見えにくい世界を体験するツールの紹介
以前も視覚障がい体験についての記事を書いたことがありますが、今回はそんな視覚障がい体験をするためのツールを、直接身につけるシミュレーションレンズと、スマホやタブレット、パソコンを使って体験できるアプリやブラウザに分けて紹介していきます。
1 シミュレーションレンズ
1.視覚障害体験用シミュレーションレンズトライアル
屈折異常、白濁、視野狭窄などを体験できます。視野狭窄や白濁は種類があり、白濁+視野狭窄(5度)のように複数を組み合わせることも可能です。
かなりお高いので…近隣の盲学校や視覚障がい施設などに貸出を依頼するのもいいかもしれません。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
(画像は高田メガネより)
2.ダス視覚障害疑似体験キット
視力0.1(20/200)と0.05(20/200)の調整レンズと、眼前手動、黄斑変性症、飛蚊症、網膜剥離、視野5度 、網膜色素変性症、網膜出血、光覚の8種類の擬似レンズ、黒色レンズがセットになっています。
こちらもなかなかのお値段です。僕の働いていた盲学校には視覚障害体験用シミュレーションレンズトライアルとダス視覚障害疑似体験キットがありました。
(画像はジオム社より)
(画像は伴走より)
3.ロービジョン体験キット
組み立て式のメガネ型キット。3つのメガネでそれぞれ視野狭窄、白濁、中心暗点の体験ができます。こちらはかなりお手軽価格です。ロービジョン体験用教材集も付いています。
(画像は日本ライトハウス情報文化センターより)
(画像は片桐眼科クリニックより)
(画像はレイス治療院より)
4.視覚障害体験用メガネ
白内障と視野狭窄の体験ができるメガネです。
(画像は日本光器制作所(NIKKO)より)
5.視覚障害ゴーグル
白濁、黄変、視野狭窄、全盲の4つを体験できるゴーグルです。シートを組み合わせることもできます。
(画像はAmazon.co.jpより)
(画像はワンサカドットコム 店長ブログより)
6.高齢者疑似体験グラス
こちらは白濁、黄白濁、視野狭窄、加齢黄斑変性(中心暗点)、スモーク、全盲を体験できるシート付きです。
(画像はAmazon.co.jpより)
7.色弱模擬フィルタ「バリアントール」
色弱者が感じる色の見分けにくさを、一般色覚者が体験するものです。メガネ型とルーペ型があります。
(画像は伊藤光学工業株式会社より)
8.高齢者水晶体模擬メガネ「シニアビュー」
高齢者の水晶体の加齢変化(黄褐色に変化し、透過率が低下)を、若年者が体験できるメガネです。
(画像は伊藤光学工業株式会社より)
9.LOW VISION EXPERIENCE KIT
ロービジョンの見え方を疑似体験するメガネのキットで、コントラスト低下、視野狭窄、中心暗点の3つの見え方で、見えない世界を疑似体験することができます。
(画像はPLAYWORKSより)
PLAYWORKSのイベントなどで限定配布しているそうです。
2 シミュレーションレンズを自作してみよう
シミュレーションレンズを自作することもできます。
(画像は京都府教育委員会より)
視野狭窄体験は、めがね型だけでなく、例えば黒い画用紙に小さな穴を開けて、その穴から本を読んだりすると、視力的には見えているけれど全体が見えないこと(行をたどっていくのが大変)や、文字を大きくすればいいわけではないことに気づくような体験できます。
(画像は記者撮影より)
3 アプリ
1.見え方紹介アプリ
日本弱視者ネットワークが開発したアプリで、カメラの映像をぼやけたり、羞明・夜盲症、視野狭窄、中心暗点などのシミュレーションできます。
使いやすくおすすめのアプリです。
(画像はイトウ鍼灸院より)
2.色のシミュレータ
様々な色覚特性がある方の見え方を体験できるアプリです。1型(P型)、2型(D型)、3型(T型)の2色覚の色の見えをリアルタイムに確認し、一般型(C型)の色の見えと比較することができます。
(画像は色のシミュレータより)
(画像はAPK Pureより)
3.Aira Vision Sim
14種類の眼疾患の見え方をシミュレーションできるアプリです。見えにくさのレベルを調整したり、Ditail」をタップするとその疾患の情報(特徴や原因、患者数など)を知ることもできます。
表示が英語のみなので注意してください。
(画像はDrafts about A11Yより)
14種類の眼疾患は以下の通りです。
4.ViaOpta Simulator
患者さんや医療従事者、介護をする方向けに作られたViaOpta Simulatorは、目の病気を持つ方にとって周りの景色が実際どのように見えるのか、スマートフォンやタブレットを通して体験できるアプリです。
こちらも表示が英語のみなので注意してください。
(画像は見えるよろこびより)
体験できる眼の病気は以下の通りです。
5.SimEye
犬と猫の目の見え方、および人のさまざまな目の病気による見え方をカメラ画像に画像フィルターをかけることによりシミュレーションできるアプリです。
(画像はAPPLIONより)
4 ブラウザ
1.Vision Loss Simulator
Webブラウザで視覚障害者の「見えにくさ」を体験できるシミュレーターです。「EXPLORE」をクリックするとシミュレーターが起動。眼疾患をクリックするとそれぞれの典型的なビジョンを再現します。
(画像は記者撮影より)
体験できるのは以下の6種類です。
2.Photoshop/Illustrator 色の校正
AdobeはCS4からPhotoshopとIllustratorにP型とD型色覚のシミュレーション機能を搭載しています。作業中にワンクリックで確認できます。
(画像はUX INSPIRATION!より)
3.UDing CFUD
デザイン上、複数の色を使いたい場合になるべく混同しない色を選び出すソフトウエアです。実際に印刷時に使用されるインキ色をイメージして、或いは色見本帳でそれを確認しながら配色することができ、画面上での配色が印刷時にズレてしまうことを防げます。
(画像は東洋インキより)
4.UDingシミュレーター
デザインに使用したい画、または自分がデザインした画に使われている色がどのように見られている可能性があるか確認できます。
(画像は東洋インキより)
5.Sketch “Stark”
SketchのプラグインであるStarkは、ウィンドウがオーバーレイし、色覚多様性のシミュレーションができます。コントラストチェック機能もついています。
(画像はUX INSPIRATION!より)
6.Spectrum(Chrome拡張)
SpectrumはChrome拡張機能で、ブラウザで表示しているページに対して1クリックで色覚多様性をシミュレートできます。
(画像はUX INSPIRATION!より)
7.Color Oracle
Windows、Mac、Linux対応のデスクトップアプリです。
(画像はUX INSPIRATION!より)
まとめ
見えない世界を体験するためのツールの紹介どうでしたか?
調べてみると知らなかったツールをたくさん発見できました。後半のブラウザのツールはほとんど使ったことのないものもありますが…。カラーユニバーサルデザインに活用できそうなものがたくさんありました。
こうやって体験することは大事なことですが、それで終わらずにじゃあどうしたらいいのかなと考える機会に繋がればなと思っています。またそれに関する記事も書けたらなと思います。
いろいろなツールが、見えにくい弱視の方の世界を知るきっかけの1つになれば幸いです。
参考にしたサイト
①Drafts about A11Y「視覚障害シミュレーターで、ロービジョンの「見えにくさ」を体験。」
②UX INSPIRATION!「色覚多様性 (色弱/色盲/色覚異常) の見え方確認ツールまとめ」
③北海道カラーユニバーサルデザイン機構「色覚シミュレーションおよび補助ツールの紹介」
表紙の画像はレイス治療院より引用しました。