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ノラネコぐんだんの様式美

現代作家の絵本3大ヒットで思いつくのは、
トロルの「おしりたんてい」シリーズ、ヨシタケシンスケの一連の絵本、
そして工藤ノリコの「ノラネコぐんだん」シリーズではなかろうか。
いや、なかやみわの「どんぐり村」シリーズ、
あるいは「くろくん」シリーズも忘れてはいけない。
となると、四天王か。
いやいやtupera tuperaをカウントしないのは不謹慎との声が
脳内にこだまする。

まぁ、そんな現代の売れっ子絵本作家の中で、
この前、次女と一緒に読んだのが「ノラネコぐんだん」シリーズの
下記3作だった。

とぼけた表情の猫たちが欲望のままに織りなす大騒動。
物語は常に一定の型の中で展開されていく。

ワンワンちゃん(たぶん犬だと思う、あんま犬ぽく見えないんだが)が
経営しているパン工場、アイス屋さん、団子屋さん、
それぞれに忍び込んで、見よう見まねで作るんだけど、
いつもだいたい大騒動になる。

そして、ワンワンちゃんはノラネコぐんだんに問うのだ。
「あなたたちは ○○にしのびこんで
 こんなさわぎを おこして いいと おもっているんですか」
(○○はその作品の舞台となる場所)
「いいと おもってません」「ニャー・・・・・・」

そう、良いと思ってないのだ。
ノラネコぐんだんも悪いなとは思っているのよ。
自覚あり。罪の意識あるわけ。

だからワンワンちゃんは慈悲の心で毎回許すわけだよ、
彼/彼女らの労働を対価として、ではあるけれど。

このくだりが様式美として完成しているのは素晴らしいと思う。
実際、子供がいくつか読むと気づくわけ。
今日も次女と一緒に読んでたら、
長女がパパ知ってる?ノラネコぐんだんはね、
いつもいいと思ってるんですか?って怒られて
思ってません、て答えるんだよー、と。
この繰り返される様式美と予定調和が生み出すユーモアを
子供が自ら気付く展開は胸アツ!

ワンワンちゃんの多角経営ぶりから推測される
資本家としてのワンワンちゃんと、
ワンワンちゃんの繁盛する店を羨望の眼差しで
見ながら潜入と事件を引き起こし、
労働を対価に許しを請うプロレタリアートのノラネコぐんだん、
というマルクス的な読みも不可能ではない。

確かに儲かるのはワンワンちゃんだが、
ノラネコぐんだん的な勝手気ままで、
衝動に従って生きる自由を良しとする考え方があっても良い。

そもそも普通にお客さんとして楽しむ姿は描かれず、
ノラネコぐんだんとワンワンちゃんの間には、
文化的な隔絶があるようにも感じられる。
かなり原始的なんだよね、ノラネコぐんだん。

そんなことを考えてたら、「そらをとぶ」では
本当に無人島で原始的な生活を1年も続ける展開に。

やはり属する文明が異なり、
文明の衝突的なことが起きているとも言える。
その割にはノラネコぐんだんの適応力が高すぎるんだけどね。










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