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見えていた人が、ある日、視覚障がいになったときにどうしたらいいのか

Twitterで「親友が眼疾患で視力を失い生きることに絶望しています。何か希望を持てるような情報を出来るだけ多く提供していただけませんか」というような内容のツイートを見かけ、中途で視覚障がいになられた方にどんなことを伝えたらいいのかなと考え、今回の記事を書いてみました。

1 手帳の取得と福祉制度を知る

①まずは手帳取得、それから

日本では福祉制度のサービスの大半は障がい者手帳のある方が対象になっています。つまり障がい者手帳がないと大半のサービスは利用できません。

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(画像は一般財団法人メルディアより)

まずは病院の主治医や医療ケースワーカーさんに手帳取得について尋ねてみてください。

*申請の窓口は各自治体の福祉事務所や保健福祉センターです。
*診断に必要なものは、指定医師の診断書(所定の様式がある場合も)・写真・印鑑・マイナンバーに係る確認書類などです。
*医師の診断を受ける場合は、その当日の結果だけでなく、調子の良くないときを基準に診断してもらえるよう普段の見え方や日常生活での困り感などをできるだけ詳細に伝えるようにしましょう。

手帳取得についてはこちらの記事「障がい者手帳があると利用できるサービス その1 手帳交付編」でも解説しています。

②役所の障害福祉課で福祉の手引きを手に入れよう(ネットに掲載の場合も)

福祉制度について網羅的に説明されている「福祉の手引き」という冊子が多くの自治体で発行されています。

例えば大阪市では『福祉のあらまし』という冊子とそのデータがホームページで公開されています(知的な障がいのある方向けの『はーとふるガイド』という冊子もあります)。自治体によっては点字版や音声版もあります。

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(画像は大阪市より)

福祉サービスは各自治体によって異なるのですが、該当の都道府県や市町村以外のものでも福祉制度やサービスの概要を知ることができるのでおすすめです(現に福祉制度を活用されている方やその保護者、支援学校教員でも知らないことがあったりします)。

③いろいろなことの問い合わせ先

福祉の手引きにも掲載されていますが、視覚に障がいのある方を対象にした福祉制度とその窓口一覧を掲載します。

1 手帳の取得と更生施設
①身体障害者(児)手帳の交付→市区町村役場
②更生相談→ 身体障害者更生相談所
 
2 経済的支援①(医療関係)
①身体障害者(児)医療助成→市区町村役場
②自立支援医療(育成医療)→保健所
③自立支援医療(更生医療)→市区町村役場
④特定疾患の医療費助成→保健所
 
3 経済的支援②(所得保障関係)
①国民年金(障がい基礎年金)→市区町村役場
②厚生年金(障がい年金)→社会保険事務所
③共済年金(障がい共済年金)→各共済組合
④労働者災害補償保険→労働基準監督署
⑤児童・特別児童扶養手当→市区町村役場
 
4 経済的支援③(税の減免関係)
①所得税の控除(障害者控除、特別障害者控除、同居特別障害者控除)・住民税の非課税控除(障害者控除、特別障害者控除、同居特別障害者扶養控除)→税務署・勤務先
②相続税・贈与税など→税務署
③事業税→都道府県税事務所
④ 自動車税・自動車取得税→都道府県税事務所
   
5 経済的支援④(郵便料金など)
①視覚障がい者用郵便物の無料制度→郵便局
②放送受信料の減免→市区町村役場
③日本電信電話株式会社の番号案内料金の免除→最寄りのNTT支店
 
6 福祉用具の支給と貸与
①補装具費の給付→市区町村役場
②日常生活用具の給付・貸与→市区町村役場
③視覚障がい者用ワードプロセッサー共同利用制度→点字図書館、福祉センターなど
④視覚障がい者用具の販売→日本点字図書館日本ライトハウス 、日本盲人会連合など
 
7 生活の支援
①障がい者総合支援法による事業、居宅介護、生活サポート事業→市区町村役場
②介護保険の事業→市区町村役場
③身体障がい者の緊急一時保護→市区町村役場
④盲老人ホーム→市区町村役場
⑤盲導犬の貸与→市区町村役場
⑥地域生活支援事業→市区町村役場
⑦視覚障がい者社会参加事業→市区町村役場
⑧その他(盲婦人家庭生活訓練、盲青年社会生活教室開催、中途失明者緊急生活訓練、点字・ワープロ講習会など)→市区町村役場
 
8 施設・学校の利用
①視覚障がい児施設→子ども相談センター
②視覚障がいに配慮した教育(盲学校(視覚支援学校)、弱視特別支援学級、弱視通級指導教室、通常の学級)→教育員会
③教育相談、通級指導教室や巡回指導教室の相談、その他視覚障がいに関する相談→ 盲学校(視覚支援学校)
④視覚障害リハビリテーション施設→該当施設、市区町村役場
 
