彼女の彼氏はネトゲ廃
ピコンッ
音に反応してスマホの画面を見ると
「ログインまだー?」
と急かすLINEが1件入っていた。
「まーだ風呂はいってないっつーの…っと」
夜10時頃になるといつも決まってLINEが来る。
ネトゲの誘いだ。
毎日のことで気が滅入る。
でもそれは、ログインするまでの間だけである。
ネトゲと言うのは面白いもので、やりはじめる前はPCの起動すら億劫である。
でもそれが1度ログインすると、時間を忘れてプレイしていることが多い。そんな毎日のネトゲ生活をするようになったのは、さっきの通知の主、私の彼氏と出会ってから。
きっかけは、友人に誘われて行ったコンパ。
地味目な私は初めてだったのでとても緊張していた。
そんな私の前にたまたま座った彼。
ゲームは好きかと聞かれて素直に「はい」と答えてしまったのだ。
それからというもの、彼はこのゲームについての話をひたすら語っていた。
でも嫌じゃなかった。
なぜなら彼は、高身長スタイル抜群のイケメンだったからだ。
今呆れたでしょ。気持ちはわかる。
そうよ、私は面食い。
こんなイケメンの彼が言うんだから間違いなく面白い。
そう思った私は、ゲーム名をメモし、連絡先を交換してその日のコンパは終了。
自宅に着き次第速攻でPCを起動し、インストールを始めた。
それから連絡を取り合い、一緒にゲームをするようになった。
初ログインの時は焦った。
何を隠そう彼はこのゲームの「廃人」と呼ばれる類の人間だった。
ゲーム内で強さを表すレベルは最高値の200、ステータスはフルマックス。
正直ドン引きだった。
しかしながら彼はイケメン。
ゲームをやり込むイケメン…。
もともとゲーム好きだった私は、次第に惹かれていった。
ピコンッ
通知だ。携帯を覗くと
「はやくー」
ふふっと笑って
「もう少し待って…っと」
このゲームのことに関してだと、急かされるのは嫌いじゃない。
最近は少し可愛く感じてきた。
惚気はいいからって?
ちょっとくらい許してっ!
それからしばらくしたある日。
やめようと思った頃にゲーム内チャットで
「明日この場所に来て」
と、このゲームの主要都市に呼ばれた。
突然どうしたんだろ。
よくわかんないけどとりあえずその日は寝た。
次の日の夜、同じように急かされながらその場所へ行ってみると、そこには家が建っていた。
その家をぼーっと眺めていると
「ぼくと付き合ってください」
ゲーム内チャットで送られてきた。
私は目を丸くしてしまった。
ゲーム内チャットで告白って、えぇ…。
あんなにイケメンなのにゲーム内チャットって…。
と思いつつ、私はもちろん
「よろしくお願いします」
と、返信した。
以来私は、サービス終了を彼と一緒に迎えられるようにと祈るばかりです。
〜おしまい〜