第54話 スサノオとオロチ
「私にわかる魂のことなら、すべて先生にお話しします。」
どういう経緯(いきさつ)だったのか、夢の中でスサナル先生にそんな言葉を告げていた。今まで解明してきた「見えない世界」に関することを、この人が欲するならば、少なからず伝えられると思ったのだ。
あの放課後の一件以来、彼が夢に現れることが格段に多くなっていた。不動さんの時のように、不審感から変装したり偵察に来るというようなことはなく、素のままのスサナル先生が「あなたを知りたい」とやってくる。
会った瞬間に動揺して意識がこちらに戻り、うっかり飛び起きてしまうことも多々あったけど、そんな時は心の中で、「急に消えちゃってごめんなさい。会えたことにびっくりして起きてしまったけど、嬉しかったです。」と念じて送ることにしていた。
そうやってこのまま、自然に距離が縮まるものだと思っていた。ツインレイという確証も派手な盛り上がりもないけれど、きっとこうやって、少しずつお互いの深層意識を知りながら融合していくものなんだろうと、漠然とそんな風に感じていた。
…………
学校に到着すると、折り畳んだ車椅子を荷台から降ろしてあきらを乗せる。
その時、斜めがけにした鞄とマフラーがもつれて車椅子に引っかかり、それを解こうとした勢いでマスクが外れて駐車場に落としてしまった。
派手なくしゃみが一発出た。
マスクがないと喉も鼻もムズムズして仕方がないけど、とりあえずこの子を教室に送らないと。そうして向かったエレベーターではその日、段ボールの載った台車を押した、ヤマタ先生と乗り合わせた。
帰宅して、なんだか右肩の流れが悪いことが気になった。明らかに血流が滞って、すぐにでも薬を飲まないと、重たい頭痛になりそうだった。
そして案の定、午前のうちから動けなくなった。結んでいた髪の毛をほどいて、ついさっき布団を整え直したばかりのベッドに潜り込むと、悪寒と睡魔が一気に襲ってきた。
2〜3時間ばかり眠っただろうか。
唐突に「かわいいねぇ」と、聞いたことのある低い声がした。その声にハッとしてよくよく見ると、ヤマタ先生に右腕をがっちりと掴まれていた。
ゾワっとして、総毛立った。
今までも色んな霊的体験をしてきたけど、これほどはっきりと象(かたち)を持った生き霊は、正直今回が初めてだった。どうして私なんかが好かれてしまったのか、その理由もわからない。目が覚めてからも気持ち悪さと不快感でいっぱいで、しばらくの間動けなかった。
夕方になり、なんとか体を起こしてあきらの迎えから帰宅すると、着ていた薄手のセーターを脱いで、代わりにカーディガンに着替え直した。セーター越しに掴まれた腕の感触がありありと甦って、とてもじゃないけどこれから先も、気にせずこの服を着る自信がなかった。
「お気に入りだったんだけどな。」
半泣きになりながらセーターを丸めて紙袋に入れ、粗塩とお酒とで軽く清めた。そうしてゴミ箱の中に放つと、ゆっくりと蓋を閉めた。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
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私のくしゃみって、豪快すぎるんだよね…。
こないだも車の中でくしゃみしたら、けーこに「ひみちゃん?」って改めて驚かれたんだけど、そのあと『ひみちゃんは元気いっぱいねー』みたいな愛がけーこからひしひしと伝わってくるの笑
ちなみに彼のほうが、私よりくしゃみおだやか。二連発してもおだやか。なんなら可愛げがある。え?ずるくない?
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