第25話 雨空の品定め
ぱらぱらと小雨が降ってきた。
少し重たい空の色とは対照的に、旅の全ての目的を終えた今、車内は静かに高揚していた。
このツアーの主催者一人を除いては、はっきりお相手がいるとわかったわけでは決してない。それでも残る3人も、各々この旅で思い至った男性を心の中に偲ばせて、そわそわと浮き足立っていた。
「……だからそのお客さんにしてもそうだけど、ツインレイの男の人って、ツインレイ女性を運命の相手って認めるのが怖いんだって。ツインレイの女性っていうのは男の人からしたら、好きなのにとても怖い存在らしいのね。
だからこそ、うちら女から動かないと駄目らしいって話だよ。私だってこの歳にもなって、まさか自分から何度も告白するなんて、全く思ってなかったよ。」
奈良から和歌山へと抜ける道中では、経験者であるまおちゃんの語る力説に、みな興味津々になっていた。
彼女自身の話はもちろん、他のツアーに参加したというお客さんの不思議な後日談なども、聞いているだけでもびっくりするものがたくさんあった。
「その男の人は奥さんもいて、仕事にも生活にも影響したら困るからって、その彼女からの告白を何度も「迷惑です」って断ってたんだって。それが理由で首にでもなったら確かに怖いって思うじゃん。
だけどある日の仕事帰りになんか不思議な予感がするとな思ったら、やっぱり彼女が会社の前で待ってたんだって。仕方がないから駅までならって、途中まで一緒に帰ることにしたらしいのよ。」
相手が好きな女性なのに「怖い」という感覚があるのかいまいちよく分からなかったが、ツインレイの男の人とはそういうものなのだろうか。
「それで彼は途中までは、本気でその彼女からのアピールが邪魔だと思い込んでたんだって。
『今日こそ絶対にわかってもらおう、僕には奥さんが大事だし、今度こそ諦めてもらおう』って、とどめの最後通告のために公園に寄ってベンチで謝罪までしたんだって。
そうしたら、その時の彼女が何を思ったか、彼の手をいきなりパッて取ったっていうのね。そしたらね、彼にも電流が流れたんだって!
その瞬間に、『僕が全部間違ってた、本当はあなただったんだ!』って気づいて、半年の間に離婚して再婚して、今その彼女と一緒に暮らしてるんだって!」
話を聞いていた二人から、きゃーという声と、「ひみちゃん、電流ー!」と叫ぶ声が同時にあがった。
「……玉置神社でひみちゃんのこと観察してたけどさあ、その心の壁みたいなものがなくなったら、『絶対その人だ』ってひみちゃんも思うよ。その、不動さん?
だから私ひみちゃんのために、今この話を上から『言わされてる』んだからね。」
盛り上がる彼女たちとは対照的に、何故だか少し、冷静な自分がいるのがわかる。
壁ってその、この冷静さのことを言われているのかな。
「うーん、でもまだ正直わからないんだよねー。
確かに電流はやばかったよ?霊感あってもそんな経験、さすがに今までだってなかったし。
だけど今んとこ1ミリも不動さんに気持ち動かないし、なんなら昨日の朝CM見て、シンクロもあって、まさかこの人じゃないよねって思った時に、どっちかっていったら嫌だなって思ったの。だから違ってくれって思ってる。」
「えーーっ?」
素直じゃないもったいない、絶対そうじゃんと、あちこちから笑い混じりの非難があがる。
「だぁってなんか、嫌なものは嫌なのー。」
あーあ拗ねたと、ひと通りみんなで笑ったところで、遅めのお昼にちょうどよさそうなお店を見つけた。
そして車から降りる時にギョッとした。この田舎道には場違いともいえる、派手な原色が視界の隅から入ってきた。駐車場出口のその更に奥から堂々と歩いてくるその人に、私はそのまま釘付けになってしまった。
大きな紺色の傘をさしたその人は、長身で骨張った骨格をしており、目元が影になるほど彫りの深い顔だった。そして茶色い髪をツインテールに結んでいて、真っ赤なキャミソールと真っ赤なミニスカートを身につけていた。
結構距離があるために男性か女性かもわからなかったが、その上日本人なのか、幾つぐらいかすら不明なギャルの格好のその人は、一瞬こちらに視線を寄越して僅かにニヤッと笑った。
今もしかして目が合って笑った?よね……。
一瞬きょとんとして立ち止まった私に、ご飯行くよーと声がかかる。
「今あの人が私に笑ったの」なんて、わざわざ口にするほどでもないのかなと思い直し、折り畳み傘の代わりにハンドタオルだけ取り出して、弱くなった雨の中を小走りに追いついて店内へと向かった。
【おことわり】
この回の中で出てきたカップルですが、カルマのお相手です。実際にはツインレイではありませんが、ご夫婦でライトワーカーとしての活動をなさっています。
電流現象は、確かに「清算時」に起こりやすいものの一つですが、それはツインレイとの間にも、そうじゃない人との間にも起こり得ますので、それだけでは判断の基準にはならないと明言させてください。『電流があったからツインレイに違いない』との思い込みは危険です。
また、カルマのお相手が悪いということも全くありませんので、どんな関係性であれ、そのお相手だからこそできる学びを大切にしてください。
【もう一つおことわり】
また、「女性から動く」というのも、これも押し売りすることではありません。
エゴはこの辺の違いがわからず暴走して、且つその暴走が「失敗だと人に思われることを恐れるために」正当化しようとします。
必ず、ご自分の内側に向かってください。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
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今回のタイトル、「品定め?は?」ってなるかもしれないので「源氏物語から絡めたのよー」と一応書かせてください笑
『雨夜の品定め』は、光源氏とその友人たちが、身分の高い女はああで、身分の低い女はこうで、あの女はどうだった…と、雨降りの夜に品定めしたっていうお話。
千年前も、人ってたぶん今と変わらないね笑
品定めというかイケメン&可愛い子に反応するフィルターがあったんだよ。うん。今もある。おすし。
(2024/12追記:
このけーこのイタズラ加筆(↑)、残そうかどうか迷ったんだけど、この時のけーこの「ですしおすしブーム」は本当に止まらなかった思い出として、残しておくことにしました。
あとずっと無意識に書いてて何とも思わなかったんだけど、私もけーこも神奈川の人で、まおちゃんは東京です。
言葉に違和感あっても気にしないで笑)
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