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第26話 あかね空
店を出ると、雨は完全に上がっていた。
たった二日間でここまで仲良くなった、ナミさんとカオリさんとのお別れも近い。
というのも大阪から合流した彼女たちは、解散予定場所である南紀白浜空港までは向かわず、途中の駅から電車で一緒に帰ることにしたのだという。
少しだけ「小説」の世界を離れ、著者として個人的なわがままを許してもらえるならば、二日間の一期一会、この二人とご一緒できたことへの感謝をこの場にちょっとだけ書かせていただければと思う。
四国出身で、現実世界でお金の創造に長けたクシナダヒメのようなカオリさん。地元で語り継がれる空海さんの意外な話を聞かせてくれたこと、スサノオの切り絵を見て「彼はかわいい」と気に入ってくれたこと、ありがとうございました。
アメノウズメのようなエネルギーで、場を整えていくのが自然とできるナミさん。この旅でみるみる解放され、殻を破る勇気をたくさん見せて、示してくれてありがとうございました。
あなたたちお二人とは残念ながら、帰宅後に見た夢を通して、4人で乗った車から、一人また一人と降りてしまい行き先を違えた(たがえた)ことはわかってしまったのだけど、それでもこの時共にいてくれて、たくさんおしゃべりできて、私は本当に楽しかった。お二人が選んだ行き先に光満ちることをお祈りさせてください。ありがとうございました。
…………
さて。
そんなわけで駅に着くと、それぞれのこれからを祈ってお別れをする。そのまま後部座席に残った私は、彼女たちが駅の入り口から見えなくなるまでずっと手を振り続けた。
二人になってしまっても、まおちゃんとの会話は途切れない。それこそ空海のこと、ツインのこと、お互いの旦那のことなど色々と話した。
会話は一向に止まらなかったが、それでもたった一回だけ、意識が窓の外へと向かった瞬間があった。
信号待ちの間に見えたスーパーの出入り口に、あの人が、またいた。
上下真っ赤な派手な彼(彼女)は、今度は傘の代わりに買い物帰りの袋をぶら下げ、またも道路を横断していく。
1〜2時間前に見かけた同一人物の再びの登場に一瞬言葉が出なかったが、まおちゃんからの、「レンタカー会社の書類を鞄から取り出してほしい」とのリクエストに、結局その人のことを口にする機会も逃してしまった。
そして最後はバタバタだった。
空港近くのガソリンスタンドで満タンに戻し、指定された営業所まで行ったところでどういう訳かその店がなく、何故だか手違いで、系列の別の会社を指示されていたことが判明した。余裕だと思っていたフライトまでの時間が、あっという間に潰れていった。
営業所に連絡を入れて正しい店舗を教えてもらうと、二人でナビを確認しながら大急ぎでその場所へと向かう。平身低頭した従業員さんは、車のチェックもそこそこに、すぐに送迎車で空港入り口まで飛ばしてくれた。
おそらくこの時この彼だけが、気の毒にも一番焦っていたことだろう。チェックインの締め切りは刻々と迫っていたし、運転中も絶えず神妙な顔で、チラチラ時計と睨めっこしていた。
けれども間に合ってしまうことを感覚的に知っていた女二人は、そんなことより送迎車からの景色がみるみる赤く燃えていくのに魅入っていた。空はどんどん赤みを帯びて、黒い山の端(は)とのコントラストを見事にしている。
今度は運転席ではなく、後部座席で隣に並んだまおちゃんも、「私の旅、最後はいつもこんなかんじなんだよね。」と小声で言って、空を見ながら苦笑いしている。
この季節は日が落ちるのが早い。
確実に間に合うことがようやくわかり、任務にホッとした彼に見送られてから搭乗手続きを済ませる。せっかくなので、帰りのチケットは行きに絡めて「21列のB」を含んだ隣同士の席にした。そうして私たちを乗せた飛行機は、とっくに真っ暗になってしまった空の中を、羽田に向けて離陸した。
二人の魂の同窓会は、空の上をもってお開きとなった。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
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南紀の空港着いたら時間あるから夕飯食べて…とか話していたのに、羽田着いて京急乗って、ホームで流れ解散でした。おうちまで我慢してぺこぺこだったよ。
あ!でもね、これまた何の采配か、到着はギリギリだったけど、何故か乗るはずの飛行機(とサービス)はグレードアップしてた。
……そこ??