9 職業訓練・就労支援
①就労支援(身障者雇用主への援助)→高齢・障がい・求職者雇用支援機構
②職業訓練 (身体障がい者職業訓練校、障がい者職業センター、職場適応訓練)→ハローワーク
③ 職業教育・訓練 (理療教育訓練)→市区町村役場、国立リハビリテーションセンター、
④職業教育・訓練(学校教育法)→盲学校(視覚支援学校)
 
10 住宅の支援
①公営住宅への優先入居→市区町村役場
 
11 お出かけ支援
① 電車・バス・航空機・船舶・タクシーなどの料金割引→乗車券販売所・総合案内所など
② 地方自治体など独自に定めているもの(タクシー券や無料乗車証などの配布)→市区町村役場
③ 有料道路の割引→市区町村役場
日本眼科医会ホームページより)

2 何事もお金が大事

人間生きていくためにはお金が必要になります。特に突然目が見えなくなった場合、この先仕事を続けられらるのか、生活費はどうなるのか、手術や入院、治療などにかかる医療費など金銭面の不安は大きいかと思います。

①傷病手当金

1年以上企業などに勤めて社会保険に加入している方が、怪我や病気で仕事を休んだ場合は、傷病手当金(最大1年半)を受けることができます。

傷病手当金は休職中(給与や休職手当金が支払われている場合は差額分まで)や退職後にも請求可能です。期限は2年ですので忘れないように早めに申請しましょう。

金額は毎月の給与などの額を一定の幅で区分した「標準報酬月額」をもとに計算されます。なお失業手当と重複して受給することは基本的にはできないようです。

詳細はこちらを確認ください。

② 労働者災害補償保険(労災保険)

労働災害(労災)による休職の場合には、労働者災害補償保険(通称「労災保険」)から給付金が支給されます。業務が原因の場合は休業補償給付、通勤が原因の場合は休業給付と呼ばれます。

詳細はこちらを確認ください。

③障がい年金

障がいの程度によりますが、初診日(この時点で国民年金に加入している必要があります)から1年6ヶ月以降(もしくは症状が固定している)に申請すれば、障がい基礎年金を受給することが可能になります。等級によりますが、月6〜8万円程度です。

また厚生年金加入者は障がい厚生年金の受給も可能になります。

申請などの詳細はこちらが大変参考になります。

また手続きも煩雑なため、社会保険労務士(社労士)に相談することを検討してもいいかもしれません。

また医療費については以下のことを確認きておきましょう。

①高額療養費(限度額認定証)

医療機関等の窓口での支払いが高額な負担となった場合は、後から申請することにより自己負担限度額を超えた額が払い戻される「高額療養費制度」があります。

しかし、後から払い戻されるとはいえ、一時的な支払いは大きな負担になります。

「限度額適用認定証」を保険証と併せて医療機関等の窓口に提示すると、1ヵ月 (1日から月末まで)の窓口でのお支払いが自己負担限度額までとなります。

詳細はこちらを確認ください。

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(画像は全国健康保険協会 協会けんぽより)

②指定難病への医療費助成

眼疾患によっては、指定難病への医療費助成を受けることが可能になります。

視覚系疾患で該当するのは、網膜色素変性症、中隔視神経形成異常症/ドモルシア症候群、眼皮膚白皮症、黄斑ジストロフィー、レーベル遺伝性視神経症、アッシャー症候群、前眼部形成異常、無虹彩症、膠様滴状角膜ジストロフィーのようです。また子どもの場合は対象の眼疾患が異なる場合があるようです。

詳細はこちらを確認ください。

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(画像は難病情報センターより)

③心身障がい者医療費助成

身体障がい者手帳1・2級および3級で内部疾患(心臓、腎臓、呼吸器、ぼうこう・直腸、小腸、ヒト免疫不全ウイルスによる免役及び肝臓の機能障害)の方なら医療費助成受給者証を取得することで、医療費助成を受けることができます。

詳細はこちらを確認ください。

④医療費控除

基本的に年10万円以上(収入によって10万円以下で該当)の医療費負担があった場合、医療費控除を申請することができます。病院などの領収書は忘れずに保管しておきましょう。

