障がい者手帳があれば利用できるサービス その7 医療費・保険編
身体障がい者手帳や療育手帳(東京都の愛の手帳)、精神障がい者保険福祉手帳の障がい者手帳を持っていると、いろいろな福祉制度を利用できることは知っていますか。
自治体によって利用できる福祉制度やその対象は異なる場合もありますが、障害者手帳があれば税の減免や、交通、施設などの割引や免除受けることができます。
今回は各種料金の減免などをまとめて紹介していきます(最後に他の福祉制度について紹介した記事を掲載しています)。
医療費関係
1 障がい者医療費助成制度
心身に障がいのある人の医療費を助成する制度です。都道府県や市区町村などお住まいの自治体によって、対象となる障がいの程度や助成の内容(負担額など)、所得制限の有無などが異なります。対象の方には受給者証(東京都はマル障と呼ばれる)・障がい者医療証が発効され、病院窓口で保険証と共に提示することで、医療費の助成を受けることができます。
(画像は大阪市より)
(画像は町田市より)
(画像はTwitter@tocho_fukuhoより)
(画像は広川町より)
自治体によっては、受給者証や障がい者医療証を紛失した際に翌年まで再発行されないところもあるそうです。大切に保管してください。
2 自立支援医療
障がいを治療する目的の医療費が、原則1割負担(所得制限あり)となる制度です。
(画像は大阪市より)
統合失調症などの精神疾患を理由に通院し、継続的に治療が必要な方が対象の精神通院医療、身体障がい者手帳の交付を受け、手術などの治療により確実に効果が期待できる18歳以上の方が対象の更生医療、18歳未満で特定の障がいがあり、手術などの治療により確実に効果が期待できる、または障がいに関わる医療を行わないと、将来障がいを残すと認められる方が対象の育成医療の3つがあります。
こちらもお住まいの市区町村に申請し、認定されれば自立支援医療受給者証が発行されますので、それを指定医療機関の窓口で提示してください。
(画像は東京都保険福祉局より)
(画像は山口県より)
3 その他活用できる医療費制度
1.高額療養費(限度額認定証)
医療機関等の窓口での支払いが高額な負担となった場合は、後から申請することにより自己負担限度額を超えた額が払い戻される「高額療養費制度」があります。
しかし、後から払い戻されるとはいえ、一時的な支払いは大きな負担になります。
そこで、「限度額適用認定証」を保険証と併せて医療機関等の窓口に提示すると、1ヵ月 (1日から月末まで)の窓口でのお支払いが自己負担限度額まになるという制度です。自己負担額は所得区分によって異なります。
(画像は全国健康保険協会より)
2.指定難病への医療費助成
疾患によっては、指定難病への医療費助成を受けることが可能になります。
(画像は難病情報センターより)
3.医療費控除
個人と、生計を一にする配偶者やその他の親族を合わせて、基本的に年10万円以上(収入によって10万円以下で該当)の医療費負担があった場合、医療費に合わせた所得控除を確定申告の際に申請することができます(最高で200万円まで)。なので、病院などの領収書は忘れずに保管しておきましょう。
(画像はダイヤモンド・オンラインより)
4.子ども医療費助成
自治体により対象年齢(小学校就学前、小学校卒業、中学校卒業、満18歳など)や自己負担額は異なりますが、対象の子どもには子ども医療証が発効され、病院窓口で保険証と共に提示することで、医療費の助成を受けることができます。
(画像は池田市より)
保険関係
1 本人の病気やケガ、事故やトラブルを補償する保険
1.生活サポート総合補償制度(全国知的障害児者生活サポート協会)
生活サポート総合保障制度は、知的障害児者・自閉症児者を対象とした専用保険です。
加入に際し医師の診察は必要なく、0歳から加入できます。つまり、持病があっても入ることができ、その持病についても保障されるということです。
入院給付金、ケガの補償、個人賠償責任補償、弁護士費用等補償、職業従事中事故対応費用補償、病気で死亡したときの補償が含まれます。
(画像は全国知的障害児者生活サポート協会より)
2.ぜんちのあんしん保険・ぜんちのこども傷害保険(ぜんち共済株式会社)
知的障がい、発達障がい(自閉症、アスペルガー症候群、ADHDなど)、ダウン症、てんかんの方とそのご家族、ご親族を対象とした総合保険です。
病気・ケガのときや、トラブルのときの弁護士費用、個人賠償責任保険が含まれます。
(画像はぜんち共済より)
3.ASJ総合補償(日本自閉症協会)
自閉症スペクトラムの方を対象とした総合保険です。
入院補償金、死亡弔慰金、弁護士等を利用した際の費用補償、傷害保険、他人への損害賠償金補償が含まれます。
(画像は日本自閉症協会より)
4.心身障がい児・者のための総合補償制度(株式会社ジェイアイシー)
