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キャンセルカルチャーを考える
「キャンセルカルチャー」というワードを使ってる人の文章でキャンセルされる側とキャンセルする側の権力勾配を考慮しているものをほぼ見たことがない印象。力の不均衡の存在に気づかずに生きてこられてよかったね、それは特権と言うんですけどね
— airguitarPart2 (@airguitar_pt2) December 26, 2024
「キャンセルカルチャー」というワードを使ってる人の文章でキャンセルされる側とキャンセルする側の権力勾配を考慮しているものをほぼ見たことがない印象。力の不均衡の存在に気づかずに生きてこられてよかったね、それは特権と言うんですけどね
こんにちは、榊正宗です。この投稿は、弱者の発言についての意見として捉えられるかもしれませんが、そこに対する配慮はもちろん必要だと思います。ただ、現在のSNSではむしろその逆の現象が起きているように感じます。
キャンセルカルチャーと匿名性の問題:破壊から対話へ
キャンセルカルチャーという言葉が日常的に聞かれるようになった昨今、その是非をめぐる議論が盛んに行われています。しかし、その多くが表層的な議論に留まり、深いところでの問題点が見過ごされているように感じます。とりわけ、「キャンセルされる側とする側の権力勾配を考慮していない」という意見は一見鋭く聞こえるものの、キャンセルカルチャーの本質や影響を十分に捉えているとは言い難いと思います。
キャンセルカルチャーとは、特定の個人や組織が不適切な発言や行動をした際に、社会がそれを批判し、ボイコットを通じて「排除」する現象を指します。本来は差別や不正義に対抗する正当な行動として始まったものですが、SNSの即時性や匿名性と結びつくことで、暴力的な側面が拡大しています。この現象が引き起こす影響は、個人の社会的信用を奪うだけでなく、精神的に追い詰め、時には命に関わる深刻な結果をもたらします。私はその現実を、自らの体験を通じて痛感しました。
実体験:匿名性が攻撃の道具に変わった瞬間
私は以前、Twitterで意見を広く集めるためにアンケートを実施しました。しかし、Twitterの投票機能では投票者のログを取得することができないため、信頼性を確保する目的で外部の投票ツールを利用しました。このツールでは、投票のログを記録し、透明性を保つ仕組みが整備されていました。
しかし、投票の結果を確認した際、大量の同一IPアドレスからの不正な投票が行われている事実が判明しました。このような行為は、明らかに意図的かつ組織的なものであり、匿名性を利用した攻撃の典型例と言えます。この攻撃がどのような意図で行われたのか、明確な裏付けを得ることは難しいですが、私が進めていたプロジェクトや活動を妨害するためであったことは疑いようがありません。
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この出来事は私に、匿名性の持つ二面性を強烈に意識させました。匿名性は、本来であれば弱い立場にある人々が自由に意見を述べるための重要な手段です。しかし、それが攻撃の道具として悪用されると、逆に弱い立場の人々が標的にされるという皮肉な結果を生み出します。
👆️キャンセルカルチャーによる自作自演も匿名特有のものです。
キャンセルカルチャーと匿名性がもたらす問題
キャンセルカルチャーが匿名性と結びつくことで、次のような問題が浮き彫りになります。まず、匿名の集団が組織的にキャンセルを進める場合、その攻撃対象が必ずしも社会的な強者ではなく、むしろ立場の弱い個人や小規模な組織であることが多い点です。攻撃する側はリスクを負わずに集団の力を利用できる一方で、攻撃される側はその影響を直接的に受け、精神的、社会的、さらには経済的な被害を被ることになります。
さらに、キャンセルカルチャーがもたらすもう一つの問題は、誤情報の拡散です。SNSでは情報の真偽が確認される前に拡散されることが多く、特定の発言や行動が文脈を無視して切り取られ、一人歩きする事態が頻繁に起こります。その結果、対象者が何を言いたかったのか、あるいは背景にどのような事情があったのかが無視され、一方的に糾弾される状況が生まれます。
私自身、こうした状況に巻き込まれ、誤解に基づく批判を受けた経験があります。その際、真実を説明しようとしても声は届かず、ただ一方的な非難がエスカレートしていく状況に、精神的に追い詰められました。匿名性が絡むことで、攻撃の矛先が誰に向かうかを制御するのは極めて難しく、社会的な正義を掲げた行動が暴走する危険性がここにあります。
解決に向けた道筋
キャンセルカルチャーと匿名性の問題を解決するためには、まず私たち一人ひとりが情報の真偽を慎重に見極め、冷静に判断する力を持つ必要があります。SNSの即時性に流されず、物事を多面的に捉える姿勢を育てることが重要です。
また、匿名性そのものを否定するのではなく、その適切な利用法を社会全体で考える必要があります。匿名性は、人々が安心して意見を述べるための重要な手段ですが、その利用が攻撃や妨害に向けられることを防ぐための仕組みが必要です。たとえば、SNSプラットフォームにおける透明性の確保や、不正行為を監視する仕組みを強化することが挙げられます。
そして、最も重要なのは、対話を取り戻すことです。キャンセルではなく、誤解や間違いを乗り越えるための建設的な議論の場を増やすべきです。誰もが間違いを犯す可能性がある以上、間違いを糾弾するのではなく、それを共有し、修正していくプロセスを尊重する社会を目指すことが重要だと考えます。
まとめ
キャンセルカルチャーと匿名性の問題は、単なる一時的な現象ではなく、現代社会が抱える深刻な課題の一つです。私たちはこの問題に真摯に向き合い、他者を排除するのではなく、理解し合うための方法を模索し続けなければなりません。
私自身、この問題を通じて感じた痛みや葛藤を、より多くの人々と共有し、議論を深めることで、少しでも健全な社会の実現に寄与したいと考えています。
キャンセルカルチャーは言論テロと言えるものです。その背後にある匿名性の悪用は、正当な議論や対話を妨げるだけでなく、他者を攻撃し排除する道具として機能してしまっています。しかし、これに対抗し、正当に意見を表明しながら社会を変えるための方法も存在します。
ではどうすれば良いのか?
たとえば、AI問題においては、NAFCAや日俳連といった実名で活動する団体が、AIの悪用に反対する取り組みを行っています。これらの組織は、特定の問題に焦点を当て、冷静かつ建設的な方法で社会に働きかける活動を続けています。匿名性に頼らず、実名で活動することで、発言や行動に責任を伴わせ、正当性を高めています。
もちろん、NPOなどにはお金目的で設立されたものや、実態が不明瞭な団体も存在するため、すべての実名活動が正当とは限りません。それでも、真っ当な活動を行うには、実名で責任をもって取り組むことが基本だと思います。特に、弁護士や専門家を含む体制を整えることで、法的に守られながら弱者を支援する活動が可能となります。
匿名性は個人を守るために重要な手段であり、それ自体を否定するものではありません。しかし、社会に大きな影響を及ぼす問題に取り組む際には、実名で活動する団体が中心となり、建設的で責任ある行動を取ることが必要です。匿名性が身を守る盾として機能し、実名の組織が専門家と共に弱者を守るために動く――この役割分担こそが、健全な社会を築くための鍵になるのではないでしょうか。