『仮定法物語1』 仮定法過去篇
僕「仮定法、わかんね~。」
友「仮定法を簡単に作ってくれる『“仮定の世界”制作所』があるぜ。」
僕「マジ?」
友「マジ。」
僕「じゃ、行こうぜ。」
友「OK。じゃ、支度をせねば、だな。」
僕「何がいる?」
友「『“仮定の世界”製造所』用の雑記だな。自分で作るのさ。」
僕「どうやって作るのさ?」
友「簡単さ。雑記には、現在のほぼ100%あり得ない条件を書く。そして、矢印(↓)を書いて、その下に、その条件の結果を書く。」
僕「ちょっとよくわかんねえな。」
友「こんな感じさ。」
—————友の雑記—————
お金が100万円ある。(※現在のほぼ100%あり得ない条件)
↓
世界旅行する。(※その条件の結果)
———————————————
僕「お~、なるほど。なんとなくわかった。取り敢えず作ってみるから、見てくれ。」
—————僕の雑記1—————
明日雨が降らない。(※現在のほぼ100%あり得ない条件)
↓
洗濯物を干す。(※その条件の結果)
———————————————
僕「どうだい?」
友「『明日雨が降る。』は現在の事実じゃなくて、未来のことだから、ダメだな。」
僕「そっか。今現在のことじゃないとダメなんだな。もう一回書くよ。」
—————僕の雑記2—————
英語がめちゃくちゃ話せる。(※現在のほぼ100%あり得ない条件)
↓
ガガと話せる。or ガガと話す。(※その条件の結果)
———————————————
僕「どうだい?」
友「お~、いいんじゃねえ?」
僕「'話せる'と'話す'と、どっちがいい?」
友「'話す'の方がいいんじゃねえ。より強い意志が感じられて、現実よりもっと事 実から離れた感じがするぜ。」
僕「OK。じゃ、'話す'にするよ。」
友「じゃ、『“仮定の世界”制作所』までレッツゴー!」
<『“仮定の世界”製造所』の入り口>
友「言い忘れてたんだけど、『“仮定の世界”製作所』に入る前に、雑記を英語にしなきゃいけない........。」
僕「お~ファッ● !」
友「心配すんな。俺がやってやるさ。」
僕「恩に着るぜ。」
—————英語に変えた友の雑記—————
お金が100万円ある。(※現在のほぼ100%あり得ない条件)
↓
世界旅行する。(※その条件の結果)
I have one million yen.
↓
I will travel all over the world.
————————————————————
—————英語に変えた僕の雑記2—————
英語がめちゃくちゃ話せる。(※現在のほぼ100%あり得ない条件)
↓
ガガと話す。(※その条件の結果)
I can speak English fluently.
↓
I will talk to GAGA.
————————————————————
<『“仮定の世界”製作所』の中に入った。>
友「ところで英語の『仮定の世界』では現実世界とは時制が異なることを知ってるかい?なんと時制が一つ過去に戻るんだぜ。」
僕「え〜っ! ということは、現在のことを話す時は、過去形を使って、過去のことを話す時は、過去完了形を使うってこと?」
友「そう、その通り。」
僕「じゃあ、『仮定の世界』で未来のことを話す時は現在形を使うのかい?」
友「未来の場合は、現在形を使ったり、過去形を使ったりするんだ。でも、まあ今はこの件に関しては気にしなくていいさ。」
僕「わかった。でも、なんで『仮定の世界』では時制が一つ前に戻るんだい?」
友「まず、『仮定の世界』では現実世界とは逆、つまり、現実世界ではほぼ100%起こり得ないこと話すんだから、現実世界と同じ言い方をすると混乱が生じる。」
僕「ふむふむ。」
友「次に、英語の過去形や過去完了形は、実は、時間的な距離だけでなく、心理的な距離も表せる。」
僕「お〜、それは知らなかった。」
友「そして、英語では、というか英語話者は、現実には100%あり得ないことを仮定した世界を、心理的に遠い場所として、とらえる。」
僕「お〜、だから、仮定法では、心理的な距離を出す為に、過去形や過去完了形を使うのか!」
友「そういうこと。つまり、英語の仮定の世界では、現実世界での現在形は過去形、現実世界での過去形は過去完了形になるのさ。」
僕「なるほどねえ。」
友「でも、自分で時制を一つ過去に戻すのがムズイから、この『“仮定の世界”製作所』でやってもらうのさ。」
僕「そっか。じゃ、さっそくやってもらおうぜ。」
<『“仮定の世界”製作所』受付>
受付嬢「ようこそ。本日のご用件は。」
友「この雑記の英文の時制を一つ前に戻してほしいんですが......。仮定法過去にするんです。」
受付嬢「承知致しました。では雑記を。」
友「はい。これです。」
受付嬢「少々お待ちください。」
<受付嬢が建物の奥に消え、そして、しばらくして再び現れた。>
受付嬢「出来上がりました。星(★)の下の部分がそうでございます。どうぞ。」
友「ありがとうございます。」
<雑記を眺めた。>
—————出来上がった友の雑記—————
お金が100万円ある。(※現在のほぼ100%あり得ない条件)
↓
世界旅行する。(※その条件の結果)
I have one million yen.
