第39話 舞台装置は裏で整う
清潔に掃除のされた長い廊下を付き添って歩きながら、昔はここが荒れた学校だったというのは本当かしらと不思議に思う。
この地に引っ越してきた約15年前、近所の公立中学校には良くない噂が立っていた。ある時期まではいわゆる普通の学校だったのが、その数年前あたりから徐々に荒れてきたのだという。
当時ここにお子さんを通わせていた人の話によると、昔は授業が始まるチャイムが鳴ってからが大変で、そこから廊下に溜まっている生徒を教室に入れるまでにかなり時間が掛ったとのことだった。校内のあちこちにはペットボトルやタバコの吸い殻などのゴミも散乱していたらしいが、今見る限り、そんな面影は全く感じられなかった。
その荒廃ぶりが落ち着いてきたのは、今の校長先生が赴任してきてからだと聞いた。地域への挨拶まわりや保護者と連携した美化活動などに力を入れてきたことで、ありがたいことにあきらが入学する数年前にはすっかり風紀は落ち着いて、皆、校長先生の人柄のおかげだと当時噂したとのことだった。
そんな人望の厚い校長先生は、根回しと気配りと、それからちょっぴり心配症の人のようだった。
元重篤患児の入学に際してスサナル先生を担任に指名したのは、彼に対する信頼によるものだったと、見ていて次第にわかるようになった。あきら一人が理由ではないかもしれないが、彼の他にも6人もの副担任をつけたクラスは他になく、そのことから考えても校長先生の配慮と人柄が伺えた。
本来なら持ち上がりで二学年の担任になっただろうスサナル先生は、こうして一学年降りることで、私たち親子と接点を持つに至ったのだ。
式典が終わると、彼は自らあきらの車椅子を押して、軽く校内の案内までしてくれた。図らずもたくさんお喋りができたことで、今朝の寂しさが払拭されてしまうほど、私の心は弾んでいった。単なる業務連絡ですら、この人との会話には喜びが溢れてくる。
「当面は朝、あきらさんが学校生活に慣れるまではお母さんも一緒にエレベーターで上がってきてくださいと、校長先生からも伝言を頼まれています。
帰りもあの、しばらくの間は教室まで迎えに来てもらえると助かります。何かあったら僕でも他の教職員でもすぐに対応しますんで、遠慮なく言ってください。
…………。
では、あきらさん、また明日の朝ね。
それじゃあ、失礼します。」
ほんの少し、心からの笑顔になりきれず、困ったように笑ってくれたのは気のせいかな。
寄り道は、しないと決めた。だけど、ふわふわ懐かしい感覚を奥に感じるこのスサナル先生とは、また明日も話したい。
ここに引っ越してなければ、あきらが搬送されていなければ、校長先生が赴任してこなければ、この目に映し出されることは決してなかった世界と、感じることがなかった心。
変わり映えのない日常の景色がこの日、ほんのちょっとだけ変化した。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
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なんか安っすいラノベみたいなタイトルでごめんね笑
ええと、すべてがパズルのピースってよく言われるけど、なんていうかそのパズルって平面ではなく
パラレル込みの立方体かなんかなんじゃないかって思ってしまう。
上下左右過去未来多次元、全部はまっていく。
源まで辿るとその叡智の出どころは自分なんだけど、
アクセス上限がせいぜい5次元程度の人間意識の中にいると、もはや何が何やら笑
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