心身障がい児・者を対象とした総合保険です。
他者への損害賠償補償と本人(被保険者)が怪我をしたときの補償が含まれます。
(画像は株式会社ジェイアイシーより)
5.知的障害教育校総合補償制度(株式会社ジェイアイシー)
全国特別支援学校知的障害教育校PTA連合会が取りまとめている、知的障がい特別支援学校に通う子どもを対象とした総合補償保険です。
個人賠償責任補償、傷害(ケガ)補償、育英費用補償が基本補償として含まれます。
(画像は株式会社ジェイアイシーより)
6.わたしのお守り総合補償制度(損害保険ジャパン株式会社)
精神・身体・知的障害者、認知症の方、高齢者とそのご家族、支援者のための保険です。
個人賠償責任補償、弁護士費用補償、ケガの補償、電話相談サービスが含まれます。
(画像は全国地域生活支援機構より)
2 障がい者扶養共済
別の記事「障がい者手帳があれば利用できるサービス その4 年金・税金編」でも紹介しました。
障がい者・児を扶養している方が加入者となり、加入者が死亡または重度の障がいを有す る状態になったとき、障がい者・児本人に終身年金(1口あたり月額20,000円支給)が支給されます(2口まで加入可能)。
(画像は厚生労働省より)
3 生命保険信託
生命保険信託は、保険としては通常の生命保険と同じですが、その死亡保険の受け取り方(毎月いくらずつ子どもに給付するのか、もし受取人である子どもが亡くなったときに保険金が残っていたら、誰もしくはどの団体に給付するかなど)を、信託財産として設定します。
(画像はプルデンシャル信託より)
(画像はジブラルタ生命より)
1.未来あんしんサポート(株式会社ジェイアイシー)
「知的障がい」や「自閉症」があるお子さまの"親なきあと"の財産管理をサポートするための保険です。
『生命保険信託』の仕組みによって、保護者が亡くなられた場合に生命保険会社がお支払いする保険金を、みずほ信託銀行が子どものための財産として安全に管理しながら、年金のように分割して届けるという仕組みです。
(画像は株式会社ジェイアイシーより)
2.想いの定期便(第一生命・みずほ信託銀行)
(画像は第一生命より)
3.おひとりさま信託(三井住友信託銀行)
未来の縁-ingノート(万が一の時の身の回りのこと(死後事務)に関する希望を記録しておけるエンディングノート)やかんたんSMS安否確認などが特徴です。
(画像は三井住友信託銀行より)
4.生命保険信託(ジブラルタ生命・プルデンシャル信託)
(画像はプルデンシャル信託より)
この他にも生命保険信託を活用して、生命保険を一括ではなく、月々支払うような保険があります。
4 遺言代用信託
信託銀行に預けておいた金額を、親が亡くなったなどのあらかじめ決めておいたタイミングで、、決めておいた受益者に定期的にお金を給付するという、生命保険信託と似た仕組みになっています。
(画像は三井住友信託より)
1.安心の贈りもの(みずほ信託銀行)
2.家族おもいやり信託(三井住友信託銀行)
3.ずっと安心信託(三菱UFJ信託銀行)
5 特定贈与信託
「特定贈与信託」とは、障がいを持つ方のご家族などが信託銀行等に金銭等を信託し、信託銀行等が障がいを持つ方に対して一生涯にわたり生活費や医療費などを定期的にお渡しする信託です。
別の記事「障がい者手帳があれば利用できるサービス その4 年金・税金編」でも紹介したように、障害のある方は贈与税の控除を受けられますので、この信託を利用すれば、障がいの程度に応じて3000万円または6000万円を限度に贈与税が非課税になります。
障がいのある方の状況によっては成年後見人が必要になる場合があるので注意しましょう。
(画像は信託協会より)
まとめ
最初は医療費についてがメインになる予定でしたが、調べてみたら障がいのある方を対象にした保険がたくさんあり、自分の勉強になりました。
親なき後について話をするかもしれない立場にある以上、将来のお金については知っておかないといけません。ただ以前別の記事で紹介した本にあったように、将来への不安から闇雲にお金を残すことを考えるのではなく、具体的に必要な金額をシミュレーションすることと、本人がお金を使い、管理できる(あるいはそれをサポートする体制がある)ことの方が安心に繋がるのかなと思います。
このシリーズも長くなってきました笑。成年後見等制度や就労関係、他にもさまざまな制度があります。福祉制度って本当に幅広いですよね。
またぼちぼち紹介していきます。
参考にしたサイト
3.ファイナンシャルフィールド「障がいのある子が加入できる民間医療保険はあるの?」
5.ウーマンエキサイト「知的障害だと保険に入れない?知的障害でも入れる医療・生命保険を紹介!」
6.ぜんち共済株式会社「障害者にとっての生命保険信託と遺言代用信託」
表紙の画像は一般財団法人メルディアより引用しました。