クリエイティブ産業における分業とAIの役割(榊正宗)
こんにちは、榊正宗です。「クリエイティブ産業における分業とAIの役割」について長文を書きました。
分業というテーマは、現代社会の仕事において非常に重要な要素です。特に、創造的産業においてその重要性は一層際立ちます。現在のLLM(Large Language Models)は、ある意味でランダムに近い結果を出力することがありますが、人間が具体的な設計図を与えることで、統一された作業を行わせることができます。これは、量産において大きな強みとなります。しかし、実は人間の作業も同様の特性を持っています。分業できる作業はAIに任せやすく、分業できない作業はAIに任せにくいのです。
例えば、漫画家の仕事を考えてみましょう。一人の漫画家が毎週約19ページを描いています。これを7人の漫画家で分業すれば、理論的には毎日19ページを生産できるはずですが、実際はそうはなりません。なぜなら、漫画制作においては、「ネーム」と呼ばれるストーリーの設計図が分業できないからです。AIを背景の描画などのアシスタント作業に使うことは可能ですが、ネームの制作は分業できず、AIに任せるのも難しいです。
アニメ業界も同じです。監督の絵コンテや原画作業は分業に適さない作業です。たとえ24分のアニメが300カットあったとしても、300人のアニメーターが監督なしでそれを描いても、1日で完成することはありません。しかし、原画がある場合、中国のアニメ会社などは300カットを1日で完成させることがあります。これは、設計図が完成している後の作業をAIや他の手段に委ねることが効果的であることを示しています。
現時点で、生成AIはまだ完全なワークフローを確立していませんが、ツールの性能が向上し、実際の漫画やアニメに合わせてカスタムされたツールが登場すると、生産性は大きく向上するでしょう。これからの創造的産業において、分業とAIの活用は重要な役割を果たしていくと考えられます。
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