丸くなり、こたつで笑う君は、いつしかそこに居なくなる。
寒い冬、我が家はコタツで暖を取る。
みかんを食べたり、テレビを見たり、ゲームをしながら家の中で過ごす冬。
そんなぼくのそばには、いつも君がいる。
君はいつも、自由奔放で、かまえば逃げていく。
でも、作業をし始めると寄ってくる厄介者だ。
そんな厄介者でもいてくれるだけで安心する不思議。
もふもふの君は、いつも暖かい。
たまには膝の上でも寝てくれる。
そんな君が、今日はいない。
日中天気が良かったから、開け放たれていた窓。
最後に確認したのは、ベランダの隅で日向ぼっこをしていた所だ。
きっとお出かけしたんだろう。
その日はその程度にしか思っていなかった。
明くる日。
おはようと共に餌をお皿に出す。
普段なら喜んで食べに来る君は、今日もいなかった。
いつ帰ってきてもいいように、少し寒いけど開けておいた窓。
でもいない君。
その窓は、とても寂しく見えた。
ここに来てから12年になる君は、いつもそばにいてくれたのに。
昨日からふと姿を消した。
寿命が近づくと、飼い主の元を離れるという噂がある。
もうきっと帰ってこないんだろう。
そう覚悟を決めたのだった。
あれから1週間経った。
今も君は姿を見せない。
やっぱり行ってしまったんだろうか。
ずっと一緒にいた君。
最後も一緒に居たかったな。
目に涙が浮いてきた。
その時だった。
ナァ〜。
振り返るとそこには、元気そうな君が、のんびり窓の外で顔をのぞかせていた。
溜まっていた涙がこぼれる。
袖をのばし、ふきとってから、ぼくは君を部屋の中に入れた。
もうどこにもいかないでね。
つぶやいて見たけど、君はコタツで丸くなり、清々しいくらい気持ちよさそうに眠りにつくのであった。