↓
I will travel all over the world.
★★★★★★★★★★
I had one million yen.
↓
I would travel all over the world.
————————————————————
—————出来上がった僕の雑記2—————
英語がめちゃくちゃ話せる。(※現在のほぼ100%あり得ない条件)
↓
ガガと話す。(※その条件の結果)
I can speak English fluently.
↓
I will talk to GAGA.
★★★★★★★★★★
I could speak English fluently.
↓
I would talk to GAGA.
————————————————————
受付嬢「間違いはございませんでしょうか。」
友「あ、はい、たぶん大丈夫だと思います。」
受付嬢「では、こちらはお土産でございます。」
友・僕「ありがとうございます。」
<『“仮定の世界”製作所』を出た。>
僕「これで終わりかい?」
友「いや、家に帰ってお土産を足さなきゃいけない。」
僕「お~、OK ....。いろいろメンドイなあ。」
友「現実世界では100%起こり得ないことを言うんだから、まあ多少の煩わしさは我慢してくれ。」
僕「OK。ところで、お土産って何?」
友「まあ、そう急かすなって。」
<家に帰ってきた。>
友「じゃ、改めて雑記を見ようか。」
僕「OK。」
友「まずは俺のから。」
<再び雑記を眺めた。>
—————出来上がった友の雑記—————
お金が100万円ある。(※現在のほぼ100%あり得ない条件)
↓
世界旅行する。(※その条件の結果)
★★★★★★★★★★
I had one million yen.
↓
I would travel all over the world.
————————————————————
友「じゃ、ここでお土産の登場。」
僕「なになに?」
友「お土産は『if』と『,』だぜ。」
僕「..........。」
友「それじゃあ、仮定法にしていくぜ。まず、星(★)の下の文の頭にお土産の 『if』を足す。」
僕「ふむふむ。」
友「そして、『yen』の後のピリオドを『,』に変えて、矢印(↓)を削除して、上下に分かれていた文を一列にすると...。」
—————出来上がった友の雑記—————
お金が100万円ある。(※現在のほぼ100%あり得ない条件)
↓
世界旅行する。(※その条件の結果)
★★★★★★★★★★
I had one million yen.
↓
I would travel all over the world.
<お土産の『if』を足して、体裁を整えた後。>
If I had one million yen, I would travel all over the world.
————————————————————
友「ジャジャーン!仮定法過去の文の完成!」
僕「やったー!」
友「意味は『お金が100万円ある。→ 世界旅行する。』を『もしももしも、お金 が100万円あったら、世界旅行するのに。』って感じに変えるだけ。」
僕「じゃ、僕の雑記も、お土産を足すと....。」
—————出来上がった僕の雑記2—————
英語がめちゃくちゃ話せる。(※現在のほぼ100%あり得ない条件)
↓
ガガと話す。(※その条件の結果)
I can speak English fluently.
↓
I will talk to GAGA.
★★★★★★★★★★
I could speak English fluently.
↓
I would talk to GAGA.
<お土産の『if』を足して、体裁を整えた後。>
If I could speak English fluently, I would talk to GAGA.
———————————————————
僕「できた!意味は『英語がめちゃくちゃ話せる。→ ガガと話す。』を『もしももしも、英語がめちゃくちゃ話せたら、ガガと話すのに。』みたいな感じ?」
友「ブラボー!よくできた。因みに、君が最初に作った雑記も英語にして、その後、『if』文にしといた。」
—————僕の雑記1—————
明日雨が降らない。(※現在のほぼ100%あり得ない条件)
↓
洗濯物を干す。(※その条件の結果)
[英訳]
It will not rain tomorrow.
↓
I will hang the laundry to dry.
[ifの文]
If it does not rain tomorrow, I will hang the laundry to dry.
———————————————
友「これは直接法と呼ぶのさ。直接法では『if』の中の文は現在形を使うので、注意!ま、'be going to'や'will'も使うことも多々あるけどね。(テヘペロ)」
僕「承知致した!」
友「じゃあ、次は『仮定法過去完了』を作ろうか!」
僕「お、おおおけえ....。」
<完>
後書き
現実には起こり得ない仮の出来事を条件にあげ、その条件に対して、意見や判断、感想などを伝える英文は、仮定法と呼ばれます。
そして、仮定法の英文には、過去形、過去完了形が現れます。
英語では(というか、英語話者は)、現実とはかけ離れた仮の世界は、心理的に遠い場所ととらえ、その距離の遠さを、過去形などを使うことによって、表すんですね。
この感覚は、日本語話者にはないものなので、習得するのはなかなか難しいです。
しかし、日本語でも仲が良かった友達に、急に敬語を使われたりなんかすると、心理的な距離が生まれますよね。この心理的な距離の感覚は仮定法の感覚を得るのに、参考になるかなと思います。
仮定法過去は仮定法の入り口に過ぎません。でも、仮定法過去の基本概念が理解できれば、他の仮定法も理解できると思います。
ではまた次の「『仮定法物語2』仮定法過去完了篇(仮)」でお会いしましょう。
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