第121話 二つの心音
お風呂場の電球のシェードの中に、小さなヤモリを捕獲した。知らぬ間に天井裏へと迷い込み、そこから落ちて出られなくなってしまったのだろうか。
今までも年に数回は、窓の外に張りついた小さな手足とお腹を見かけることはあったけど、今月だけですでに三匹目となる家の中での迷いヤモリ。そんなことは、ここに住んで初めてのことだった。
ゆっくりとシェードを外し、怖がらせないように縁側まで持っていくと、あっという間に手入れをさぼった庭の中へと消えていった。
その翌日、今度はあきらの通院のために運転していると、信号待ちで、こちらも今月三回目のマニュアル車のエンスト。ごく稀に、バックの時とかにやらかしてしまうことはあったけど、それだって年に一、二回あるかないか。
おまけにその日は院内のコーヒーチェーン店であったかいカフェオレを買ったのに、直後に知り合いのお医者さんに話しかけられて足止めを食らってしまってコーヒーは冷めるし、その間に天気が変わり、駐車場に行く通路では雨に降られる羽目になった。
なんだろう。明らかにどこかからのサインだ。エンスト、足まわり。それに雨……。これ、何かに足を引っ張られている?
……
それから何日か経ったあと、私は家で瞑想をしながら、自分の中の女性性と男性性とを統合していくイメージワークをしていた。
二極の場を作り出し、それらをゆっくり移動させて、ひとつに融合させていく。それに反応するように、温かみを増すハートチャクラ。二つのエネルギーが惹き合うように溶け出してきたところで、次はそのエネルギーをだんだんと高めていく。
あれ、ハイヤーハートチャクラ(※)もほかほかしてきた。気持ちいいなー。
今度はそのエネルギーを全身に広げようと拡大していく。真ん中の“一つ”を強めつつ、段々とそれぞれのチャクラへと気を流していくと、いきなり、何かが子宮でのたうち回った。お腹がぐるんと回転するとバタンバタンと悶絶していて、下腹部の中から動揺するような早めの心拍が脈打っている。
猛烈な腹痛に襲われた。それからあっという間に右半身全体に闇が広がる感覚がして、怨嗟(えんさ)の声が聞こえてきた。
ギョッとした。男性性からの強烈な恨み。それから心臓と子宮とで捉えられる、リズムの違う二つの鼓動。何がなんだかわからない。
あまりに強い負の感情を向けられて、しばしの間、私全部が怯んでしまった。
だけど思い返してみれば、初めてスサナル先生からの贈り物を見つけた時にも同じ“何か”が痛みとなって、私の体のより深い闇の奥へと、必死にその身を隠そうとしていた。
これは、私の男性性ではないみたい。だからこの感情はスサナル先生のものでもない。ええとこれは……、ええとこれは……。
え!?ヤマタ先生?
ようやくわかったかとでも言うように、真っ黒い怨念が、右半身から次から次へとあがってくる。呼気を通して普通じゃない量の瘴気(しょうき)が抜けていく。お腹が痛い、止め処ない、恐ろしい……。
あれほど毎日死ぬ気になって浄化を続けてきたというのに、大きな絶望にぶち当たった。鎮痛剤を飲み込むと、私の心の奥のほうから「もう疲れたよ。」と声がした。
打ちのめされた気分になって、その日は流しの片づけもそこそこに倒れるように布団に入った。
新月の夜の出来事だった。
※ハイヤーハートチャクラ……もしくはハイハートチャクラ。喉と胸の真ん中あたり。
written by ひみ
⭐︎⭐︎⭐︎
実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
⭐︎⭐︎⭐︎
ああー、今日ここに何書こうか笑
そうだねぇ。
エンスト、足回り、雨。このシンクロをシンクロサインと気づけるかどうか。
そのために、ハイヤーセルフと繋がる意識を持つんだよ。
実は今、我が子あきらにも今まで深く沈めていた闇が浮上してきてて、あの子もあの子で奮闘してるの。
私は我が子であっても人の学びは取らないので、それが何なのかまでは視てない。やり方だけは伝えて、手伝える旨は伝えて、あとは本人任せにしてるのね。
ちょうど一昨日、学校でとある資格試験があったの。退出可能時間後くらいに迎えに行くって約束してたんだけど、土曜日で軽く渋滞。
私のハイヤーの指示で、近道使わず「待たせていい」と、敢えて遅れて迎えに行って。なので本人は20分くらい私のこと待ってた。
そのあと皮膚科に連れて行ったんだけど、待ってる人 2人しかいなかったのに、この時期インフルのワクチンやってるから、「今月と来月は、土曜は完全予約制」ですって追い返されてしまったの。
帰宅して、一旦はクサクサしたあきらだけど、その「停滞」をちゃんとサインと取って、あの子のやり方「持ち物を見直してゴミを捨てる」を実行してた。
あきらによると、断捨離すると、一旦具合が悪くなって、そのあと流れるんだって。
優雅に、軽やかに、サインを受け取れるようになりましょ♪
⭐︎⭐︎⭐︎
←今までのお話はこちら
→第122話 藤模様のラブレター