第78話 闇堕ちしたもう一人の教師
郵便受けに、『親展』が二通。
一つは私宛てのもので、もう一通には旦那の名前。裁判所からの封筒に一見目立つ違いはないが、私からの陳述書が同封されている分、旦那の方だけ僅かながらに厚みがあった。申し立てていた調停まで、およそひと月となっていた。
そしてこの時期頻繁に、スサナル先生が睡眠中の私の夢にやってくるようになっていた。普通の夢と違うのは、生身の先生に近い気配がするということ。
内容まではあまり覚えてないけど、時には一晩中、何かをずっと喋っている感覚が残っていることもあったし、こちらの気持ちを伺うように、じーっと見つめられていることなどもあった。
先日けーこを待っている間、川崎駅の書店で悩みに悩んで選んだ便箋には、すでに中身をしたためてしっかり封をしていた。薄いベージュの地の色に、紺色の線で細かい花が散りばめられているその手紙は、いつでも渡せるようにと鞄の中に収まっていた。
先生に出会ってからの、ここに来るまでの道を振り返ってみる。そしてまた、きっとこの先では、手を繋いで二人でカフェや映画に出掛けたりする未来が待っているのかもしれないと想いを巡らせた。(※)
そう思うと、途中でエゴを視ることを批判されたとはいえ、彼に出会うきっかけのひとつをくれたまおちゃんには、きちんと感謝をしておきたくなった。
約1年半前に、旦那の判断により携帯のキャリアを変更してはいたが、幸いまおちゃんのメルアドならまだ連絡帳に残っている。
ちょうどヤマタ先生からの霊障に一番苦しんだ時期と重なったため、新しいアドレスも結局教えずにきてしまったが、今ならそれも含めてけじめとして、彼女にお礼が言えると思った。
メールタイトルに改めて名前を打ち込んで名乗り、結局不動さんはツインレイではなかったことと、あの当時のビジョンの男性にその後本当に出会えたこと、これからその人に自分の気持ちを伝えることなどを書き込むと、送信ボタンを押した。
するとたったの数分後。即行で返ってきたまおちゃんからのメールには、怒りに満ちた内容が書かれていた。
『ひみちゃん。
あれから私のブログを読んでいないようなので説明させていただくと、あのあと、私のツインレイだと思っていた彼の奥さんがうちの旦那の職場に押しかけて来て、4人で何度も話し合う羽目になって、それからも大変な目に遭いました。
ブログも閉鎖して、あちらの夫婦には謝罪して、旦那にもたくさん謝罪して、私はもうその彼には会わない約束までしました。
あの頃ひみちゃんに相談したいと思ってメールしても戻ってきちゃったというのに、ようやく最近旦那の子供を妊娠したという今になってそんな混ぜ返すような連絡をもらっても、私はちっとも嬉しくありません。
今後私は、ツインレイは危険だって、みんなに伝えていくつもりです。ひみちゃんがその人をツインレイだと思うのならそれはあなたの勝手です。ひみちゃんが選んだ道で幸せになることを、お祈りしています。』
こんな内容を受け取ったというのに、心はなに一つ動かなかった。当時の私を軽蔑していたまおちゃんに、アドレスを教えられなかった事情までわざわざ弁明する気すら起こらなかった。
あの頃からエゴを毛嫌いしていたまおちゃんは、私がエゴを視ることをネット上で批判していたことなどすっかり忘れてしまったのだろうか。
それによって彼女自身が足を掬われたというのに、それでも人のせいにして泥沼で溺れている。
自分が放置し、孤独にしたエゴの悲鳴がまおちゃん自身に今も助けを求めているということに、耳を塞ぎ続けている彼女は気づかない。
悲劇だと思った。そして悲しかった。
抗議のメールが届いたことに対してではなく、真意が伝わらなかったことが、これからも彼女が「勘違い」の中を人のせいにしながら生きていくことが悲しかった。
そしてまた、いつの間にか自分よりだいぶ小さくなってしまったまおちゃんに驚きつつ、私も古い友人として、彼女が選んだ道で幸せになることを祈らずにはいられなかった。
※…当時の私が、「もしも自分と先生とがツインレイなら」といった仮定の上で、統合というものを盛大に勘違いしていた妄想をそのまま書いています。
この妄想もまったく意味を成さないわけではないけど、これは統合の「本質ではない」と、心に留めておいてください。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
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関連
→第36話『エゴのことが嫌いなエゴ』
この36話の内容が、今回の78話に帰結しました。
ふぅ。ようやく回収できたよー。
それなのにエゴっていうタイトルから、この36話は人気ないんだよねー。大事なのにねぇ。
彼女を反面教師としてみなさんに何がお伝えできるかというと、
彼女は自身のブログ上で“全託”と言っていたんだけど、その割には受け入れたくない闇には猛反発してたのね。受け取るのは全部じゃなくて半分だけ。自分でそこに気づいてなかった。
結果は当然なんだけど、「内面世界の顕れそのものである『外側の現実』」から、『彼女自体』が拒絶されたの。内側と外側、光と闇はセットだもの。
ツインレイっていうのは覚悟なの。闇を受け入れる覚悟が違うんだよ。
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