ドキュメンタリー『スター・ウォーズ~伝説は語り継がれる』/望んだわけではないのに、旅に出るはめになる
彼らは望んだわけではないのに、旅に出るはめになる
自分が望んだわけじゃないこと。
言い換えれば、運命、宿命、逃れられない定め。
自分が望んだわけじゃないことを受け入れたとき、同時に人生の自由さも与えられるんじゃないかな。
逃れられない定めをかかえながらも、同時に、どう生きるかの自由も与えられるというパラドクス。
つくづく人間ってなんなんでしょうね。
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スター・ウォーズ好きが高じて『マンダロリアン』を観たいがためにディズニーデラックスに会員登録。
すると、スター・ウォーズ関連動画のなかに「スター・ウォーズ~伝説は語り継がれる」というドキュメンタリー作品があるじゃありませんか。
これがめちゃくちゃええんですよ。
シリーズ誕生30周年の2007年、スター・ウォーズシリーズが文化的・社会的にどんな影響を与えてきたかを映画監督・大学教授らの膨大な証言をもとに徹底的に検証するドキュメンタリー。
本番組ではジョージ・ルーカス監督が世に送り出した革新的かつ壮大なサーガを検証する。ギリシャ神話やローマ神話,歴史,宗教,政治にどのように関わり影響を与えてきたのだろうか。著名な作家や歴史家,政治家,映画関係者,ジャーナリストらのインタビューを交えながら分析していく2時間のドキュメンタリー番組。「スター・ウォーズ」が映画史に残るシリーズとなり社会現象を巻き起こした要因を解き明かしていく。それは興味深く驚きに満ちたものだった。
生みの親ジョージ・ルーカスが神話学のジョセフ・キャンベルに影響を受けていることから、スター・ウォーズがいかに神話的要素が盛り込まれているかが解説されていくのよ。
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神話の英雄の始まりの典型。
日常生活→冒険への誘い→拒否→出立→メンターとの出会い→旅の入り口…と続くみたい。
おもしろかったのは主人公が旅へ出ることを拒否したり、断ることも織り込み済みだということ。
旅に出れば日常から引き離される。慣れ親しんだ全てと別れなければならない。
だから、旅に出るのを断ることもある。さんざん抵抗しながら。
でも、時間稼ぎをして心の準備をしている。
旅に出ることはそれまでの日常と別れる・離れること。
だから、そう簡単に決断することができない。
英雄ですら怖気づいちゃうなんて、僕らと同じなんだね。
ルークもオビ・ワンの誘いに「畑仕事が忙しいから…」なんてもっともらしい理由をつけて断ってしまう。
けれど、家に戻ると養父母が帝国軍に無残にも殺されてしまっていて。
帰る場所をすっかり失ってしまい、そして、もうどうしようもなく「旅に出るはめ」になるわけなのよね。
で、ここから新しい人生が始まる。
「旅」っていうのは、変化、成長、世界領域の拡張、という面もありながら、苦難、危険、おそれ、不安、恐怖の面も同時ある。
だから、何度も何度も葛藤し、やっぱり無理だよ〜と散々拒みながらも、もう拒否する理由すらもなくなったとき、人は旅に出る「はめ」になるんだろう。
彼らは望んだわけではないのに、旅に出るはめになる
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英雄や物語の主人公というと、勇ましく望んで旅に出ているイメージが先入観としてあったんだけど、望んでないのによ〜、旅に出るしかねえのか〜、チックショ〜!っていうのが神話のパターンみたいなんよね。
それがおかしくておかしくて笑えてしまう。
笑えるけれど、でもそれでいいんだなって。
英雄もみな誰もが恐れ怖気づく庶民だったと知ってみると、ほんの少し勇気が出ちゃう気がする。
そうそう『マンダロリアン』ももちろんおもしろいよ。