書籍紹介『15歳からの社会保障』
『15歳からの社会保障(横山 北斗)』という本の紹介です。
社会保障を知っておく
(画像は日本評論社より)
「社会保障」という言葉を聞いてどんなイメージが思い浮かびますか?どんな制度があるのかを知っていますか?
僕自身は特別支援学校に勤務する社会科教員、妻は医療ソーシャルワーカーという福祉にとても近い立場です。学生時代にガイドヘルパーやグループホームの管理人、障がい児学童(現在の放課後等デイサービス)兼作業所の職員といったアルバイトをしていたお陰で、障がいに関する福祉制度を自分の体験談も交えながら授業で子どもたちに伝えています。
支援学校ではそんな福祉制度について学ぶ機会もあるでしょうし、高等部での現場実習や進路になってくるとハローワークや障がい者就労・生活支援センター、福祉事業所といった施設や、支援区分判定、障がい年金などの福祉制度にダイレクトに関わる機会も増えてきます。
中学校や高校でも社会保障制度の概要について学ぶ機会はあるでしょう。でも、例えばアルバイトで受けたこの扱いは法律違反であるとか、困ったときに生活保護を申請する方法であるとかを学ぶことはほとんどないのが現実だと思います。
本当に困ったときにどう動けばいいのか、どこに相談すればいいのか、どんな手続きが必要なのか、具体的にどこの誰を頼ればいいのか…
社会保障の話は、自分とは関係のない遠い世界の話とは限りません。いつか自分が直面するかもしれない、身近な世界の話として知っておくこと。それもどこへどうすればいいのかを具体的に知っておくことが、いざというときの自分の助けになるかもしれません。
10人のストーリーから社会保障を知る
(画像はAmazon.co.jpより)
本の中では10人のストーリーを通して、それぞれに関連する社会保障制度や具体的な相談先などが紹介されます。
どのエピソードでも、困りごとに直面しつつ、今使える社会保障制度を知らない登場人物たち。
読み進めるうちに彼らの悩みが伝わり、彼らの顔が浮かんできます。社会保障制度を利用する人は遠い世界の知らない人ではなく、もしかしたら自分にもあり得ることを実感さらるはずです。
著者の横山さんは当初は医療や年金などの制度別のガイドブックを作る予定だったのだそうです。
でも、それぞれのエピソードで語られるリアルさがあるから、読者に響くのだと思います。
具体的なエピソードの内容はぜひ本を手に取って読んでみてください。
制度や相談先を知っておくことの大切さ
各エピソードのおわりには紹介した制度の概要、利用するための条件、窓口などが、巻末には主な相談窓口、その他の社会保障制度の一覧、参考書籍・ウェブサイトが掲載されています。
(画像はAmazon.co.jpより)
本の中で役所に相談に行った際に、情報は聞かないと教えてもらえないのだなと感じるエピソードが度々あります(さらに言えば役所では配置換えがあるので、福祉の窓口にいる方が必ずしも福祉の専門職とは限らないのです)。
日本の福祉は申請主義、自分から申し出ないと制度を利用することができない、本当に困っている人に届きにくい仕組みになっています。
生活に困った女性が性産業に流れる、生活に困った方が闇バイトやサラ金・闇金に流れるといった問題は、制度を頼るということが広く知られていないことが原因の1つかもしれません(それ以外にもハードルの高さや即時性の低さもあるでしょう)。
今の時代、ネットで検索すれば大抵のことはわかります。でも、知らなければ調べようがないのです。
僕自身も授業で福祉制度について伝える際、「制度の細かい内容よりも、ざっくりとこんな制度があるんだなっていうことと、なによりもどんな制度があるのかや具体的にどうすればいいのかを教えてくれる相談先を覚えておくのが大事」と繰り返しています。
医療ソーシャルワーカー、自立相談支援機関、妊娠SOS、子育て世代包括支援センター、発達障害者支援センター、ハラスメントに関わる相談窓口、日本司法支援センター(法テラス)、児童相談所、配偶者暴力相談支援センター。
エピソードに登場する相談先を知っていて、繋がることができれば…読み終わり、目の前の子どもたちのことを考えるとそんな想いが絶えません。
巻末には代表的な相談窓口について紹介されています。
著者の横山さんも関わった、いくつかの質問に答えることで自分の状況に合った支援を探すことができるサイトです。
悩みや不安を抱えて困っているときに、電話やSNSで気軽に相談できる場所を案内しています。
まとめ
「知らないことは個人責任では決してない」と語る横山さんの言葉が胸に残ります。
横山さんの想いに賛同すると共に、これからも子どもたちに具体的な社会保障制度や相談先についての発信を続けていかねばと思います。
そんな想いを抱きながら紹介記事を書かせていただきました。
誰もが困ったときに必要な支援にアクセスできるように。
気になった方はぜひお手にとってみてください。そして、身近な子どもたちにも伝えてあげてもらえたらとも思います。
著者の横山北斗さんはXでも情報を発信されています。
また本書の刊行記念トークイベントのYouTube動画もありましたのでリンクを貼っておきます。、
参加にしたサイト
1.WedgeONLINE「「15歳にも分かるようにしてほしい」編集者から突き返された原稿案、『15歳からの社会保障』の著者インタビュー、これだけは絶対に伝えたかったこと」
2.厚生労働省 社会保障教育の推進に関する検討会第1回配付資料「書籍「15歳からの社会保障」のご紹介」
表紙の画像はAmazon.co.jpより引用した本の表紙です。