須賀敦子が尊敬してやまなかったイタリアの女流小説家〜エルサ・モランテ〜
8月18日は、イタリアで最も人気のある小説家の1人、エルサ・モランテが生まれた日。(1912年8月18日 - 1985年11月25日)
ローマ出身。
アウグスト・モランテとユダヤ出身のイルマの間に生まれる。
幼いころから両親からの援助はほとんどなく、
彼女は主に独学で童話や詩などを作っていたそう。
後に、「作家になりたいという思いは、
いわば私自身とともに生まれた」と彼女自身が語っているほど。
21歳頃より雑誌に童話や詩、短編などを発表しはじめ、
最初の短編集『秘密の遊び』を出版。
25歳の時、友人を通じて最初の夫となる
アルベルト・モラヴィアと知り合い、
翌年に交際をはじめ29歳で結婚。
戦中には反ファシスト名簿に
夫モラヴィアが挙げられていたこと、
自身がユダヤ人であったため、
ナチスの迫害を恐れて、共に逃亡生活を送った。
終戦後、モランテとモラヴィアは
アメリカ人の翻訳者ウィリアム・ウィーバーの手助けで
英語圏市場へ参入を果たし、さまざまな賞を受賞。
ちょうど更年期に差し掛かるころ、
モラヴィアと離婚、彼女の新しい恋人であった
芸術家ビル・モローを自殺で亡くし、
激動の時期を過ごした。
この頃に書かれた『イーダの長い夜』は
原題は『La storia/歴史』歴史」といい、
モランテにとって苦難の60年代を越え、
生み出した代表作だった。
作品の舞台はローマで、
第二次世界大戦の熾烈な環境のもと、
女手ひとりで子供たちを育てる母親イーダの物語でもあり、
民衆の物語でもあり、
そしてモランテの戦争の記録でもあった。
ちなみにこの本は、現在絶版になっており、
中古は上下巻で1万前後となっている。
また、『嘘と魔法』は、
両親を亡くし養母も失って天涯孤独となった少女が、
祖母、母、自分の三代にわたる女性たちの激動の生涯を物語る。
実らぬ愛、激しい独占欲、嫉妬、裏切りなど烈々たる感情の渦が最後には狂気へと一気に燃えあがる作品。ヴィアレッジョ賞受賞。
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