盲学校からの発信「子どもたちの世界を広げる、科学へジャンプ」
科学へジャンプって聞いたことありますか?
視覚に障がいのある子たちがさまざまな体験するイベントなんです。3泊4日のサマーキャンプと地域版、そしてITワークショップの3つがあります。
僕も盲学校時代に地域版に携わらせていただいたことがある、思い入れのあるイベントです。
今回はそんな科学へジャンプについて紹介します。
科学へジャンプ・サマーキャンプ
サマーキャンプは、全国の視覚障害がある中学生・高校生に参加を呼びかけて、隔年で開催される3泊4日の合宿型のイベントです。
「目が見えなくても、あきらめることなく科学への夢をはぐくんで果敢に挑戦して頂きたい。」 科学という世界へ飛び込み、その楽しさを体験してもらいたい、そんな想いからスタートしたイベントです。
科学というタイトルですが、ワークショップの内容は理科や実験から社会まで、多岐にわたります。ホームページから最近の内容を引用します。
視覚障がいの子たちが実験?IT?と疑問に思われた方もいるかもしれませんが、盲学校でも視覚情報を聴覚や触覚に変えた実験はたくさん行われています。画面拡大や画面読み上げ機能を活用したパソコンやスマホについても同様です。
地域の中学校・高校に通う視覚障がい児たちは、なかなか実験に参加できず記録係になったり、教科書などから実験内容を確認するだけで終わってしまうことも少なくないようです。
でも、科学へジャンプなら、視覚障がい教育のノウハウを活用し、視覚障がいの子たち1人ひとりが主役となって実験などのワークショップに参加できるのです。
サマーキャンプの取り組みはこちら報告書でも詳しく解説されています。
科学へジャンプ・地域版
サマーキャンプの実施が大きな反響を呼び、科学へジャンプが全国のネットワークへ広がりました。 毎年、北海道、東北、関東、北陸、東海、関西、中四国、九州の8ブロックで視覚障がいの子どもたちが参加し、日帰りで午前・午後のワークショップに参加する地域版の催しが開催されるようになりました。これが科学へジャンプ・地域版です。
僕自身も盲学校時代にこの地域版に携わらせていただきました。ワークショップの講師もさせていただいたこともあります。
印象に残っているのは京都の街中を探索したワークショップです。
京都は歴史的な景観を守るために、建物の高さや形の規制、看板などの色が配慮があると聞いたことはありますか?
ワークショップでは、実際に会場の京都府立盲学校周辺を散策し、参加者は講師の話を聞きながら、地形や地名をもとに過去の歴史的背景を振り返ります。気分はまさにブラタモリです。
看板や自販機の色の話になると、参加者の視覚障がい児たちは各自のスマホを取り出し、写真に写った色を音声に変換してくれるアプリ(Color Say)が「茶色」と読み上げるのを聞いて、「おぉーほんまに茶色なんや!」と驚きの声をあげていました。
(画像はさくさくふくしま散策より)
(画像はぶらり@web走り書きより)
他にも筑波附属視覚特別支援学校の鳥山先生による「骨は語る」や、沖縄県の美ら海水族館によるサメなどの標本を使ったワークショップ、地域の盲学校の先生方や博物館の学芸員さんによるワークショップも開催されていました。
どのワークショップも、耳で聴く、手で触るなどの目以外の感覚を活用して視覚障がい児たちがわかる、楽しめる内容になっていました。
他の地域でも魅力いっぱいのワークショップが開催されています。
(画像は科学へジャンプ・イン東京2022より)
(画像は科学へジャンプ・イン名古屋2019より)
(画像は科学へジャンプ・イン北海道2019より)
科学へジャンプ・ITワークショップ
視覚に障害のある生徒・学生を対象に、最新支援技術を含むIT活用方法の研修やさまざまな支援機器の紹介、コンピュータの使用方法のレクチャー、機材の貸し出しによる自宅実習などを実施しているのが、学校科学へジャンプ・ITワークショップです。2018年の内容は次の通りです。
(画像は科学へジャンプより)
(画像は科学へジャンプより)
ワクワクする魅力的な内容、そして同世代の見えない・見えにくい子と一緒に過ごす時間
少し長くなりますが、『科学へジャンプ サマーキャンプ2022報告書』から参加生徒の感想を引用します。
視覚障がいは身体障がいの中では数が少なく、盲学校以外で学ぶ子どもたちの多くは、同年代の同じ視覚障がいのある友人を持つ機会がなかなか持てないという話を聞きます。クラスの中で自分だけがルーペや単眼鏡を使うのが恥ずかしくて、通級指導で練習してもいざ自分の学校では出せない…そんなケースもあります。
一方、地方の盲学校でも生徒数の減少が問題になっていて、教室に机が1つ、2つしか並んでいない光景も珍しくありません。
感想からは同年代の子たちと密度の濃い、楽しい時間を過ごせた様子が伝わってきます。みんなそれぞれ見え方の程度や境遇は異なりますが、離れた場所で頑張っている子がいるという実感を持てることは次の日からの頑張るパワーをもらえます。「サマーキャンプの直後から、子供が見違えるように意欲的に物事に取り組むようになりました」と手紙をくれた保護者の方がこれまでに何人もいらっしゃるそうです。
また中学校や高校では、視覚障がい教員の専門性や施設設備の面から十分な合理的配慮が受けられず、理科の実験や体育の授業に思うように参加できないという話も聞きます。
感想にもあるように、そして紹介してきたように視覚に障がいのある子どもたちが、自分自身でわかる、できる題材に出会い、楽しんで取り組むことができるのも科学へジャンプの魅力なのでしょう。そんな盲学校をはじめとする視覚障がい教育がもっと広がればいいですね。
参考までに過去の盲学校紹介記事をいくつか掲載しておきます。
まとめ
視覚障がい児が参加するイベント、科学へジャンプについての紹介でした。
僕自身がワークショップの講師をしたときもそうですが、子どもたちが真剣に楽しんで取り組んでくれる姿をみてとっても嬉しかったんです。機会があればまたさせていただきたいですね。
本当に同年代の子たちと関わることができる貴重な機会なのだと思います。ぜひ今後も続いていってほしいですね。
サマーキャンプは4月末頃までに申し込みのようです。次回は2025年でしょうか。地域版は各地域の盲学校の先生方を中心に活動されていて、時期は様々です。詳細が気になる方、参加して見たい方はお近くの盲学校に問い合わせてみるのもひとつです。
またホームページに募集要項が掲載されますので、そちらも覗いてみてください(コロナ禍以降、一部更新されていないものもあるようです)。
この記事から科学へジャンプに参加し、聞いて触ってわかる取り組みや同年代の子たちとの出会いへ繋がったら嬉しいな…なんて思いながら記事を書いてみました。
気になる方はまず科学へジャンプのホームページを覗いてみてくださいね。
表紙の画像は科学へジャンプホームページより引用しました。