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第182話 二つの目覚め


 夢を見ていた。
とある男の人が深い眠りに就いているとゾロゾロと人がやってきて、手際良く、寝ている彼の腰のあたりに細い紐を一本だけ括りつけてから去っていく。
 気づけば布団は剥がされ、自分の置かれた状況も把握できずに狼狽えて(うろたえて)いるにもかかわらず、雪山の上に連れてこられたと思う間もなくいきなり崖から落とされる。
 垂直に近い崖肌に残る雪は少なく、滑落していく背中はすぐにも鋭い岩に当たりそうで大怪我の危険と隣り合わせ。奈落の底へと落ちてゆく。
 センスの悪いバラエティー番組のようで、とてもじゃないけど笑えない。

 今の人、ぐっすりと寝ていたのに、申し訳程度の命綱だけで突然訳もわからないまま突き落とされてこんな目に遭わされたんじゃ、この人の精神が壊れてしまう!

 憤りを覚えながら目が覚めると、この男の人こそスサナル先生だと気がついて愕然とする。いくら地獄のようだと形容されるツインレイ男性の現実崩壊とはいえ、これではさすがにおかしくなってしまう。

 だけど新学期をとっくに迎えていたこの時期、無情にも今年の教員人事異動では、あの先生と親しかった他の先生方は殆ど残っていないとの噂を耳にしていた。今までの彼のことを知らない人たちに囲まれての、今年度のスタート。嫌な予感しかしなかった。

……

 そんな中で、立て続けにけーこと出かけたのは東京都世田谷区にある桜神宮。リトの件で、私がけーこを拒絶している間に彼女が一人訪れていたのはここだった。

 決して広くはない境内。本殿と、その奥の小さなお社しかないにもかかわらず、祀られているとされる神々は数も次元も相当な方々が揃っていた。手を合わせると、その多くの中からどなたか女神に声をかけられた。

「あなたは大丈夫。」

 その言葉は、私の不安を包むように優しく心に触れてくれた。けーこに比べ、その能力差に今後の心配が隠せない私にそんな言葉で応援してくれ、そして同時に具体的なアドバイスはないけれど、力強くも確固たる“私の軸”への信頼を寄せてくれるものへとそんな風に感じられた。


『Meet♾の門出をお祝い下さい Mee2  ke-ko  ひみ』

 ピンク色のリボンに二人で記名をし、すっかり葉桜となってしまった本殿横の河津桜へと結びつける。うっかり「門」を「問」と書きそうになったことは神様たちには内緒の話。

 それから車に戻り、お昼は少し遠出した場所にあるショッピングモールに決定すると、そのドライブの最中に、けーこが今しがた神社の中で何を視たのか教えてくれた。

「鏡がさ、手前と奥に二枚あったでしょ?
あれ初めて来た時さ、私とタケくんとを映すのかと思ってたら、ひみだったよ。
 あのね、二つの勾玉が真ん中で回転してるのが視えて、その勾玉の周りを、剣と鏡がくるくるしてたのね。
 だから今日ひみを連れて行ったから、『揃った。ありがとう。』って言われたんだ。ひみのことが必要だったみたい。で、なんか揃ったらしいよ。」

 そこからの私たちの考察はあっという間だった。
 昨年三月末、二人にとっての旅のスタートとなった鹿島神宮に行くことで、まず私たち自身が“二本の剣”となった。それから、先月の鶴岡八幡宮。この時私がツインレイという鶴に出会ったことなどからも、ここで“鏡が二枚”。
 そして今日。今度はそれを現実世界で引き継いだ二枚の鏡の前で、私が最後のパズルのピースとしての“残る勾玉”へとなったのだ。
 私とけーこというを神籬(ひもろぎ)を通してふた組の三種の神器が揃い、自然と二人共、岩戸開きを直感していた。果たして先は長いのか。meetooという場がその岩戸開きの鍵となるのは理屈を超えた“明白”だった。

……

 モール内での食事を終えると、せっかくだからと少し店内をブラブラした。普段は特別パワーストーンに惹かれるということはないのに、気づいた時には目の前の石のお店に「寄っていきたい。」と口にしていた。

 すぐ店頭にあった帆立の形の小物入れを見つけると、「これの為に来たのかぁ。」と思った。シェルでできた小さなお皿。特に何を入れるという目的はなかったけど、例のアンカリングを外して以来、今日まで行く先々でしょっちゅう帆立のサインを見かけていた。

 発泡シートに包んでもらうと、久しぶりのこういう目的のない買い物に思わずふふっと笑った。 
 以前は取り憑かれたようにインテリア小物を漁っていたけど、気がついたらいつからか、すっかり興味がなくなっていた。

 それからけーこのお会計を待つ間、レジ横の鍵の掛かったショーケースになんとなく目を落とすと、ドクンと心臓が跳ね上がった。
 棚の一番下、しゃがみ込んで釘付けになる。ブラジル産と書いてあった。

「……けーこ、けーこ。どうしよあのね、見つけちゃったんだけど……。」

 遥かな時を、空間を超え、“彼”はレムリアからの目覚めの時を迎えていた。
 その日の午後、私は“私の”レムリアンシードクリスタルと魂の再会を果たした。




written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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レムリアンシードクリスタルとは、今の地球になる前の前、つまりアトランティスより前にあったレムリア時代に、レムリアの女性たちが『自分の対としての男性』を地上に顕すために刻んだものとの説があります。
だからね、自分のクリスタルかどうかがなんですぐにわかるかって、自分の男性バージョンのエネルギー、自分自身なので一瞬でわかるんです。
でももっと伝わりやすく、喩えて表現するなら“彼固有のフェロモン”笑
そしてね、無理矢理探そうとしないでくださいね。必要なタイミングでポンっと出てくるし、どうしようもなく惹かれるから、頭で考えなくてもこれだってわかると思います。
それにしても、私ブラジルにいたんか笑

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←今までのお話はこちら

→第183話 産みの苦しみの果ての愛

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