第51話 釼
（つるぎ）
布団の中で、微かな痛みを喉の奥に感じる。
ああもう、まだ1月なのに。
くしゃみや鼻水からではなく痛みから花粉を察知するのは、おそらく昔から喉が弱いせいか。今年の花粉は2月の半ばからだという予報だけど、すでに憂鬱は始まってしまった。
衛生用品をしまってある一番下の引き出しから、仕方なくマスクを取り出そうとしゃがんだ時。そういえば、今朝の夢の中でも同じポーズを取っていたなと思い出した。
ええと、確かミカエルに護られて、どこかの海底火山の中に入っていったんだっけ……。
その火山の内側は朧げ（おぼろげ）ながら、「陰の中の陽」という印象が強い場所だったように思う。そこから再び水中の暗がりへと戻ってくる時に、手のあたりに何かが引っかかるのを感じた。もう一度その場にしゃがんで砂の中を慎重に探ると、やはり何か固いものに行き当たる。薄暗い海底の視界の悪い中で、おそらく骨とか棒切れだろうと思いながらゆっくり砂を払っていくと……。
そうだ、確かあれは剣（つるぎ）だった。
ミカエルによって大粒のサファイアが、ラファエルによって同じく大きなエメラルドが、あらかじめ柄（つか）の両面それぞれに埋められている物を拾った。
……また剣。
なんだかここのところ、剣ばかり手に入れている気がする。
持ち主が天使や神々という高次元存在であっても、初めは剣というだけで、野蛮で物騒な武器という印象しか抱けず、どちらかというと少し嫌悪までしていた。けれども先日見た夢のおかげで、そんな剣への考えが少しだけ変わった。
柔らかい日光があたる木の根本に、一本の剣が立てかけてあった。「あげるよ。」と声がして、ああ、ラファさんねと直感する。
夢のシーンはたったそれだけだったけど、何故だかこれは、戦いで人を傷つけるものではないということがはっきりとわかった。
人の心に闇がある時、切っ先で優しく腫れに触れ、その膿を出すために使うもの。
それはちょうど、昔からの生活の知恵としての縫い針などにも似ていて、火で少し炙ったり、アルコール消毒をしたりしてから皮膚に刺すことで、一瞬はチクッとするけどそれ以上化膿させないようにする、大事な処置のためのもの。道具に与えられた用途とは、確かに使う人の意図によってどんな風にでも広げていける。
この時の剣も、治癒の天使からの贈り物といえば“らしい”けど、それにしては私が持つにはサイズ感が豪快な気がして、少しばかり苦笑した。
今一体、何本剣を持っているんだろう。けーこからはよく「ひみのエネルギーはまんまミカエル」ってからかわれるけど、だったとしてもこんなにたくさんは必要ないのではと思ってしまう。いよいよ把握できない本数に、「私、剣屋さんごっこをするんじゃないんだけどなぁ」などと、天に向かって呟いてみる。
「ええー？ひみー、始まっちゃったの？」
マスク姿の私を見て、あきらが絶望的な声を出した。あと一週間もすると、この子もこの子で目の痒みから始まってしまうことだろう。
ラファエルが味方してくれるというのなら、心の膿より花粉症をなんとかしてほしいわと、二人車に乗り込み学校へと向かった。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説（笑）、ぜひお楽しみください。
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……そうです。
あきらも私をひみと呼びます。スサナル先生の前でも友達の前でも。
なんかね、自分の母親に、お母「さん」って、さんをつけるのが変な感じして嫌なんだって。
私はたまに階段下から二階に向かって「あー」って呼ぶ。あきらって呼ぶの面倒くさい。
それから少し解説。
『陰の中の陽』、つまり私という女性の中の男性性の部分。
女性である私の中に、男性性を取り戻したよ、ということ。剣はその象徴。もちろんこの一回で取り戻したわけなどではなく、アセンションとは段階を経ていくものなんだけどね。
ま、それでも何故か今でもたくさん剣を持ってるんですけどね笑
2025/1追記:
この「心の闇」とはトラウマだったりネガティブな感情だったりアカシックだったりを表しますが、遠隔ヒーリングでは、高次元体の私もこのラファエルの剣のようなエネルギーと、武器としてのミカエル的な剣のエネルギーとを使い分けて浄化しています。
便利！
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