第41話 starlit eyes
将来をグラフィックアートで食べていきたいと見据えていた我が家の一年生は、パソコン部と迷った末に美術部に籍を置くと決めたようだ。
仮入部の終了後、改めて本入部申し込みのプリントに保護者印を添えて提出させると、早速入れ替わりでゴールデンウィーク中の予定が届いた。その少ない休み期間のほとんどが活動日に割り当てられていて、「中学生は部活動で忙しくなる」と耳にするのは本当なのだなと実感した。
数年前に外構の改修工事をしたという中学校の中庭は、まるでモールのようにきれいに整備されていた。シマトネリコの幹の根元をぐるっと円形に囲んだ外ベンチと、来客用の入り口横に設けられた待合スペースは、ちょっとした憩いの場になっていた。
連休中のその日の夕方、活動終わりに顧問の先生の付き添いでエレベーターを降りてくるあきらを、外ベンチに座って待つことにした。
子供たちが行き来する学校という場所では、スマホで時間を潰す大人の姿を何となく見せたくなくて、その代わりに本を開いてあきらの帰りを待つようになったのは、小学校でのお迎えの時から続く私の習慣だった。
ページを開いて視線を下に向けていると、後ろから声をかけられた。
「ああ、お母さん。美術部も今日やってるんですか？」
シマトネリコを回り込み、まだ薄着には少しばかり早いこの時期に半袖短パンで現れたのは、外部活の顧問をしているスサナル先生だった。
「そうなんです。
一日まるごとデッサンに使えるとはいえまだ終わってないのか、さっきからなかなか帰ってこなくて。絵を描くのってけっこう体力使うから、ゆっくり帰ってくるんだと思います。」
「うちの美術教師、ある意味名物ですからね。
もしかしてお母さんも何か描かれたりするんですか？あきらさんもいつも、よく描いてますよね。」
「あの子は昔から、ずーっと何か描いてますね。
私は最近は減ったけど、少し前まで切り絵を作っていました。……あ、先生。あきらから聞いたけど島根でしょ？」
「はい、僕出身島根です。」
「じゃあこの人だ。……はい、スサノオノミコトです。」
「うわ、すっげ。これ作ったんですか？」
スマホの画像フォルダから、以前作ったスサノオを呼び出して先生に見せた。
そしてそれをきっかけに映像作品や小説の話などで盛り上がってくる中で、なにか途中から、普通ではない不思議な感覚をこの彼に対して感じていた。
スサナル先生の目の奥なにこれ、どうなってるの？なんで目が宇宙みたいなの？
こんなに綺麗な、不思議な目の人が存在するの？
よくある「吸い込まれそうな瞳」という喩え方を、現実のほうが遥かに超えてきたと思った。今まで生きてきた世界ではありえない「現象」が事実としてそこにある。顔の作りの目の話ではなく、濃淡を湛えた眼球のコントラストそれ自体が、深さを測ることすら畏れ多く思えるほどの「異空間への入り口そのもの」のようだった。
なんて美しい目なんだろう。なんて奥まで広がってるんだろう。
「この人の目は普通じゃない、この人は普通じゃない」と、そんな感覚に麻痺していた。
「おー、スサナル先生だ。」
「あ、あきらさんお帰りー。お母さん待ってるよー。」
そんな中、この先生と妙に気が合うあきらが合流したことで、結局そのあともしばらく三人で話し込んでしまった。空の色の変化に気づいて周りを見ると、外に残っているのはとっくに私たちだけになっていた。
偶然にもこの先生に会えたことが内心嬉しくて仕方がなかったが、帰り際には離れがたく、もっともっと話をしていたかったと無性に寂しさが込み上げた。
今の今まで一緒にいられたことよりもすでに、また明後日の部活でも会えるのだろうかと、そのことが今から気になってしまった。
どうしよう、どうしたらいいだろう。やっぱり私はこの人のことが好きなんだ。
そんな想いで一杯になりながら、折り畳んだ車椅子を軽自動車の荷台に積み込み夕方の校舎を後にした。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説（笑）、ぜひお楽しみください。
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ツインレイかどうかを知る手がかりのひとつとして、相手の目に例えようもない美しさを発見することがあります。
注:ただし個人差。絶対ではない。
（あと！エゴの思い込みは危険。ツインレイであってほしくて「彼の目って違うー！」って甘いこと言ってると返り討ちにあうよ笑 よく精査して！）
本物は、圧倒的。
実はこの時の彼の目が宇宙感を発動したのは、スサノオの切り絵がトリガーだったのね。
だけどそれでも、この当時の私の場合『病院で出会うはずフィルター』が強力すぎたのと、いろんな不思議現象を体験しすぎてたことから「この人の目、なんじゃこりゃ。すごいな、こんな人もいるのか。」だったのと、「ニセツインかもしれないから、しっかり視ていこう」だったんだ。
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