内容が、それぞれのチームでの試行錯誤に役立てていただければ嬉しいなと思います。

今年の全校盲学校フロアバレーボール大会は東京開催。夏の全国大会に向けた各地区の予選大会が始まります。

生徒数減に苦しむ盲学校ですが、全国盲学校フロアバレーボール大会が盛り上がり、フロアバレーボール業界全体がもっと盛り上がれば嬉しいです。



表紙の画像は全国盲学校フロアバレーボール大会より引用しました。