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第135話 闇の子



 二回目の、宇宙子さんとのセッションを迎えた。今回は何をするのだろうと思っていると、彼、スサナル先生に対する私の本音を引き出していくということだった。

「じゃあね、ひみさん。また私がサポートしていくので、目を閉じて彼を想い、それから心の中を視ていきましょう。
……一体何が視えてきますか?」

 少しすると、暗がりを背景に、ボヤッと人影が浮かんできた。

「……子供?」

「うん。子供ですね。どんな姿をしていますか?」

「姿?……ええとわからないです。なんか真っ暗で、影のシルエットしかわかりません。」

「深い闇の中にいるからね。黒いシルエット、合ってますよ。」

「あ。ぬいぐるみを抱えています。女の子?
うさぎのぬいぐるみを抱っこしてます。」

「ひみさんいいですね、いい調子です。
じゃあ、その子は一体何て言ってるかわかりますか?」

「……淋しいって、言ってます。」

「聞こえてきますよね。この子、だいぶ淋しがっていますよ。」


 宇宙子さんの解説によると、このシルエットの小さな子供は私の中にいる分離した闇の姿なのだという。そしてその子の表す感情は、『淋しさ』。
 あきらの卒業後に彼に再び手紙を書いて、だけどそれを受け取ってもらえなかったことで傷ついてしまった私の感情。私の中にあったもの。

 意外だった。正直、“そんなこと”で私自身が淋しさを感じていたなどとは、今まで思ってもみなかった。サイレント期間の到来はツインレイにとって織り込み済みで、前もって知っていたからこそとっくに乗り越えているものだと思っていた。
 だから普段からそれほどまでに、いかに私自身が感情というものを感じ尽くすことなく隅へと追いやってしまっていたかが身に沁みた。

 光を当て、この子のことを想念で抱きしめると、こちらもつられて涙が出てきた。そうして気づいた時には勝手に、「私、淋しかった。」と言っていた。

 さっきまでは、黒いクレヨンのぐちゃぐちゃの線でできたような影の姿だったのが、綺麗な青いサンドレスを着た、幼稚園くらいの小さな女の子として視えていた。表情までは見えなかったけど、本来は、黒髪のベリーショートだということもわかってきた。
 宇宙子さんによると、「ひみさんに抱きしめてもらえて、この子、笑ってますよね。」とのことだった。
 私の中にいた『淋しさ』が笑っている。そんな嬉しいことはないなと思った。

……

 その日の夕方。
自分の中に、『淋しい子』が住んでいたことを改めて不思議に思っていた。日中のセッションで、確かに私の中から出てきた闇の感情ではあったけど、『淋しさ』なんて、真っ先に出るほどそこまでたくさんないだろうと思っていたのだ。

 私の中の、先生に対する淋しさかぁ……。
夕飯を作るまであと三十分。その間だけ、ちょっと浸ってみようかな。

 そうして自分をその『淋しさ』に同化させても、やっぱりセッションで行けたほどの深い感情までは至らなかった。

「よし、オッケー。三十分経ちました。
おしまい解除、ご飯作るかな。」

 エネルギーの切り替えのためにはっきり口に出してから、いざ立ち上がって台所へと向かおうとした。この世界とはエネルギー。そのアファメーションのエネルギーによって解除できる筈だとの勝手な自信があったのだけど、本当のところこの時こそ、私まるごと闇にすっぽり飲まれていた。闇を、甘く見ていたのだ。

 倦怠感と、ものすごい眠気。とてもじゃないけどご飯が作れず、あきらに断りやっとのことで冷凍食品だけ温めた。

 うっかりすると、その食事の最中にも睡魔に負けそうになっていた。重たいまぶたの瞬きの間から、チカチカとした光だけが絶えることなく見え続けていた。



written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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すいません、昨日からかなり凝縮されたエネルギーの中におります。今日、力をかけるべきが、普段とは別ベクトルに向いているのでここは短略で失礼します。

『ひみが目指す先』(7/15掲載)

本日のお話が、ここに繋がってきますとだけ記しておきたいと思います。

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←今までのお話はこちら

→ 第136話 闇の中にぞ宝珠のありけり

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