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扉の向こうは写真の世界 「清里フォトアートミュージアム」

先週末向かったのは、山梨県北杜市。
標高が高く、長野県と隣り合う山梨県の最北地域です。
本日は「清里フォトアートミュージアム」のご紹介。私は2度目の訪問でした。



自然たっぷりの林の中を運転。道は1車線。他に走る車はおらず、再訪なのに若干不安になりながら、ナビを頼りに進んでいくと、、急に開けた空間。そしてどどーんとコンクリート建築!

とはいえ、圧迫感はなく、リズムカルな雰囲気です。

曇り空なので、ちょっとだけ寂しい雰囲気?

建築は栗生明さん

こちらのミュージアムは1995年開館。
建築は栗生明さん。
長い間、千葉大学工学部の教授をされていたんですね。

建築家 栗生 明 Akira Kuryu

1947 千葉県生まれ
1973 早稲田大学大学院 建築計画修士課程修了
(株)槇総合計画事務所入社
1979 東京大学工学部建築学科助手
Kアトリエ設立
1983 文化庁委嘱芸術家在外研修員として1年間渡欧1987 (株)栗生総合計画事務所に改称
1996 千葉大学工学部教授
2014 千葉大学退任 名誉教授就任
2022 (株)栗生総合計画事務所 代表を退任し、北川・上田総合計画(株)顧問に就任

下記サイトより

上記公式サイトにvisionのページがあり、読んでみました。
冒頭に掲載された文章が印象的だったので、引用します。

栗生明の恩師、穂積信夫先生の著書「エーロ・サーリネン」に印象的な一節があります。

「……フィンランドの自然児であったエリエルは、絵を描くのが好きであった。それも、屋外に出ての写生である。自然を写生するうちに、樹や花の美が目に映ったが、しかしそれだけではない。風景を描こうとすれば、家が登場してくるのである。家が自然と一体になり、家があることで風景になることを会得した少年の心のなかに、家が美しいものであるという印象をもったとしても、不思議ではない。……」

「建築があることで風景になる」

近代建築が軽んじていた視点がここにあります。建築は人間というフィルターを通してかたちづくる風景のひとつの要素だと考えられます。フィジカルな視覚環境を表現する「景観」と言う言葉と比較すると、「風景」は人間の意識や記憶にかかわり、文学的ニュアンスをもって語られます。

手つかずの自然より、たとえ僅かでも人間の営みを読み取れる風景に人間はより強く共感すると言えるでしょう。こう考えると建築の責任は重いと言わざるを得ません。

わたしたちは建築や環境を計画することで「品格ある美しい風景」を作ることを目指しています。

手付かずの自然は、もはや人を排除した自然そのもので、力が及びません。
気軽に足を踏み入れることもできません。
一方、人の手が入った自然は、どこか穏やかで懐かしさや美しさを感じます。
建築が風景の一要素となる。とても腑に落ちる視点です。

展示内容はヤングポートフォリオ

展示室には、受付でチケットを買った後、ガラスの扉を開けて入ります。
エントランスの天井が高く、外がよく見える開放的な空間から一変して、うちに籠った空間には写真作品が並ぶ。

ヤング・ポートフォリオとは、写真表現に情熱を燃やす青年たちの、創造性に富んだユニークな作品を収蔵し、後世に残す活動です。世界の35歳以下の写真家による表現意欲の高い作品を、美術館のパーマネント・コレクションとして購入することによって、彼らを支援し、勇気を与えたいと考えています。わたしたちは、未だ評価の定まらない青年たちの作品にこそ、時代を切り拓く力が秘められていると考えています。作品の収集を通して、そうした青年たちと出会い、対話し、そして彼らを励ましたい。青年たちの情熱と写真を結ぶ接点であり続けたい、と願っています。


長男が気に入った作品

○ 大島宗久

私が気に入った作品群

静かな眼差しと、写真の距離感、統一感。展示のバランスも好き。

カメラマンは大島宗久さん。

素人には、選出理由が興味深い

○ セルゲイ・メルニチェンコ

写真から迫る圧 悲しい表情
アンニュイな眼差し ここは教室?

セルゲイ・メルニチェンコ(Sergey Melnitchenko)はウクライナの写真家であり、「戦争の刺青」というプロジェクトは、ウクライナ戦争における人々の苦痛、記憶、感情を探る作品です。彼の作品は、戦争によって刻まれた深い傷跡が個々の人々にどのように影響を与えているのかを記録しています。

破壊された場所で、プロジェクターを使って戦争シーンを身体に投影。
2重の痛みを表しています。

他の作品とは、迫りくるものが違いました。世界の向こうとこちらを感じさせ、観ている側に圧倒的な痛みを突き付けます。

○ 百瀬俊哉

都会の青白い光とコンクリートが不気味なカッコ良さ
圧倒的な存在感

⚠️百瀬さんは選出委員です。

百瀬俊哉の「SILENT CITY」は、都市と人間の関係、特に都市の無機質で無人な側面に焦点を当てた写真プロジェクトです。ニューヨークを訪れたことで都市の光と影に魅了された彼は、特に廃墟や無人の街に「無言の語りかけ」を感じ、それを大型カメラで捉えました。彼の作品は、人工的な都市環境とその中に存在する自然の寂しさを描き、人間の痕跡や都市の無情さ、美しさ、静けさを表現しています。

館内の様子

明るく、ゆったりした書籍閲覧スペース
差し込む光と、ズラリと並ぶ写真集
メインの中庭
晴れてたらゆっくりしたかった
パキッとした色使い
エントランスホールにも展示作品がありました

よい空間でした


ソファで子どもたちと写真集を見ていたら、学芸員さんがニコニコと近づいてきました。
長男が一眼レフ(夫の)を首に掛けていたのを見つけてくれたのでしょう。
長男に「どの作品が好きだった?カメラよく撮るの?」などと話しかけてくれました。息子が答えると「いいね!通なのが好きだね〜」とお褒めの言葉。大人に一人前に扱ってもらえるの嬉しいよね。

約30年前の建築なので、外観には若干の古さを感じるものの、建物内は全く色褪せることなく、光とガラスとコンクリートと中庭の緑がミックスされて気持ちの良い空間でした。

まだまだゆっくり本や写真集を鑑賞したかったのですが、もうすぐお昼に差し掛かる時間だったので子どもたちのお腹が限界。。
お暇したのでした。

お読みいただきありがとうございました!


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