手続きなどの詳細はこちらを確認ください。

3 自分の眼の病気や状態を知りたい、この先どうなるのか

ロービジョン外来で有名なのは井上眼科病院神戸アイセンター病院などでしょうか。それ以外にも「ロービジョン外来」と検索すると多くの病院が表示されます。

自分の眼疾患について気になるのであれば、セカンドオピニオンとして利用されるのもいいのかもしれません。

それ以外にも以下の当事者団体サイトなどでいろいろな情報を集めるのもいいかもしれません。

ただネットなどで医学的に根拠のない高額治療を謳っているようなサイトもあるようなのでお気をつけください。

4 いろんな繋がりが助けてくれます

見えていた状態から眼が見えなくなる。大きな絶望に囚われるかもしれません。

見えないことを受け入れて生きていくのは大変で時間がかかるかもしれません。ですが、視覚に障がいがあっても日々楽しんで過ごされている方がいるのも事実です。

見えない人が生活する上でどんな便利な道具や工夫があるのか。こちらのマガジン「見えない・見えにくい方への情報提供」でもいくつか紹介していますので参考にしてみてください。

①スマートサイト

眼科と福祉や教育を繋ぐための取り組みがスマートサイトです。こちらの記事「スマートサイト まとめ」でも紹介しています。

眼科は治療して、もしくは症状が固定して終わりですが、その先も人生は続きます。

どんな制度や便利グッズがあるのか、その使い方の練習など施設や盲学校に相談してみてはどうでしょうか。

②当事者団体や友の会

周りの家族や友人の言葉だけでは前向きになれないかもしれません。だって周りの人たちは見えているのですから。

でも実際に見えない人に会って話を聞いてみることが、それが同じ病気の方なら尚更、次の一歩を踏み出すためのなにかに繋がるかもしれません。

視覚障がいの当事者団体や友の会については、こちらの記事「視覚障がい者当事者団体 まとめ」で紹介しています。

TwitterやYouTubeで動画投稿をされている視覚障がいの方もたくさんいます。覗いてみてはどうでしょうか。


5 働き続けるために

仕事や身の回りのことなど、見えなくなって困ることは多いかもしれません。

いくつかの視覚障がい施設では、いろいろな相談や歩行・生活訓練、就労に向けた訓練(音声を使ったパソコン操作や電話交換手、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師などの職業訓練)を受けることができます。

また盲学校(ロービジョンの方も通われています)でも、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師や理学療法士、柔道整復師などの資格取得を目指す学科もあります。

以下のサイトを参考にしてみてください。

国立リハビリテーションセンター自立支援局

視覚障害リハビリテーション協会

日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター

ロービジョン支援ホームページ

また中途で見えづらくなった方々の継続就労(転職・再就職を含む)の相談を受けている、タートルの会もありますので覗いてみてはいかがでしょうか。

6 身の回りの生活のサポート

先程紹介した視覚障がい施設では、歩行指導や生活訓練をうけることができます(施設によっては各家庭に指導者を派遣してくれます)。

また便利な道具も沢山あります。訓練し、環境や道具を工夫すればできることは増えていきます。

でも、全てを自分一人でするのは難しいかもしれません(もちろん一人で自立して生活されている全盲の方もいらっしゃいます)。

そこで、考えてみて欲しいのです。

見えている僕もそうですが、僕たちは本当に自分のことを「全て」自分でやっているのでしょうか。僕は違うと思います。自分でやっているつもりになっているだけで、多くの人に支えられているのです。

「自立とは依存先が多いこと」という言葉もあります。そして支えてくれる制度はいくつもあります。

もしそう思えるようになったのなら、移動時の同行援護(ガイドヘルパー)や料理や買い物、掃除などをサポートしてくれるホームヘルパーを依頼してみてはどうでしょうか。福祉の手引きにもいろんな制度が掲載されています。

まとめ

いろいろと知っておいた方がいい情報などをまとめました。ですが、情報だけではダメだと思います。家族や友人などの支えが必要です。

失ったものではなく、今あるものをどう使い生きていくのか。そう考えられるようになるまでなかなか時間がかかると思います。

ご家族や友人など周りの方のサポート、同じ見えない立場の方との関わりがその助けになるかと思います。

でも焦らず、ゆっくり、本人のペースでいくのが大事かなと思います。

冒頭にあったツイートに、いろいろな情報と共に投稿したのが上記の内容です。

悩みや絶望、葛藤を乗り越えるには時間がかかります。ですが、失ったものよりこれからのことを考えてほしいなぁと思うのです。

6 身の回りの生活のサポートでも書きましたが、「自立とは依存先を増やすこと」とも言われます。どんどん頼って、必要な制度は利用して、これから先を楽しんでほしいと思います。

他にもいろいろな視覚障がい関係の情報の記事を書いていますので、気になった方は読んでみてください。



表紙の画像は日本盲人福祉委員会より引用した、世界盲人連合のマークです。