プラネテス騒動について
こんにちは。映像作家で小説家の榊正宗です。
プラネテスについて
こちらのツイートが炎上したようです。
なお、現時点では原作者から下記のツイートが出ておりますので、これ以上事を荒立てるのはどうかと思いますので、発言の問題点とは別の視点で今回の炎上について書いていきたいと思います。
そうです。フィクションなんですよね。でも、なんでフィクションは嘘なのでしょうか? 嘘が許されるのでしょうか?
そもそも、フィクションの役割ってあるんでしょうか。もちろん娯楽として楽しむためにあるのですが、なぜ楽しく感じるのでしょうか。
これには、明確な理由があると思っています。
フィクションは、夜に見る夢と似た役割があるという考えです。もちろん科学的に解明された理論ではありませんが、おそらく、そういう理由があると考えると納得がいくというものです。
「フィクションは、脳の判断力を強化している」というものです。
人間の脳は、瞬時に物事を判断しています。たとえば、黒い丸と白い丸が並んでいたときに、どっちが黒ですか?と聞かれれば躊躇なく答えることができますよね。
ですが、どっちが好きですか?とか、どっちが正しいですか?と、聞かれると、答えはすぐにはでません。
世の中には、答えの出ない問題がたくさんあります。
実はフィクションというのは、こういった問題に登場人物を直面させることで、それに答えを出させる、解答事例を学べる娯楽なんです。
ただし、この解答事例は、実際に視聴者や読者が直面するリアルなものだけでなく、脳の判断力を高めるためのまったく荒唐無稽なものでも良いんです。
多くのフィクションでは、より難しい問題に直面する主人公を描き、見事な正解をだしたときに、傑作と賞賛されますよね。
もちろんバッドエンドのケースもありますが、それにしたって、なんらかの選択の結果バッドエンドになる事例を提示しています。
なので、デブリに遭遇せずに何も起きないプラネテスは、フィクションとしての役割を果たせないのです。殺人事件が起きない名探偵コナンはフィクションとして駄目なんです。
フィクションで提示される問題は、現実では起きないような思考実験で良いのです。むしろ、現実では起きないシチュエーションのほうがより好まれるとすら言えます。
つまり、ありえない解答を解くという、脳の訓練なんですよ。訓練というのが大げさであれば、刺激と言っても良いです。
そういった刺激を受けることで脳は活発になり、快感を得られるんだと思います。
というか、実際気持ち良いですよね!フィクションで問題解決を見るのは。
フィクションは選択の解答事例。夢は疑似体験による選択の練習だと思います。そうやって、脳は、現実の問題を解く訓練をしており、その訓練を楽しむ傾向があるんだと思います。もちろん事件が起きないフィクションもあります。事件が起きない日常物では、好きか嫌いかといった選択を疑似体験させるものが多いですよね。
いつも、うつ病の話で申し訳ありませんが、うつ病というのは、脳が正常に判断出来なくなる病気です。うつ病になると無気力になり、何も選択できなくなります。
フィクションはうつ病というか、うつ病の原因となるストレスの解消にとても効果があると思います。わたしの体験談ですが、毎週映画館にかよってるときは、不眠などの症状が軽いんです。
フィクションはうつ病で凝り固まって、何も判断ができなくなって、何も行動できなくなった脳に、適度に刺激を与えてくれて活力をくれるんだと思います。
さてさて。これでは、野田さんが悪人と言うか、「フィクションは嘘でもいいのに、なにいってんの? このひと?」みたいなところで終わって、ちょっと一方的すぎて可愛そうなので、下記の記事もご紹介しておきます。
実際に野田さんを叩いてる人もいるようですが、すばらしい功績を残された方です。
人工衛星「つばめ」が軌道高度167.4 kmという低い高度を達成したという記事です。この高度では人工衛星すら落下します。つまり、200kmとかにはデブリは長期間浮遊しないんですね。人工衛星ですら落ちちゃうのに、っていうか落ちるのを防ぐためにめっちゃ頑張ってるのに、デブリが落ちないって設定は俺らの苦労を馬鹿にしてるやろ?って思われたのかもですね。
そういった熱い思いがやや暴走して、今回のツイートになってしまったのではないでしょうか?
プラネテスの1話では高度210kmと明記されています。これは、お話の都合上、そのほうがいろいろなドラマが展開するからですが、今回はこういった背景から野田さんが発言されているというのは広まった方が良いと思いました。
その上で、議論が加熱しておりますフィクションのリアリティについては、脳の訓練としてまるっきり嘘をついても良いし、嘘でもなにか解決する事例をみるのはとても気持ちが良いし、脳にとって良い影響があると私は思いましたが如何でしょうか?
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