第66話 いざ鎌倉
バスツアー当日の朝はあきらに協力してもらい、いつもより一時間早く家を出た。
PTAの為とはいえ、丸一日も学校に車を停めておくことは控えたくて、送迎のあと、一度家まで帰宅してから徒歩で再び集合できるようにと時間の段取りをしておいた。
朝7時の学校は、表情がいつもと違って新鮮だった。運動部と文化部を問わず、朝練組の子たちが校舎の開門を待っていてそこだけ密度が高いかと思えば、教職員用の駐輪場は空きスペースだらけでガラガラだった。
最寄駅から自転車通勤のスサナル先生が、スポーツバイクでやって来た。
「あっ、」
生徒の間を軽快にすり抜けているのを発見して、目で笑顔を向けたのに、こちらをチラッと一瞥すると、にこりともせずにサーっと通り抜けて行ってしまった。
ちくっとした。なんだか怒っているようだった。何日か前に会った時にはいつも通りだったのに、この不機嫌は、理由もわからず悲しかった。
7時半。自宅に車を戻してから再び学校に到着すると、校庭にスサナル先生の姿を探した。だけど見つけることもなく、さっきの悲しみを拭えないまま観光バスに乗り込んだ。
…………
ツアーは満員御礼だった。やはり滅多に取れない人気施設の見学とあって、例年になく一瞬で枠が埋まり、ご夫婦での申し込みも散見されるほどの人気ぶりだった。その功労者、車内マイクを通して喋るサワムラさんのヒーローインタビューを、今年もななみのママと聞いた。
ひと通りの製造工程を見学し、最後は夕飯用のお買い物ツアーと化した工場施設を後にすると、バスは再び高速に乗って鎌倉へとやってきた。若宮大路沿いの和食のお店を貸切にしたお昼のあとは、集合までの午後の時間を自由散策に当てていた。
「定番だけど、やっぱり鶴岡八幡宮に行きたいよね。」
そのまま真っ直ぐ北に行けば神社に辿り着くことができるのに、何となく気まぐれで、一本隣の小町通りに入る。偶然なのか、ちょうど目の前に現れた「聖ミカエル教会」に挨拶をしてから鳥居を目指すことになった。
応神天皇、名前を誉田別(ホムダワケ)さん。
全国の八幡宮のご祭神である彼はスサノオの別人格のひとつでもあり、私の感覚だと美しいミントグリーン色の人。いつもニコニコと優しく笑ってくれるこのご祭神にはどうしても、何故だか“さん”をつけたくなる。
階段を登り切った本殿からは、遥か遠くの海岸近くに一ノ鳥居を臨むことができた。ホムダワケさんに手を合わせたあと、お守りやお札を見て歩く。
『御刀守』と書かれた、抜き身の剣(つるぎ)のお守りと目が合った。厚手の四角いビニールの中に、紫色の紙と共に小さな剣が入っている。よく見ると持ち手の部分には、八幡宮の『八』の字が、二羽の鳥のような、蛇(双龍)のようなデザインとなって彫られていた。
この意匠にも、スサノオの意識が重なっている感じがして、そのお守りをいただくことにした。
あっという間に集合時間となってしまった。鎌倉を堪能するにはもう少し余裕が欲しかったけど、企画は概ね好評で、頑張った甲斐は参加者の方々からの感謝の声となって返ってきた。
そして帰りのバスの中では待ちきれず、嬉しくなってニヤニヤしながらお守りを紙袋から取り出した。
どこに仕舞って持ち歩こうか少し逡巡したけれど、そのまま鞄の内ポケットに入れて、毎日見守ってもらうことにした。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
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なんだろう、誉田別さんの好青年っぷりは毎度半端ない笑。大好き誉田別さん。
もうね、鎌倉江ノ島って何なんだろうね。
土地一帯、ミカエルであり素戔嗚尊(すさ)であり、素戔嗚尊の娘たちであり。龍であり、しらすであり、さりげ仏陀でもあり。
……いや、表の“広報”のミカやスサだけじゃなくて他にも密度と濃度がね。天界大フィーバーなかんじなの笑
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