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教材紹介【社会】『みんなの地図帳〜見やすい・使いやすい〜』
『みんなの地図帳〜見やすい・使いやすい〜(日本視覚障害社会科教育研究会)』という本、というか地図帳の紹介です。
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(画像は帝国書院より)
突然ですが皆さんは地図帳って好きでしたか?社会科教員の僕は、小学生の頃、地図帳をみて、そこに載っているいろんな情報、地名や自然や特産品や歴史なんかを眺めるのが好きな子どもでした。今でも地図帳を見るとわくわくします。
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(画像は帝国書院より)
ただ、この一般的に販売されている地図帳は、いろんな情報が所狭しと掲載されていて、それが魅力にもなっているのですが、弱視の子たちにとっては使いにくくもあります。
弱視児にとって見にくいもののひとつに、一つの画面にたくさんの情報が入り乱れて書き込まれているようなものがあります。その代表的なものが地図です。地図は、地形や鉄道、道路、市街地、史跡等非常に多くの情報が一つの紙面に煩雑に書き込まれています。地図に書き込まれている文字や絵柄が小さいというだけでなく、煩雑に書き込まれているたくさんの情報から、必要な情報を選択して見るのは、弱視児にとって苦手なもののひとつです。それは、たくさんの煩雑な情報がお互いにノイズとなって、必要な情報を取り出すのを妨げるからです。こうした複雑でしかも煩雑なものを弱視児に見やすい情報として提供はためには、海岸線や等高線等複雑に入り乱れているものを単純に書きあらためたり、地図に書き込む情報を必要最小限に限定したりする必要があります。また、特に注意してほしい情報を強調して色分けしたり、太い線を用いて表したりすることも大切です。
(『視覚障害教育に携わる方のために 五訂版』より)
この本を一言で言うなら、「必要な情報を厳選してシンプルに、そしてわかりやすく」です。タイトルの通り、「見やすくて、使いやすい地図帳」になっています。
それはノイズとなる情報を除いて、必要な情報だけを提示していることにあります。日本地図は各地方ごとに3枚の地図に分かれます。1枚目は、都道府県と県庁所在地など主な都市(基本的に人口の多い順に3つ)が、2枚目には基本的な自然についてが、3枚目は1枚目と2枚目を合わせたものがそれぞれ掲載されます。色使いや文字のサイズ・フォントも見やすいよう配慮されていますし、その地方をじっくり見れるよう、他の地方はあえて掲載されていません。
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(画像はLITALICO発達ナビより)
また全地方で同じレイアウト、左上にタイトル、左側に緯度、下側に経度となっています。また同じ地方の地図は、同じ縮尺の地図が3枚重なるので位置上の重なりもイメージしやすくなっています。また書き込みもしやすい素材に印刷され、片面印刷になっています。ちなみにサイズは少し大きめのB4サイズになっています。
この地図帳は、点字仕様の子に向けて作られたわかりやすい地図帳、『基本地図帳 世界と日本の今を知る』をもとに作られました。
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(画像は視覚障害者支援総合センターより)
この『基本地図帳』も、緯度と経度によって地図が区切られ、また地域ごとに同じレイアウトが使用されているためとても使いやすいものです。
この地図帳以前の点字地図帳はわかりにくく、自作の立体コピー(カプセルペーパー)の地図を作成していたのを思い出します。
そして、この『みんなの地図帳』は、できた当初から盲学校の社会科の教員間で「このシンプルな地図帳は、載っているいろんな情報が気になってしまう自閉スペクトラム(ASD)やADHD、学習障がい(LD)といった発達障がいの子たちへのニーズもあるんじゃないか」と話していたのですが、なんとLITALICO発達ナビにも取り上げられていました。こちらの記事には編集メンバーの一人である、筑波大学付属視覚特別支援学校の丹治達義先生へのアナウンスや、実際に読み書きの苦手な子が『みんなの地図帳』を使った感想なども掲載されています。僕の記事よりもわかりやすいです笑。
日本視覚障害社会科教育研究会に所属する全校の盲学校の先生方の力で完成したこの地図帳ですが、帝国書院さんが発行ということで、掲載都市(都道府県だと人口の多い3都市)などのデータが今後、更新されていくそうです。
シンプルでわかりやすい、見やすい、使いやすい地図帳の紹介どうだったでしょうか。視覚障がい関係だけでなく、発達障がい関係の方にもぜひ手に取って眺めてほしい地図帳です。この記事の画像では伝えきれませんが、本当にとっても見やすい地図帳です。
表紙の画像はオムニ7より引用しました。なぜかAmazonの画像は折り目が付いているんですよねー。